第60話 ヘルカス近郊の異変

セモアにあった未知のダンジョンを踏破したジン達は近郊に有る古代遺跡も見つけてそこで潜水艇を発見して海に潜ったりしてみた。


その古代遺跡からセモアの海まで地下に水路が設置されていて、潜水艇を遺跡の場所から海まで水路を使い浮かべることができていた。


ジンはその施設全体が勿体無いので非常に安く商業ギルドから買い取り、そこにもう1軒2階建ての家を建てた。


新居での生活が軌道に乗り、毎日地下の訓練場でヒューイとドール、ジンとイリーナ、イリア、イザベラとの魔法模擬戦をしながら実戦の技術を磨いている。


新居の生活が5日目を迎えた頃、『遠距離通話器』でハリス侯爵から『セモアに向かって娘と家内を連れて向かっている。明日セモアに午前中到着して、午後ジバルサバル男爵のところから伺うが大丈夫か』との電話があり、泊まれる様にお待ちしてますと伝えた。


そういえば男爵様とはまだ挨拶していないなと思いながら、ハリス侯爵様達にはハンバーグ料理を出そうと決めて当日のお昼から準備をし始めた。


ジバルサバル男爵もお見えになっても良い様に2食程余分に作っておき、野菜サラダもドレッシングを掛けて準備を終えていた。


騎士団は侯爵がジンの家に着くとセモアの宿を予約しているということで街に戻った。


ジバルサバル男爵も一緒に見えて、ハリス侯爵、エリザベート夫人、フェリシアさんがリビングに座った。


男爵が先に握手を求め、ジンも「落ち着いたらご挨拶に伺う予定だった」と伝え「今後ともよろしくお願いします」と無事初対面の挨拶を終えた。


エリザベート夫人が「ジン君不思議な家ね?すごく照明が明るいし、キッチンに色々な魔道具が置かれているのね」と遠慮なく眺め回している。


ドールが侯爵、夫人、フェリシア、男爵の順に紅茶とショートケーキをだし、家族にもだした。

「ええええ、何このお菓子は!すごく美味しい信じられない美味しさだわ」


「本当だな、儂もこんなにうまいお菓子は初めてだ」と侯爵。


フェリシア「以前王都で1回いただいた事あるけど、この種類の違うお菓子も絶品ですね」


「ジン君、一昨日未開のこの街のダンジョンを踏破したそうだね?」とハリス侯爵。


「はい、クエストがほとんどないのでサーチを掛けて見つけました」


「最近ヘルカスの街で奇妙な事件が続いて起きて居るのはご存知かな?」


「いえ、ヘルカスは以前古代人遺跡が有る処を探索したことはありますが、どんな事が起きて居るのですか?」


「ヘルカスから少し王都よりの場所にミスリル鉱脈があるとドワーフの一人が見つけて掘り下げて行った処何か人工の物にぶつかり、それ以上進まないので横に掘っていたら、それが王都近くまで伸びて居ると騒ぎ出し、ドワーフが最初に掘った位置に戻って行ったドワーフが行方知らずになって、その後3人から4人が消えてしまったのだ」


