はい、こちら異世界転生相談センターです

 ――今日も今日とて、相談者が絶えない。

 

 はぁ、と小さなため息が思わず出てしまう。様々な理由から、まじかるぱぅわーなるもので相談者・カウンセラーの互いの顔が見えないようになっているとはいえ、声が大きすぎるといつ来るかわからない相談者に聞こえてしまう。

 そのため、吐息レベルのため息を出すしかない。

 

 異世界といっても、中世ヨーロッパを舞台にしたファンタジーものが主流だが、中には前世と同じような現代社会に転生した者もいれば、戦国時代をはじめ明治大正のような過去の日本を舞台にした世界に転生した者もいる。それらとここでは、『異世界転生』と定義している。


 ちなみにこれは最初にチラシ(脳内ストック)で配布済みのはずなので、異世界相談センターに予約を入れる前に読んでおいてくれ。


 そもそも、異世界転生が増加したのは人間界で流行っている小説?が理由らしい。昔は転生者を各世界にぽーいなんて投げることができたが、まあ様々な観点から上層部である神たちが、「アフターフォロー必要じゃね?」なんて一言でこのサービスなるものが生まれた。

 


 ――なるほど、これが鶴の一声か。



 冗談はさておき。本日の相談者がもう少しで来るとのことなので準備をしておく。


 書類は転生前に自動作成されたものと、現在の世界で生活している中での記録も自動作成され、こちらに送られる。

 ふむふむ、次は現代社会に転生した人か。相談者には、上記のような人から動物、無機物など様々だ。つい先ほどは何だっけな……。

 そうだ、ある虫に転生した人が号泣しながら「早く人に転生したい」だなんて言ってた気がするなぁ。黒くて光っててかっこいいと思うんだけどなぁ。


 閑話休題。


 そもそもこのシステムを導入するにあたって、一々転生者の身体を転移させるにも労力とまじかるぱぅわーなるものが結構必要となるので精神体だけ飛ばせるように予め転生時に体内に機能をインプットされているのだ。


 この機能は生きている皆さんに入っているので、安心してほしい。勿論、目の前にいる貴女にもです。

 

 以前にこの説明をした先輩が相談者に罵倒されたらしく、カウンセリングは中止。相談者には強制的に精神体が戻され、注意するために上司自ら夢見枕に立ったとのこと。


 まじかるぱぅわーってすげーなって思います。


 まあこれは特例中の特例だったりするけども。ちなみにあれ何だっけ、そうそう人間界のボールを蹴る遊びのルールにもある感じのやつがあってね。注意を何回か受けて、一定数を超えると今後転生できなくなるから気を付けてね。魂をきれいにするのも大変なのよ。


「――人間はよくわからないなぁ」

 

 いつも疑問に思ってることだけど、人間のほとんどが人間に戻りたい理由がよく分からないんだよね。なんでだろ。




 


「No.●●の神様!次お願いします」

「はーい」


 さて、今日もカウンセリング頑張るぞー。

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