第55話 未知なるダンジョン
ジンが王宮に王女とアリシアを送って行き、その後ジン達は王都を離れて、ソルンの街に向かった。
ソルンの街は王都に近いため割と人の流れが多い街だ。
ジン達は『王家の短剣』を示して問題なく街の門を潜りソルンの街に入った。
先ずはギルドに行ってクエストを見てみる事にした。
しかし、これというクエストが無い。
ジンはおもむろに、ステータスと同期させている〈タブレット〉を表示させ、"ソルンでの面白い冒険、隠れたダンジョンは無いか?"ポチッた!
『ここには未だ発見されてない未知のダンジョンが有ります。場所は東門を出て南に2キロ程行った丘の岩場です』と表示された!
早速その場所に車で移動する。
岩場に着いたが見た所それらしき場所が見当たらないがジンが【サーチ】を掛けると大きな岩によって塞がれているが向こう側に入口が有る事が分った。
ジンが岩に手を当て、掌底破を放った!
大きな岩が砕け散って、人が2人は通れる洞穴が目の前に現れた。
ドールが【ライティング】魔法で足元を明るく照らしてくれた。
階段が現れ、1階層に皆で降りていく。
1階層の周りには、蛍光草と云う苔の仲間が生えていて、中は割と明るい。
ドールが先頭で次に【サーチ】を駆けながら行くジン、イザベラ、イリーナ、イリアにヒューイの順で向かった。
アースモールが10匹程襲ってくる。アースモールはモグラを何倍にも大きくした魔物で鋭い前歯をもった魔物だ。
ドールが土に【火炎魔法】を放って、あースモールが苦し紛れに土中から顔を上げて姿を表したところを、ドールの『雷剣』とジンの『煌剣』がアースモールの首を一瞬で切り落として行った。
二人で10匹のあースモールを殲滅して、【次元ストレージ】に回収した。
「ジン君、貴方が前衛にいるとドールと二人で全て処理して私たちのスキルアップに繋がらないわ、前衛をドールとイザベラ、次にイリアとヒューイちゃん、私とジン君の順番で行きましょ」とイリーナが提案して来た。
ジンは未知のダンジョンと云うことで、危険度が高いかもしれないと自分とドールが露払い的に進もうと思ったが、イリーナからそれでは彼女達”魔女”のスキルの訓練が疎かになると言われ、結局イリーナの提案を受け入れる。
「イザベラ、ドールが一応【サーチ】を掛けているけど君自身も念のため【サーチ】を掛けながら、自身に【シールド】を掛けて慎重に進んでくれ」とイザベラに油断しない様に言った。
「ジン、言われなくてもそうしているわ!何せ未知のダンジョンよ、何が起こるかわからないもの」
ジンは蛇足だったかと、苦笑いして先を促した。
2階層は平原ステージにグリーンウルフ30匹、オークが20頭にオークキングが1頭いる。
草原に火が移るとまずいので、イリーナとイザベラが【アイスアロー】で10匹倒し、ヒューイが10匹、ドールが10匹共に剣で首を切り落とした。
オーク20頭はヒューイとジンで10頭ずつ首を落として、キングは盾ごとジンが肩から袈裟がけに切断した。
3階層は岩場に岩竜が2匹いる。
イザベラが岩竜の岩礫を避けながらすぐ首元迄間合いを詰めて次の岩礫を履くタイミングを見て【エアカッター】で首を切り落とした。
同様にヒューイがもう1匹の注意を惹きつけている隙にイリアが【身体強化】で間合いを一瞬で詰め寄り、岩礫を吐き出す為に首を出した瞬間を狙って、【アイスカッター】で首を切り落とした。
「さすがだね、魔女さん達のコンビネーションの旨さはまあまあたっだよ」
「ただ首が硬くて魔法では切断できない時はすぐにドールやヒューイに譲って間合いを開けて相手の攻撃を防ぐ体制を取ってくださいね」
「もちろんよ、その辺は私も叔母も次のことを考えながら常にうごいているわよ」とイザベラに言われて、ジンは頭を掻いた。
「ジン君、少し心配しすぎよ、イザベラはともかくとしてイリアはAクラスの冒険者を長くしていた程の実力者だから油断はしてないわ」とイリーナ。
「そうですね、もう少し信用して安心してみる様に努めます」とジンがイリーナに話した。
4階層はアースゴーレムが2体出て来た。
魔石を破壊するか取り出さないと、再生を繰り返す。
ヒューイが蹴飛ばして粉々にしても、また土が集まり出して再生してしまう。
