第43話 灯台下暗し

ジンは裏ギルド撲滅と王様暗殺未遂を防いだ褒賞としてSSクラスの冒険者になって、特別指名依頼が侯爵から依頼され、侯爵の娘さんも回復術師として参加する特別チームで侯爵領の事件を解決すべく王都からキースにイリーナ達と訪れて居た。


「ジン君、少し見えて来たって言ったけどどんなこと?」とイリーナが昼食を”とまり木”で食べながら聞いてきた。


「まだ、あくまで仮定ですが、誰かが侯爵領地の硝石を掘り起こして爆発物を作り何かに利用しようとしていますね、おそらく大掛かりな組織が動いている気がします。爆発物で戦争を始めるとか、それほどの規模の盗掘ですよ」


「今現状でわかった事でけでも侯爵様に連絡しておいた方がいいと思いますね」


「そうね、私もその方が良いと思うわ」


ジンは早速『遠距離通話器』で侯爵と連絡を取り、下見をした結果の事を伝えた。


「ジン君、儂も今から”とまり木”にすぐ行くからもう少し儂にもわかるように噛み砕いて説明してくれんか?」


「わかりました、お待ちしてます」


昼食を食べ終えて、皆でお茶を飲んで居るところに侯爵と騎士団長と数名の騎士達が来た。

「侯爵様が来たところで、皆にも説明するけど、まず夜に白く光って居たのは山肌を爆破して、火薬の原材料の硝石を盗み出して居ると思われます」


「爆薬は硝石と硫黄それに木炭があれば黒色火薬というものが作れて山を削ったり、家を破壊したり、それこそ戦争の武器にも使えます」


「おそらく侯爵様のこの領地の山に主原料の硝石が有る事を掴んだもの達が何らかの目的で硝石を掘り出して居るのだろうと思われます」


「夜だけの作業なので、まだ掘り出して盗んだ硝石はそれ程多くはないと思いますが、爆薬を作られたら、王宮など吹っ飛ぶ程の威力が有るのでなんとして犯人を捕まえて、硝石を取り返さないといけません」


「ジン君、その火薬というのはどのくらいの威力が有るのだ?」


「侯爵様、火薬の量にもよりますがほんの少しの火薬がどのくらい威力が有るかこの宿の外でお見せしましょう」


ジン達は、通りの裏に行き人があまり居ないところで、ジンは手の平にのせた黒色火薬を地面に置いてほんのごくごくごく小さな火を加えるとバァーンと破裂して地面がえぐれてしまった。


「ほんの僅かな火元でこの火薬は爆発します。そして威力はご覧の通り地面がえぐれるほど威力です」


「これが大量だと、恐ろしい結果になるな!」と侯爵。


「これが帝国側かはたまたレンブラントの王国内の反乱分子かわかりませんが大量に作って爆発させたら罪のない一般人にかなりの被害が出ます」とジンがいう。

「今晩、我々は山に行き掘削している連中を捕まえて、不明の人たちの安否も確認しますが、後ろに侯爵様の軍隊を控えさせて置いて欲しいのです。それと、これは非常に危険なので、フェリシアさんは私の車から出ずに負傷者が出た時に参加するまで静観していてください」


「あいわかった、我々はトキロの街で500人程待機させてジン君からの連絡ですぐ動けるようにしておく、夜7時にはトキロに全員配置して済ませておく」


「よろしくお願いします」


「イリーナさん、僕らの作戦ですが、我々は夕方食事を早めにとって先程の山に向かい、途中から『空飛ぶ車』に【インビジブル】と【遮音】をかけて掘削を始める連中を全員捕獲して、不明者の居所も聴きだすという事で行きましょう。くれぐれも全員火の魔法は使わず、風、土、水系の魔法を使う事、一応捕獲は俺が【結界】か闇魔法で相手を無効化して掴めるとします」


