第57話 セモアでの土地探しと家の建設

ジンは”とまり木”の自分たちの部屋に戻り<タブレット>の【GOD】をクリックして『セモアの街について』と打ち込んでenrerキーをポチった。


”レンブラント王国最西端に位置する海岸線の漁業を中心にした人口3万の小さな街で、王族派のジバルサバル男爵が統治している”と表示された。


ジンは何となく王族派と書かれているのを見て少しホッとしていた。


翌朝、朝食を食べてキースからはかなり距離があるため、【転移】で行くことにした。


一瞬でセモアの門の前に『空飛ぶ車』が現れ、衛兵にカードを見せるジン。


街にに入り、直ぐに商業ギルドに向かい、「土地を購入したいので更地で約2000坪ほどの土地が有りませんか?」と係の人に聞いた。


「港の近くは漁業をする人たちで空いている土地はないのですが、海が見える場所で少し繁華街から離れたところでしたら3件程物件があります」というので、係の人について行き皆で見ることにした。


最初のところは街からかなり外れた丘の上で、景色はいいが少し街から離れすぎている。


2件目の物件は街から然程離れておらず、高台だが勾配もきつくなく、場所的にはフラットな場所でジンは気に入った。


イリーナ、イリア達も気に入り、係の人に聞くと「値段は金貨15枚です」と驚く安さだ。


王都から離れるとこうも値段が違うのかと驚いた。


皆の意見が一致して、ここに家を建てることにした。


商業ギルドに行き、土地の名義はジンにして、土地代金貨15枚と税金関係を含めて総額金貨16枚、銀貨20枚を支払った。


登記関係も終えて、晴れてセモアの街に家を建てることになった。


『空飛ぶ車』の中でジンが描いた設計図を皆に見せて、賛同を貰う。


1階はキッチンとリビングでオープンにして、リビングの広さは12,3人が座れるように30畳程の広さで、トイレとお風呂場、シャワールームを設ける。


2階をプライベートルームにして、ジンとヒューイのツインルームと客間のツインの部屋を二部屋、シングルの部屋を6部屋と多めにとり、トイレとお風呂、シャワー付きを2箇所作る。


地下はジンやイザベラの作業場を10畳程の広さの部屋に、トイレ、シャワー付きのお風呂場を設け、あとは訓練場にする。


皆も賛成で、イリーナ達がお茶を車の中で、飲んでいる間にジンは【土魔法】で2000坪の土地を深さほぼ3メートル堀って土台を【万物創造魔法】でジンのいた世界の材質、コンクリートを作り出して、全面に流し込んだ。


すぐ乾燥させたいが、ひび割れが出るので【成長魔法】を掛けて日陰干し状態を作り、鉄筋を組んで2階建てのコンクリート製の家を3時間掛けて作り上げた。


流石にこれほど多種の魔法を駆使して作業をしたのは初めてで、ジンも疲れて休憩タイムを取る。


ちょうどお昼になり、『美食の皿』でミートソースを5食分大盛りでつくり、紅茶と野菜サラダにドレッシングを掛けて出した。


ジンはあと少しなので、一人外に飛び出し、再び細かい作業に入った。


トイレ、水回り、お風呂、キッチンの次元収納ストレージ、冷蔵庫、電子レンジ、など【万物創造魔法】のレベルが測定不能まで行っていなければとてもじゃないが作り込むことはできなかった。


ドールに頼んで、スライムを20匹ほど捕まえてきてもらい、【眷属】のスキルを使って、水処理、汚物処理、残飯処理を担当してもらうべく庭の端に池をめぐらし、浄化されたきれいな水が貯まる様にした。


