第37話 ダルゼの下宿に戻って来る

アリシアに紹介された"試練のダンジョン"を踏破したジン達3人は『空飛ぶ車』に『フジ』も載せ馬車は【次元⠀】ルルカの門を出ると垂直に浮かんでグングン上昇して800メートル程上がったところで、水平移動に移り、時速960kmと、現代の飛行機と同じ程度の速度で国境を越えてレンブラント王国の王都ダルゼに向かって飛んで行った。


1時間弱で王都ダルゼ上空に着き、王都の入口の門の手前1km辺りの処に着陸して『フジ』に馬車を繋いで城門に向かった。


ジンが冒険者のカードを見せて久しぶりに街の中に入った。


数分で"魔女の道楽"の店先に着いて、「ただ今戻って来ました!」とジンが大声をあげて店に入って行った。


店にはイリーナとイリアの姉妹が居て、「お帰り!」と言ってイリーナがジンに、イリアがヒューイに抱きつき歓迎する。


ジンの声を聞きつけたイザベラが作業場から飛んで来た。


「何お母さん達、二人に抱きついているのよ」


「いゃー、久しぶりに息子が帰って来たもんだから・・・、感激の再開よ!」と照れるイリーナ。


ジンも顔を真っ赤にして照れて、されるままになっていた。


「お帰り、ジン思ったより早かったわね」とイザベラ。


「よく言うわね、イザベラは!毎日、いつ帰ってくるのかとうるさくジンの帰りを私達に聞いてばかりいたくせに」


「わわ私はただジンが作った物が足りなかったら困るから店の心配をしてたのよ」


「あら、そうなの?店が心配だったのねぇー!」とイリーナ。


「ジンに逢いたかった訳ではないんだ!」


「ジンが出かけた翌日からいつ帰るいつ帰るとうるさく言うからジンに逢いたいのかと思ったわ!」


「おお母様、わ私がジンを心配する訳ないでしょ?無敵のジンなんだから!」


「あら、ジン君も可愛い女の子には全く持って弱いわよ!」とイリアが言う。


「イイイリアさん、俺、無敵っすよ!誰にでも」


「あらぁー?ほんとかしら、何処かの王女様といい関係になっていたりして・・・」


「わァ〜…叔母さん、パパの事良く分かってるー」とヒューイが追い討ちをかける。


「とりあえず、荷物を整理して、おりてきますから」とジンは逃げる様に2階の部屋に上がった。


暫くしてジンが降りてきて、3人に『リフレクションリング』を出して渡した。


次に『転移盤』をイリーナに代表で渡し、『浄化の杖』をイザベラに、『魔力増幅器』の腕輪型を【複製】で5個作り3個をイリア叔母さんに代表でわたす。


後は『解毒ポーション』をイザベラに出した。


後は人工の魔物のウルフの1体、これはアダマンタイト製、それとミスリル製の魔物1体を金属材料として渡し、黒龍の大きな魔石を出した。


「俺に必要無い物は人にあげたり、ギルドにそのまま納品したのでお土産というほどではない、こんなもんなんだけど・・・」とジンが言って皆にわたした。


3人は余りにレアな物ばかりで驚いて言葉が出てこない出いると、「やっぱり少なかったよな!ごめん」とジンが謝る。


「ジン君、そうじゃなく、余りに貴重な物ばかりで多すぎて言葉が出てこないのよ」とイリーナが言った。


「『リフレクションリング』なんて白金30枚出しても買えないわ!これを私達3人が貰っていいの?」とイザベラが言う。


「だって、俺たちには必要無い物だし!」と頭を掻きながらジンが応えた。


「ジン君この『転移盤』は?」とイリーナ。


「これは一度行った所にじゃ無いと駄目なんだけど、支店にいく時俺が居なくても不足魔道具を運べるでしょ?」


「普通『転移』って行った所にしか行けないのよ」とイリーナ。


「あっ、そうなの?俺は何処でも行けるのかと思っていたよ!」


「それは貴方が異常なの!」とイリーナ。


「魔力増幅器は3倍になるから3人とも300にはなるよ!未だ足りないかもしれないけどね」


「後は自由に使って下さい」


「ジン、久しぶりに貴方が入れるコーヒーでケーキが食べたいわ!ドール、お店頼める」とイザベラ。


「かしこまりました」とドールは店の方に行った。


ジンは4人にアメリカンコーヒーを入れ、テラミス2個サバラン3個出してケーキを食べながら冒険旅行の話を3人に聞かしていた。


「ジン君はデイマール王国のSランクのアリシアさんとエドモン近衛騎士団長に勝ったの?」


「パパはそれだけでなく筆頭魔法師と2人の魔法師と戦って3対1の魔法対戦でも簡単に勝ったよ!」


「それで王女様に気に入られて魔法を教える事になったの?」


ヒューイの後半の話になると、イザベラが段々怖い顔でジンを睨み始めていた!