「分かったわ!、フェリシアさんは『空飛ぶ車』の中で待機して負傷者が出た段階で対応ね。車はシールドと隠蔽をして見えなくしとくのね?」


「ええ、音も出ないようにしておきます。イザベラも火はご法度だよ、僕らもレーザーは使わず、他の魔法で対処する」


ジンたちは5時から夕食にして、5時半には山でスタンバイすることになった。


ジンはヒューイと部屋に入り、【サーチ】をトキロから10キロ周辺まで広げて条件を入れて検索すると、どうやら敵さんはキースの侯爵領から出て居る事がわかった。


ジンは当初プロレジア帝国が戦争の為に準備をして居るのかと思いきやそうではなく侯爵様の地元だった。    

灯台下暗しだ。


全員に未だ敵は来て居ないので、ヒューイに『インビジブルリング」の発動をして

もらい、ドールは近くの岩に変化して、イザベラとイリーナにはジンが【インビジブル】をかけて、ジンと共に『空飛ぶ車』の中で<タブレット>のモニター画面で敵が来た時の動きを見ることにした。


周りが暗くなり、キースから15人程の赤点がこの山に近づいて来て居る。


「イリーナさん、イザベラ来たぞ。【インビジブル】とジンは自分と二人に姿をみられないようにして外に出た。


15人が午前中火薬のの匂いがした方に行ったので、イリーナとイザベラに外に漏れないように、”魔法とスキルを持って居る連中を先ずは魔法とスキルを奪って、あとは【ウォータースプラッシュ】辺りで意識を奪うよ”と伝え、[ヒューイ、『神竜剣』で魔法を放つやつ、スキルを持って居るやつらの能力を奪い取ってくれ]


15人が岩肌に到着して、足枷をした20人程を馬車から引きずり出して、先ず15人の内の二人が山肌に火薬の筒を5箇所ほど埋め込んで導火線のような物に火をつけて、山肌を爆破して、坑道のような洞穴が現れたところで、魔法能力を持つ人間4名、スキル持ち4名にジンが一瞬で首の後ろを手刀で意識を奪った。


直ぐに【呪縛の縄】で一人ずつ縛り上げて、イリーナ、イザベラ、ドールとヒューイが一斉に残り7人に魔法を放ち、意識を刈り取った。


足枷をしてスコップやツルハシを持たされて居た連中を解放して、フェリシアを呼んだ。


ジンは『遠距離通話器』でハリス侯爵に直ぐ来てくれと連絡すると7、8分して500人の騎士団を連れて現場に来た。

20人の束縛されて居た中にはBランクとAランクの冒険者もいて既にフェリシアが回復魔法で全員が元気を取り戻して、ジンの【次元ストレージ】から出した、食べ物で腹を充していた。


「ジン君お手柄だな!この15名が今回の犯人たちだな?」


「でも、こいつらは誰かの指示でやっていたと思うので、この中のこいつが主犯格と思われるのでコイツのの脳の中身を探ってみますよ」

とジンが言って、一人の男に喝を入れて気がつかせて、頭に手を添えた。


最初は頭を横や縦に振って避けていたが、次第に白目を向いて、ぶるぶる震えながら、指示者の名前は貴族派の筆頭公爵のアーネスト公爵様だと吐いた。


ジンが「目的は?」と聞くと「うううう、良くは分からないが図書館の地下に古代人が作ったダンジョンの魔物をこの世に出して、王都を蹂躙したのち貴族派達がこの国を乗っ取る予定だと聞いて居る。


「誰がこの爆薬の作り方を知って居るのだ?」とジン。


「そそそれは、そこに居るスキル持ちが硝石と硫黄と木炭のスミを使えばすごい威力の【ファイアボム】が作れると教えてくれて、硝石を掘削していたのだ」


「掘り起こした硝石は公爵に送ったのか?」


「いや、未だキースの隠れ家にある」と言って再び気絶してしまった。


次にジンは火薬のことを知って居るというスキル持ちの男にも同様に脳の中身をのぞいて見ると「火薬を知ったのは偶然でこの山に魔物を狩りに来て偶然知り得た情報だ」と苦し紛れに語った。