家全体の電気設備も競技場の片隅に地熱利用のタービンを設置して全て電気を賄う発電システムを構築した。


家の照明は全てLEDにして球切れが無いようにし、食材関係は大きな冷蔵庫と次元ストレージに入れるようにした。


3時半頃、全ての作業を終えて、一人で一通りチェックをしていく。


水道の蛇口をひねると水とお湯が出て、トイレも便座に座り、用をたすと水が出る○○○レットというシステムになっていることを確認した。


『空飛ぶ車』に戻り、全員に家の中に入って貰う。


皆が皆、家に入って唖然としている。


「あれっ、みんなどうしたの?」


「どうしたのじゃないわ、ジン、貴方これを今迄作っていたの?」とイリーナが君を外して呼び捨てになっている。


「そうですが、どっか問題があるかな?あったらすぐ直します」


「そうじゃなくて、たった3時間ほどでこんな大きな2階建てを建ててその上家の中も殆ど出来上がっているじゃない」


「この材質はどうしたの?木材でもレンガでもないわね」とイザベラ。


「これは俺が居たところのコンクリートと言って燃えない素材だよ」


「ジン、これはなぁーに?」とイリーナ。


「これはエールなどを冷やしたり、腐らないように肉を保存したりするマジック箱です」


「この小さい方の箱は?」


「こちらは冷たくなった物を温める電子レンジというものです」


「ねぇ、ねぇジン君このお風呂お湯はどうするの?」イリア。


「赤い印がついた方にこの蛇口というものを回すと少し経てば、ホラ熱いお湯が出てくるでしょ!」


「ジン、このトイレどうやって用をするの?」イザベラ。


「こうやって座るんだ、それで終わったらこのボタンを押すとお水が出てきてお尻を洗ってくれるよ、あとでやってみて」


「ジン、トイレとか食べた残飯はどうなっているの?」とイリアまでジンを君抜きで呼んでいる。


「スライムがゴミ関係は全部処理してくれます」


「あなたこれを今一人でやったわけ?」とイリーナがジンを抱きしめた。



「あなたっていう人は・・・」と感激している。


「今日からもう、住めるので俺はハリス公爵のところにはここから行くよ」


「そうして、私達はきょうからここで生活の拠点にしましょ!」とイリーナが言ってくれた。


「パパ、明かりもすごく明るいね」


「これはね、LEDというもので明るいだろ?」


「今トイレの水は温かい水が出るようにしているのでお尻を洗うとき悲鳴を挙げないでくださいね」


「何だか家全体がマジックアイテムね」とイザベラが興奮していう。


外には厩舎も作ったが、『フジ』を放し飼いにして庭を駆け回っている。


「それでは皆さん分散してお風呂に入ってみてください」


「お風呂場に、頭を洗うシャンプーという石鹸液と体を洗うボディーソープというものを作りました、夫々試してみてください」


「イリーナさんは2階の階段側、イリアさんは2階の奥、イザベラもイリーナさんのあとに、俺は1階のお風呂場をヒューイは2階のイリアさんのあとに入って」


「皆が入っている間に、夕食を作っておくから」


ジンはきょうはハンバーグを出すことにした。


『美食の皿』にジンが銀座で食べたハンバーグを思いながら念じると

2つのお皿に、ハンバーグとポテトフライ、アスパラの炒めと目玉焼きが添えられたものが見事に再現されて出てきた。


それを繰り返すこと3回、5人分のお皿にハンバーグが完成している。


その5皿をキッチンの【次元ストレージ】にしまう。出来たままの状態で食べれるので電子レンジで温めるより美味しい。


エールは2人前を3杯分冷蔵庫に入れて、冷やしておく。


『豊饒の鍋』に人参とジャガイモの千切りをバター炒めした物をいれて

作って置く。


イリーナ、イリアと順番に出てきて食卓に座った。


イザベラ、ヒューイも座り全員が席についたところで、【次元ストレージ】からハンバーグを出す。


「ジン、その前にお風呂のシャンプーとボディーソープは魔法の液体?なんで我が家で出してくれなかったの?」とイリーナが文句を言う。


「ですが、石鹸がおいてあるのに俺の知っているシャンプーなど出したら失礼だと思って・・・」


「いやぁ、いい匂いだし髪がつやつやになるし、ボディーソープもいい匂いだし『マジックアイテム』だわね、ジンのいた世界の物なの?」とイリーナ。


「はい、俺がいつも使っているやつを魔法で作り出しました」


「ほんと、あなたの魔法はチートよね」


「お姉さん、私益々ジンに惚れたわ!私は結婚したいと思った人が居なくてずっと一人だったけど、やっと見つけたわ」


「あら、イリアいくら私の妹だからって我が娘が慕う男を取るつもり?

それなら私が娘に遠慮しないで一緒になるわ」


「あのね、娘をおいて話をどんどん進めないでくれる?」


「娘の幸せを一番に考えるのが母でしょ?」


「あのーハンバーグを食べましょうよ!」とジン。


「いただきまーす」「なに?これ、すごく美味しい!」とヒューイ。


「肉汁がジュワーと出てなんともいえないわ。パパ最高よ!」


「あらホントだわ、とても美味しい!これは病みつきになるわ」とイリーナ。


イザベラはひたすら無言で食べている!


