デウス・X・マキナ

七四六明

デウス・X・マキナ ― 壱

プロローグ

就任式

金刀比羅ことひら虎徹こてつ。汝をデウス・Xエクス・マキナが十二天将じゅうにてんしょう白虎びゃっことして迎えます」


 鼻頭から上を覆う陰陽魚の面。

 その下を包帯で何重にも巻いて、顔は口と、耳しか見えない。

 頭頂部から一本に結んだ黒髪が伸びて、黒馬のたてがみが如くなびいている。

 両腰に刀剣。両脚に銃。その他暗器を隠し持つ姿に、陰陽師らしさは皆無。だが彼は陰陽師として、若干17歳で史上最年少の最強の一角の座を掴んだ。


「謹んで、拝命致します」


 周囲から送られる拍手に、祝福の感情はない。

 形式的な乾いた拍手が、形だけ送られる。


 虎徹もその拍手に形式的な礼で応え、感情を出す事はなかった。


「それでは十二天将、白虎、金刀比羅虎徹。デウス・X・マキナの片翼、陰陽師連合デウスより、正真正銘最後の試験を言い渡します」


 すだれの奥から手を叩く音が響く。


 虎徹から見て背後の観音扉が開くと、十字の槍を持ったシスターと背中に帯剣した緑色の髪の女が入って来た。

 風貌から見て、明らかに東洋人ではない。が、そんな事はどうでもいい。二人が入って来た時点で、虎徹は試験の内容を概ね察していた。


「彼女達は祓魔師協会エクスの訓練生。あなたの実力を測るための実戦試験の相手です」

「実戦試験」

「訓練生と思って軽んじない事です。相手を務めるのは今年、祓魔師協会エクス訓練学校を首席で卒業した実力者ですから」

「……一つ、確認してよろしいでしょうか」

「何でしょう」


 金刀比羅虎徹、17歳。


 史上最年少の十二天将、白虎。

 出自不明。経歴不明。

 訓練生時代に仕留めた魔性のクラス、AからX。数、約4500。

 これは訓練生としては異常な数であり、例年の首席卒業者でもこの半数も届かない。

 そして性格は大人しく――


「最終的に、殺せばよいのでしょうか」


 過ぎるくらいに残酷だった。

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