イリーナが「イザベラ、右のゴーレムに集中してまずは【アイスボール】で全体を包み込みましょう。そのあと魔石の部分んだけ【ファイアスプラッシュ】で氷を溶かして、イリアが同じ土の【アースアロー】を強力に打ち込んで!」
「もう1体はジン君に任せるわ」
「はいはい、しかと任されました!」と余裕でジンが魔石位置を【サーチ】で確認して、掌底破1発で破壊して回収。
もう1体の氷詰めのゴーレムもイリア叔母さんの【アースアロー】で魔石を貫いて倒した。
「お母様、わざわざ氷漬けにしなくても最初からイリア叔母様の【アースアロー】で破壊すれば良かったのでは?」
「それじゃダメよ、ゴーレムって意外に動きが早いから、まず動きを止めてからじゃないと防がれてしまうの」とイリーナがイザベラに言う。
ジンが「さすが年の功ですね、イリーナさん」
「あら、実年齢ではジン君と10歳ほどしか長生きしてないわ」と笑いながら答えた。
5階層は海のステージで『空飛ぶ車』に全員で乗り込み、海上2メートルに飛んで【サーチモニター】をかけると、巨大なシー・サーペントが1匹いるのが掛かった。
ジンは『空飛ぶ車』のレーザー砲を打ち放ってそのあと、【アトラクト】で引き寄せて回収した。
「ジン君、今の魔法は何なの?遠くにいる魔物がこちらに引き寄せられて来たようだけど」とイリア。
「あれはジン君の無属性魔法の【引き寄せ(アトラクト)】という魔法ね!この世界で数人できる人がいるわ」とイリーナが答えた。
”さすが元王立魔法学園の教頭先生だな”と思っていたら、イリーナがジンに豊かなバストをくっつけて来て、「お褒めに預かり光栄だわ」と抱きしめられてしまった。
「ちょっと、お母さんジンから離れてよ!ジンが嫌がっているわよ」
「何言ってるの、ジン君は私の胸で気持ちいいのよ嫌がってなどないわ」
と親子喧嘩を始める始末。
とりあえず、5階層を終え6階層に行く手前に宝箱が置かれていた。
罠もなさそうなので、開けると『魔法を跳ね返すリフレクションリング』が入っていた。
ジンの仲間の5人の魔女達は全員『リフレクションリング』を持っているか魔法無効化を持っているので、とりあえずは【次元ストレージ】に回収した。
これは、魔法を放つ魔物に対しても、そのまま相手にその魔法が襲うので対魔法としてはとてもいい『マジックアイテム』だ。
6階層は平原にグランド・スコーピオンが2匹、ダチョウに似た魔物アクスビーク1匹がいる。
グランド・スコーピオンをイリーナとイザベラが【エアカッター】2連発計4発をそれぞれ放ち、硬いスコーピオンの体さえも切り裂いて殺した。
魔力は魔力3倍のアイテムを使い、頻繁に魔法を放っているおかげで効率がかなり高くなって、威力が以前とくらべものにならない程上がっていた。
アクスビークはヒューイが『神龍剣』で首を切り落として、瞬殺した。
アクスビークは動きが早いので普通の冒険者では複数で打ち取るのだが、アクスビークよりも早く動くヒューイには全く問題ない相手だった。
7階層は瓦礫と廃屋のステージに、ガーゴイル3体とレイス1体がいる。
ガーゴイルは通常の冒険者の剣ではミスリル製の剣でも刃が通らない程硬いのだが、ドールとヒューイの二つの魔剣では問題ない。
ドールの『雷剣』とヒューイの『神龍剣』が、ガーゴイル2体を一瞬で羽と首を切り落とした。
もう1体のガーゴイルにイザベラ【ファイアボム】を強烈にぶつけるが硬い体は赤く熱を持つだけで死なない。
そこにイリアの【ウォータースプラッシュ】が放たれて、一気に水蒸気が発生して体全体に亀裂が入った。
それを見逃さずイリーナが【ロックガン】をぶつけて粉々にして葬った。
「ナイス!チームワーク」とジンが褒める。
「このくらい当然よ」とイザベラ。
レイスはヒューイの『神龍剣』から放たれた【浄化魔法】で霧散した。
8階層は森林ステージでサウンドラー2匹、フォレストボア5匹が【サーチ】に掛かった。
イザベラ以下魔女3人は【耐幻聴・幻惑】を持っているので下聴下音による幻惑で体が動かなくなると云うことはない。
しかもイリーナ達はそれぞれシールドをして防御している。
ヒューイとジンで長い首の頭よりの所を切断して、止血し回収する。
フォレストボア5匹はジンが3匹を簡単に素手で殴り倒し、残りはドールが『雷剣』で簡単に倒した。
9階層にはヒュドラがいる。
ジンはドールとヒューイにやらせようとしたら、「ジン君ここは私たちにやらせて」とイリーナ。