信じられない料理だ。今まで宮廷で食べた肉料理でもこんなに美味しい肉料理は未だ食べたことがないとイリーナは思った。


「ジン、これは本当に美味しいわ...、これからも時々作ってね」イリアおばさんにも好評だ。


「イザベラも無言で食べてないで感想ぐらい言えよ」


「美味しすぎて食べるのに夢中なだけ、そのぐらい美味しいわ」


食後は食器を簡単に一度水で洗い、自動食器洗浄機に入れて洗う。


リビングに5人が座って、アメリカンコーヒーにティラミス、チョコレートケーキ、ショートケーキ2個ずつだした。


途中でイザベラがトイレに立ち、しばらくして悲鳴が聞こえ、その後何故か悩ましい声に変わった。


イリーナが心配になり行ってみると、今だに便座に座ってうっとりしていた。


「イザベラ、トイレで何してるの!早く出て来なさい!」


「お母様、お母様も用を足してみて、そしたらわかるわ。気持ちよすぎいよ、このトイレ・・・」


イリーナもイザベラに言われて、しぶしぶ座ってみる。

「きゃっ!あ〜ん気持ちいいわね、確かに!」


「ジン、あのトイレはどうなっているの?気持ちよくて癖になるわよ」


「いいでしょ?俺がいた世界でのトイレだよ、お尻をぬるま湯で洗浄してくれるんだ」


「でもイザベラ、トイレで悩ましい声は頂けないぞ!勘違いする奴もいるからな」


言われたイザベラは真っ赤な顔をしていた。


夜は、ドールがリビングに座って【シールド】をしている家だが、監視している。


さすがにジンもきょうはくたびれたようで、2階に上がって意識を投げ出した。


翌朝クロワッサンとアスパラベーコン巻きにウィンナーソーセージを20本ほど出して炒め、目玉焼きに果実ジュースとサラダを出して女性陣を待っていた。


ヒューイはジンと朝練をしてすでにシャワーを浴びてスッキリしていた。


みんなを待っている間にジンが入れてくれたコーヒーを飲みながら、昨日からの充実した1日を振り返っていた。


きょうは、ジンがハリス侯爵の元に行くときにヒューイも一緒に行く予定だ。


ドールはイリーナ親子とイリア叔母さんのボディーガード役として留守番だ。


ハリス邸にはジン、ヒューイが行くことになった。


セモアに土地を買って家を建てたことは領地が王族派の男爵が治めているという事から隠していても直ぐバレるので、一応静かなところで技術を磨いて訓練するために買ったと伝えることにいている。