「その話を知って居るのは?誰々だ?公爵は知って居るのか?」


「いいいや、うううう、ここに居るボスだけだ!ボスは公爵に城を簡単に吹っ飛ばす魔法の粉を発見したと伝えてそれを言っただけだ」


「それでは他言無用だ!記憶を無くせ」とジンが何やら彼の頭に手を添えて記憶を消した。


同様に最初に聞き出した男の頭にも手を添えて、火薬やここの山の事を全て記憶から消し去った。


一連の状況を皆が黙って見ていたが、流石にハリス侯爵は怒りで握りしめて居る手が震えていた。


「ハリス侯爵、先ずは掘り出した硝石を元の此の坑道に埋め戻しましょう。そのあと、貴族派の公爵の記憶を無くして、例のダンジョンの事を忘れてもらいますから」


「あい分かった!騎士団長、とりあえずこの15人を引っ立てて留置所にぶち込んでおけ」


「それでジン君、硝石の隠し場所は彼らを拷問でもして聞き出そうか?」


「いや、その必要はありません、私の方で場所を見つけておきますので明日午前中に荷台を用意して、ギルド前に10時ごろ来てください」


「よし、分かった!しかし、まさか我が領地内で貴族派の公爵の部下達が動いていたとは灯台下暗しとは良く言ったもんだな。今回もジン君に助けてもらった。みんなありがとう」と”ジンと5人の魔女達”にお礼をいうハリス侯爵だった。

「お父様、私はジン君達と”とまり木”に行って、皆と泊まりますわ」


「そうか、お前も今日はご苦労だったな!」


「村人7名をトキロの街まで騎士団が送り、冒険者13名もハリス侯爵と騎士団長が冒険者ギルドまで馬に乗せて連れて帰ることになった。


ジンは、穴が空いた山肌を密閉して、全員で『空飛ぶ車』に乗り、宿まで数分で戻り、食堂で打ち上げをやろうと、イリーナが宿のローリーにエールと果実ジュースと食べ物を頼んで、ジンはその間に冒険者ギルドに行き、ギルドマスターのギルバートに大体の顛末を話して、無事13名の冒険者は侯爵達が連れて帰って来ますと伝えた。


”とまり木”に戻り、皆で乾杯して、つまみを食べながら今日の話を皆でしていた。


「ジン、ヒューイちゃんが連中の魔法とスキルを無効にしたの?」


「うん、ヒューイの『神龍剣』は相手の魔法を奪い自分の剣に付与できるのとスキルも同様にできるんだ」


「凄い魔剣ね」とイザベラ。


「パパが作ってくれたんだよ」とヒューイ。


「フェリシアも最後、出番があって良かったわ、彼ら疲れ切って全く生気がなかったのがフェリシアの回復魔法で1発で回復したものね」とイザベラ。


「私も何とか皆さんのお力になれて良かったわ!」

「しかし、ジン君の脳の記憶を取り出すのはあれはスキルなの?」


「ええ、魔石を【スティール】とか【アトラクト】と同様に、脳の記憶を引き寄せて取り出す感じですね。何度か強盗に襲われた時に実験してみたら使えたので・・・」


「ジン君魔物の魔石を奪い取ることってできるわけ?」


「はい、魔石だけでもなく人間であれば心臓も奪い取れますよ」


「それって、剣や魔法で殺さなくても心臓を取ったり、握りつぶして殺せるということよね!」


「そうですが、人の心臓を握りつぶしたことはないですよ、以前絡まれた時に脅かして、少し心臓を握って脅かしたことがありますが・・・」


「やはり、あなたは人外よね!」


「それはそれとして、公爵は何で図書館の古代人ダンジョンの事を知ったんでしょうかね?」


「古代人の本でも読める人が居て読み解いたとか?」


「いえ、それは絶対にないわ。漏れたとしたら図書館職員の人の誰かから漏れたと思うわ、それか、最後に警備して居た兵士が公爵側の兵士だったとかね!」


「そうなると、貴族派が地下のダンジョンを知って居ると考えてもう少し頑丈に【プロテクション】を掛けないとダメだな!敵側に【ディスペル】が使える人間が居れば破られることも考えておかないと・・・」

ジンの言葉に皆がしょぼんとするが、イザベラが陽気に、「ジンとヒューイちゃんとドールが居れば出て来てもやつけられるわよ、さぁもっと食べましょ!」と皆を元気付けた。


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