「えっ、侯爵様、まさかドワーフが掘った所って、ヘルカスから王都に2キロ程近づいた平原ではないですか?」


「そうだが?」


「平原にミスリル鉱脈など有るはずがないのに何で掘ったんだろう?」


「いや、ドワーフが言うには鉱脈というかミスリル製の人工物みたいなものを見つけたらしいのだ!」


「まずいな!それは王都の図書館の古代人が異界の魔物を閉じ込めたダンジョンの構築物なんですよ!」


「えええ、何だって?するとドワーフの連中がダンジョンの外壁を破壊したと?」


「はい、私がヘルカスの古代人の遺跡を調べた時に【サーチ】をしたらその遺跡の300メートル下がダンジョンの最下層になっているはずです」


「王都ダルゼからヘルカスの近くまで伸びているダンジョンか?」


掘削して、ミスリル製合金の外壁を破壊したとすると、異界の魔物が出てきて襲われたとしか思えませんね・・・」


「今から、【転移】で現場まで見に行ってきますよ、ヒューイとドール行こう!」


「儂も行こう、外壁が破壊されていたらすぐに周りの住民を避難させて穴を塞ぎ最下層の魔物を出すわけに行かないからな。男爵も一応一緒に行こう」


「イリーナさん、晩御飯迄には戻りますのでとりあえず急いで5人で現場を見てきます」


「気をつけてね、相手は異世界の魔物で古代人が全滅させられた魔物でしょ?」


「ああ、気をつけてとりあえずは状況だけ調べてきます。侯爵様行きましょう!」


ジン達5人は『空飛ぶ車』で一瞬でヘルカスの2キロ王都よりの元古代人の遺跡のところに着いた。


ジンが見るとかなり深くまでドワーフが掘り下げて、【サーチ】をすると一部のミスリル製のダンジョン外壁が破壊されてしまっていた。


応急手当でその部分を【シールド】で保護して尚且つ【プロテクション】を掛けて

穴を埋めた。


さらに直ぐ【サーチ】を掛け異界の魔物が地表に出てきていないか探ると幸いにも

漏れてはいなかった。


明日、再度きて、この周囲5キロ程は掘削厳禁の看板を作り、兵士に監視してもらう必要が出てきた。


侯爵と取り敢えず応急処置をしたのでジンの家に再び【転移】で戻り、一息ついた。


イリーナが心配して「どうだった?」


「やはり心配した通り古代人の作ったダンジョンの外壁のミスリル鉱合金が掘削で一部破壊されていたので応急手当をしてきた。幸いこの地上までは魔物は出てきて

いなかったから明日、あの地区の立ち入りを禁止して掘削できないようにする事が必要だね」


「そう、でも地上に出てなくて良かったわ!」とイリーナ。


「そろそろ夕食にしましょうか?」イザベラが皆んなに食卓に着くよう促した。



「まずは美味しいジンんが作ったハンバーグという食べ物をいただいてください。みなさま」とイザベラが皆にハンバーグとご飯にスープを出した。


エールを侯爵、男爵、エリザベート夫人、イリーナ、イリアにはギンギンに冷えたエールをまず出した。


「ジン君これはエールだよな?何でこんなに美味しいのだ?」


「侯爵様、私もこんなに美味しいエールを飲むのは初めてです」と男爵が言う。


「本当!イリーナもイリアこの美味しさに負けたのね?」とエリザベート侯爵

夫人が笑った。


「そうなのよ、食事も美味しいし魔法技術もアップするし、この地で国の為にさらに日々頑張る気力が湧いてくるの」とイリアが夫人に話した。


「美味しい食べ物も食べれて、魔法スキルも上がれば何よりですぞ!」と男爵が

相槌を打つ。



ジン達も果実ジュースで乾杯してハンバーグを口にした。


「おお、これはうまい!こんなジューシーな肉汁は初めての食感だな」


「ほんと、美味しいですわ、今まで食べた肉料理の中で一番ですわ」


「このポテトフライと、アスパラに炒めものもこのハンバーグという料理にとても合って美味しい」とフェリシア。


「こんな美味しい料理とケーキを食べさせられたら魔法のスキルとか関係なくイザベラがジンに首ったけになるのもわかるわ」


「ちょちょ、ちょっとフェリシア、私は食べ物につられているわけではないわ。剣技とスキルと魔法がこれだけできるのに驕らず毎日努力する姿に感銘を受けているだけよ」と真っ赤な顔で抗議した。


「ただ、ジバルサバル男爵の前で申し訳ないが、この街ではクエストはジン君にはないだろう?キースや王都なら討伐系のクエストは毎日あるが!」


「そうですね、でもだからこそここに決めたのです。地下に訓練場を設けて朝から晩まで剣と魔法を使ったり、新たな魔法を作り出したり、『マジックアイテム』の研究をしたり出来るのでこの長閑で海が見える景色が最高です」


「クエストとかダンジョン踏破は【転移】で一瞬にしてキースや王都にいけるし、キースには毎月必ず1回は行くので大丈夫です。それに侯爵様との連絡には『遠距離通話器』がありますし」


「そうか、ジン君が側にいると儂は落ち着くのだがな!わははは」と笑った。


「侯爵様、私はそろそろセモアに戻ります、ジン君歩いても直ぐなので今度は私の館にもきてくれ、歓迎いたす。それでは失礼します」と言って男爵は男爵邸に帰って行った。


ハンバーグの後はまた果物のスイカを出した。この世界には無い果物だ。


「甘くてとてもみずみずしくて美味しいわ!何という果物ですか?」


「これはスイカと私は呼んでいます」


暫くは食べ物談義でワイワイ話してフェリシアがトイレに行った。


暫くすると悲鳴が聞こえ、次に悩ましい声が聞こえてきた。


流石に夫人が心配になり行ってみると、「お母様もちょっと用をたして見てください、気持ち良すぎるわ!」


「フェリシア、はしたない。何やっていると思ったら」と言いながらフェリシアがあんまり言うので、座って・・・!


「何ですの?このトイレは!気持ち良すぎるわー」


「アナタ!ジン君にキースと王都の家のトイレをこのシステムと同じ作りに作り直して貰って!」


「あぁー、最高だわ!」


「なんなんだ、お前達は!」


「貴方も一度これに座ってお尻を洗ってみてご覧なさい、気持ちいいから」


「おお、これはなかなか良いもんだな!確かに紙もそれほど使わなくても良いぞ」


「侯爵様、これをやるには水回りを全て作り直さないとだめですから、既存の物を直すのは大変です。家の水回りを全部やり直すときにでも言って貰えば作りますよ」とジンは少し誇張して言った。


本当は、それ程大掛かりにしなくてもできるのだが、わざわざキースや王都まで行って、トイレの水回りを直すのは断りたくて少し大げさに言って、やんわりにげた。


「そうか、それは残念だな!今度大掛かりに改築するときにでも頼むとするか」とハリス侯爵が言って、このトイレの件はそれで終わりに出来た。


「侯爵様ご夫妻とフェリシア様、2階のお風呂をご利用してください」


「我々はその後順番に入りますから」とイリーナが伝えた。


「バスローブ、タオル等はお風呂の所にご用意してありますのでお使いください」とジンが言って、ジンは地下のお風呂に、ヒューイが1階のお風呂に先に入った。


何やら2階の風呂場から夫人の声が騒がしく聞こえてくる。


廊下の突き当たりの同じくフェリシアが入っている風呂場から彼女の声が騒がしく聞こえてくる。


ジンは何かトラブルが起きたのかと思ったが、イリーナ以下女性陣は何も問題ないといった顔付きでジンに「ジン、シャンプーとリンス、ボディーソープを3、4本侯爵にお土産として用意した方がいいわよ」とイリーナに言われた。


案の定、夫人とフェリシアが口を揃えて「お風呂場にある、シャンプーとリンスとボディーソープを3セットほど頂けないかしら」」と言ってきた。


ジンは自分で風呂に入る前に、【次元ストレージ】からそれぞれ【複製】して3セットを夫人達に渡して2セットは我が家の予備としてイリーナに渡して、風呂に入ってゆっくりした。


ただ先程行ったヘルカスの出来事がこれで終わらない様な気がして少し心配だった。


湯船に浸かりながら、明日ヘルカスに行けば心配事も消えるだろうと、たかをくくって湯船に身を沈めるジンだった。


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