王族派のジバルサバル男爵には未だジン達が家を建てたことは伝わっていないが、ハリス侯爵から即連絡が行くんだろう、鬱陶しい話だが仕方がない。


朝食を食べながら、みんなが快適に寝れたと言ってくれて、内心ジンは嬉しかった。


全ての部屋を自動温度調節して冬は暖かく、夏は涼しくしている。


ベッドも【モデリング】を駆使して作り込んでシーツやクッションなど細かいところで彼はかなり苦労していたのだ。


朝食を終えて、みんな満足そうな顔でコーヒーを飲んでいる。


ジン達は何時に帰れるかわからないが、『遠距離通話器』も有るし、ドールがいるのでジンやヒューイとは念話も通じるので連絡はできる。


コーヒーを飲み終えて、『空飛ぶ車』ごと2人を乗せた車は一瞬で【転移】してキースのハリス侯爵邸の門前に現れた。


衛兵にカードを見せて、ジンが来た旨伝えると、侍従長が直ぐ現れ、侯爵の執務室ではなく、客間に案内され侯爵が見えるまで待つことになった。


「おお、ジン君土地を買う件はどうなった?」


「はい、今日はその件をご報告と思い参りました。侯爵様が推薦してくれた海の近くという事で、セモアの街に家を建てました」


「おぉ、あそこはジバルサバル男爵が統治して居る海辺の静かな街だな?」


「はい、とても魚介類が美味しいので女性陣も納得してくれてます(笑)」


「そうかぁ、良かった!今度男爵の所にでも視察を理由に伺わせて貰うよ」


ジンはその後「セモアの訓練場で暫く模擬戦などをして暮らします」と伝え早々に侯爵邸を辞した。


ジンとヒューイは『空飛ぶ車』に乗り【転移】で一瞬にしてセモアの新居に転移してイリーナ達とケーキタイムをリビングで過ごした。


「お茶とケーキを食べたら、訓練場で模擬戦を昼までやりましょう!」


「相手してくれるの?」とイリーナ。


「ええ、そのために地下に訓練場を作ったのですから」とジン。


ジンたち6人はケーキと紅茶を飲んだ後、地下の訓練場で昼近くまで剣での模擬戦をした。


最初はジンとヒューイが対峙してヒューイが攻めまくるが、丁寧にジンが対処しながら、気になる攻め方を注意して繰り返し攻めさせた。


次に、少し休憩したのち、ヒューイとドールが戦う。


ジンの時と違い、ドールが攻めると、隙をついてヒューイも攻める。


ドールがいつの間にか防戦一方になり胴に峰打ちで攻撃を受けて降参する。


ジンは魔女達の相手をして、魔法の模擬戦をしている。


3人のSランクの魔女達もジンを相手には苦戦の連続で、結局魔力切れでギブアップとなった。


皆で1階に上がり、シャワーを浴び着替えて昼食にする。


今日は海の近くなので、海鮮ちらし寿司にする。


『美食の皿』にジンが日本で食べた海鮮ちらし寿司を念頭に置きながら魔力を少し流して5皿を作り出し、御新香とお吸い物も少し疲れていたので手抜きとは思いながら、『マジックアイテム』に頼った。


またもや大騒ぎするほど好評で、賑々しく楽しい昼食となった。


小1時時間お茶休憩してから、ヒューイとドールが模擬戦をし、イザベラとイリア、イリーナは3対1でジンと魔法の模擬戦をする。


ジンは3人の魔法を決して【ディスペル】はしない、『煌剣』で弾くことはOKにして、模擬戦をする。


ヒューイとドールの戦いは、ヒューイの本気の動きにどれほどドールがついていけるかなのだが、なかなかついていけない。


ドールの【縮地】とヒューイの【縮地】や【瞬足】のスピードの差は歴然だった。


模擬戦を終えたら彼女に100倍時計の『マジックアイテム』を与えようかと考えて居るジン。


イザベラとイリーナ、イリアは3人でそれぞれ種類の違う攻撃魔法を同時にジンに仕掛ける。


イザベラは得意の【エアカッター】、イリーナは【ファイアアロー】、イリアは【アーススプラッシュ】を放った。


対してジンは『煌剣』を一閃して全ての魔法を霧散させる。


ジンが3人に「俺が剣で霧散させた瞬間直ぐに3人は【シールド】をかけて自分の身を防いで!さもないと、【縮地】や【身体強化】で間合いを詰められて、剣で切られたり、魔物だったら首を食われたりしますよ」


「ジンのいう通りだわ、剣で防がれた瞬間直ぐに自分の身をまず守り、次の行動に移るのよ!」とイリーナが二人に告げた。


3人は直ぐ【シールド】をかけ、次の魔法を考える。

イリーナが【ファイアストーム】と【ウィンドストーム】を掛け合わせて火炎嵐を作り出してジンを襲う。


ジンが【アースウォール】でそれを防ぐ。


イリアが【アイスニードル】を空から降らせる。


ジンは【縮地】でその場から一瞬で30メートル程移動する。


イザベラが【アイスロック】で足を狙うが又しても『煌剣』で霧散させる。


何度繰り返しても3人の魔法はジンに届かない。


最後はジンの【結界】の前に纏めて囚われて模擬戦を終えた。


一方ドール達を見ると訓練場の床に大の字で横になりギブアップ状態で休憩中だった。


ジンがヒューイとドールに【ヒール】をかけてやり、皆で地下、1階、2階の2箇所に分散してシャワーを浴びて、リビングでお茶とケーキを食べる。


ドールに念話で晩御飯の準備を頼み、ドールは取り掛かった。


今晩のメニューは以前購入していた魚介類を食べてないのでお好みずしにして生魚と貝類を少し片付けようと考えた。


刺身用に魚を切って、大皿に乗せ、もう一つのさらには貝類、大葉、ネギのきざみ、かんぴょう、きゅうり、などを乗せ、海苔をみんなの前に!置きわさびと醤油を用意して、皆が着席するのを待った。


冷蔵庫からイリーナ、イリアにエールを出してあげる。


「ジン、冷蔵庫ってこんなにも冷えるの?」とイリーナ。


「冷蔵庫も氷も作れるから、温度を調整して野菜を入れとくところと肉を入れとくところとケーキを入れとくところなどを分けて入れとくんです」とイリーナに説明する。


最初の頃は生の魚を食べる習慣がこの世界にはあまりないのか、なかなか魚に手を出さない3人だったが、この前食べて刺身の美味しさを知り、今日は次から次へと自分で作っては食べている。


ヒューイだけがあまり得意でないようで、肉系を入れて食べて居る。


イリーナ達は慣れてきて、エビやタコやキュウリにかんぴょうと包んで食べて、前に朝市で買った魚介類はほぼ食べ尽くしてくれた。


こうして、セモアでの2日目の夜が終わろうとしていた。


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