監視カメラ

私の従兄はいわゆる、良いところの子だ。

別荘を持っていて、私たちも夏になるとその別荘に一緒に行って夏休みを過ごす。

海外に面した別荘で庭から直接海岸へと出れる。そこは従兄のプライベートビーチ、

大袈裟ではなく、権利の上も個人の所有物なのだそうだ。


ある夏、その別荘へ例年のように泊まりに行った時の話しだ。

そのビーチは私有地なので、一般的な海水浴客は立ち入れないのだが、立て看板をしても夜中に侵入して花火のゴミなどを放置する人間が最近増えているのだと言う。

そこで従兄の両親はビーチの数か所に監視カメラを仕掛け、夏休みの夜に監視することにした。

私と従兄は夏の夜長、暇を持て余していたので、その夜の警備を買って出た。

陽も沈み、監視モニタの前でトランプをしながら看守のような気分を味わっていた。

時折モニタに目をやるが、人影などなく飛来する虫が通り過ぎる程度だ。

日付が変わる頃、しばしばと重たくなった瞼でモニタを眺めていると一つのカメラ映像に人の上半身が通過する映像が映った。

隣で眼をつむっている従兄を起こし、モニタを見せる。

暫くすると同じように人影がカメラの前に現れた。先ほどよりもゆっくりとカメラの前を通っていく、髪が短いが女のようだ、濡れた髪が輪郭を覆うように張り付いている。カメラ中央に女が来るとゆっくりとカメラの方に顔を向ける。

濡れて張り付いた髪の間から見開いた両目がこちらを覗くが、その両目は焦点を得ず、絶え間なく見開いた瞳の中を動きまわっている。時に別々の方向を向き、時に同じ方向や中央を向く。

「なんだこいつ?挑発してるのかな、言ってみようよ」

そう言って従兄を促したが、従兄はモニタの電源を切ってしまった。

「もう寝よう」

「でもこの女放っておいていいの?」

「いいから」

「でもさ」

「もういいから!」

従兄は青い顔で怒鳴ると僕の手を引いて寝室へと促した。


納得できないまま眠りにつき翌朝、昨晩の話を従兄に問いただした。

従兄は私と連れ立って監視していたビーチへと移動すると、無言で指を指した。

私の遥か頭上、3mほどの位置にカメラがある。

「あれがなに?」

「昨日モニタに映ったカメラがあれだよ」

私は意味がわかり、昨晩の女を思い出して今更に怖くなった。

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