「イザベラ、一番左の火を吐いてる奴から【エアカッター】で首を切り落として、イリアは【ファイアスプラッシュ】で切り口を焼いて!」
手際よく指示するイリーナ、”さすがイリーナさんだ”と感心するジン。
イザベラの【エアカッター】も今ではすごい威力で、ドラゴンクラスでも切り落とせるほど成長していた。
時間は掛かったがイザベラとイリアで強敵ヒュドラを倒した。
10階層はラスボス部屋だ、いったん中に入ると魔物を倒すか全員が倒されるまで扉は開かなくなる。
ドールが重い扉を開けた。
中にいるのはミノタウロスの上位種でおそらく特別変異した耐魔法で剣技のレベルが800程あり、かなり強い。
ドールが【縮地】で一気に間を詰め突きを出すが相手も強い、剣ではじきかえす。
しかも、弾いた剣で上段から袈裟懸けに切り返してくる。
しばらくの攻防だが疲れが出てきたのはミノタウロスだ。
一瞬の隙を見てドールが飛び込みざま剣を持つ右手を切り落として、勝負あった。
あとは首を切り落として血止めをして回収した。
ダンジョンコアが有るのでこの階層が最後のようだ。
戻る転移盤も有る。
宝箱を開けると『インビジブルリング』が入っていた。
これを指にはめて魔力をほんの少し流すだけで透明になって他人が認識できなくなる。
【サーチ】のスキルを持っている人間でも通常の力ではこれを見抜くことは不可能で、ジン程の強い【サーチ】力を持っていればこれをしていても簡単に見ぬけられるが、彼ほどの人外はいないので安心だった!
ジンは【次元ストレージ】に回収して、ダンジョンコアも回収して皆と転移盤に乗って全員が出口から出てきて、外の空気を吸った。
ちょうどお昼を食べずに入ったので、岩場のそばでBBQ方式で、エールと果実ジュースを出し、オークやファングボア、マナバイソン、ソーセージ、あとは野菜などを焼いて、野菜コンソメスープとサラダに、クロワッサンを食べた。
大人数でしかも屋外で炭火焼のように焼いて食べると本当においしい。
イリーナとイリアはエールを飲んでご機嫌だ。
食後は車の中でケーキとコーヒーをのみ、皆のんびりして疲れを癒した。
ジン達はソルンの受付にダンジョンコアを持ち込んで未知のダンジョンを見つけて踏破した旨伝えると受付嬢が慌ててギルドマスター室に駆け上がりギルマスを呼んでくる。
ギルドマスターは中年の男性で、ジンが『王族の短剣』を見せて説明しだした。
ギルドマスターのトーマスと云う男性が「ジン殿、申し訳ないが確認の意味で、私と係のものをその場所に今一度連れて行ってもらえないか?」と言って来たので、『空飛ぶ車』に二人を乗せて岩場のダンジョンの入り口に連れて行った。
二人と一緒に階段を【ライティング】を掛けて降りて行き、ダンジョンであることをトーマスと係官が確認して、再びギルドに戻って来た。
「ジン殿、新たなダンジョンを発見していただき誠にありがとうございます。新たなダンジョンは”岩盤のダンジョン”と命名します」
「討伐した、魔物を素材置き場に納品してから地図等を受付に出したら清算させていただきますのでその時またお会いします」と言ってギルマスの部屋に上がって行った。
ジン達は討伐した魔物を素材置き場に納品して、食堂で待つこと40分程。
やっと納品書が出来て、カードと地図、納品書とダンジョンコアを受付に出した。
改めてトーマスが降りて来てダンジョンコアを受け取り、今後もこの地に来たら是非声を掛けてくれと言って2階に上がって行った。
「それではジン様、清算金は白金45枚、金貨95枚、銀貨50枚、銅貨45枚それと新たにダンジョン発見と云うことでギルドマスターからの特別報奨金として白金5枚が出て降ります。カードに入金でよろしいでしょうか?」
「ええ、そうしてください。ギルドマスターのトーマスさんにもお礼を伝えておいてね」と言って冒険者ギルドを出た。
「イリーナさん、ここで一旦レンブラント王国に戻り、キースに行って
”魔女の道楽”の品物の補填やアリシアの剣造をしたり、マジックアイテムを整理したいと思うのですが・・・」
「そうね、”魔女の道楽”の補填もあるし、久しぶりに国に戻ってキースにいくかね!」
ジンは一旦キースに行って、色々やる事を整理しようと思った。
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