「デイマールの筆頭魔法師は恐らく王女様より力は下だな!魔法特性はどちらもイザベラと同じ3特性だけど魔力が王女の方が筆頭魔法師よりあったからね」とジンが言うと、イザベラが「王女の魔力はどの位あったの?」と聞いてきた。


「イザベラと殆ど同じ100クライカナ?」


「でも今迄誰にも魔法が使えるとは言ってなくて使った事が無いようだよ」


「アリシアが弟子にしてくれと言って来たんでしょうがないから、ヒューイが相手する事で逃げて来たよ」とジン。


「ジンは随分女性におモテになったのね!」とイザベラが嫌味に言う。

「イザベラ何対抗心燃やしているの?貴女の強敵は目の前の熟女二人よ、うふふふ」とイリーナが笑った。


ジンは応えようが無くただ顔を赤くして黙りこくった。


話を変えたくて、ジンは支店の魔道具は足りているのか聞いた。


「そうそう、そろそろ明日か明後日『マジックテント』と『魔物避け薬』それと『耐物打撃マント』を持って行こうと思っているところよ」とイリアが言った。


「折角『転移盤』が有るからこれで私だけ行って来るわ!」


「イリアさんだけだと何かあった時心配だから、ドールを連れて行ったら?」とジンが言った。


「ドールちゃん、借りられる?彼女が居れば安心だわ!その日に帰ってくるから明日お借りしていいかしら?」


お茶タイムを終了して、イリーナとイリアが店に戻り、ドールが戻って来た。


イザベラが作業場に戻って朝からやっているマントに黒龍の鱗の粉を吹き付け耐火のマントを作っていた。


ジンが手持ち無沙汰に「イザベラ、暇な時ギルドに行って一緒にクエスト受けないか?」と聞いた。


「そうね、ジン今から行かない?作業も一段落したから今から私大丈夫よ」


「構わないが、ヒューイ、ドール行くか?」


「私、少し寝てるから二人で行って来なよ!」


ジンとイザベラはイリーナに声を掛けてギルドに二人で出掛けた。


「ジン君、お帰りなさい!あら、きょうはイザベラさんと?珍しいわね!」


「イザベラの魔法スキル低下防止の為、俺が保護者だよ」


ジンとイザベラが掲示板を見に行くとオークの群れ12頭の討伐とホーンラビット10匹の討伐が残っていた。


2枚の討伐依頼を剥がしてリリアンに出した。


「オークの群れがいる所は門を出て5km程行った所で、ホーンラビットは西門の3km北に行った所に居ます」


「了解しました、では行ってきます!」


ジンとイザベラはギルドの裏に行き、【転移】でオークが居る近くに降り立った!


「イザベラ、魔力増幅を身につけてるね?後【シールド】して、【ファイアアロー】を連発すれば刈り取れるよ!俺が【アイスロック】で動きを止めるから」


そう言うと、ジンはオーク12頭の足に【アイスロック】を放ち、動けなくした。


イザベラがオークの頭目掛けて【ファイアアロー】を連射し、12頭をあっという間に殺し、イザベラの【次元ストレージ】に回収した。


「流石魔法師の女王様、威力も狙いも的確ですよ!」


「おだてないでよ、久しぶりなので足が震えてがくがくよ」


「次はホーンラビットだな!捕まって、【転移】するから」


ジンとイザベラは一瞬で西門から3kmのホーンラビットの生息して居る場所に【転移】した。


「イザベラ、さっきと同様に俺が【アイスロック】で足を氷漬けにするから【ファイアアロー】の魔力調整した奴で仕留めて!」


イザベラは言われた通り先程より細く小さ目の【ファイアアロー】をホーンラビットの首に連射し、見事に10匹を仕留めた。


ジンと二人でギルドの裏に【転移】して、素材置き場にオークとホーンラビットを納品し、納品書を貰ってリリアンの所に出した。


「随分早かったですね!精算金は銀貨200枚です、イザベラさんのカードに入れますね」


イザベラとジンは家に戻って来て早速イザベラがイリーナに報告する。


「お母様、私オークを12頭、ホーンラビットを10匹倒して、あっという間に銀貨200枚稼いで来たわよ!」


「イザベラ、どうせジン君が【アイスロック】かなんかで動けなくしたのを貴方が【ファイアアロー】かなんかで倒したのでしょ?」


「なんでお母様、見ても居ないのにわかったの?」


「だって久々のあなたが動く標的を正確にこんなに早く仕留めてこれる訳無いもの」


「なんだぁ!全部お見通しかぁー」


「でも、連射の魔法は中々だったぞ」とジンが言う。


「ジン君、余りイザベラに甘くしては駄目よ!出来たらイザベラに風魔法を教えてあげて、特性を持って居るくせに無いと思って使えないでいるのよ」


「なんだ、イザベラも風魔法使えるんじゃない、お前の言葉信じて鑑定して無かったけどきちんと鑑定してやろうか?」


「良いわよ!なんだか裸を見られているようで嫌だわ!」


「考え過ぎじゃない?」


ジンは以前イザベラの魔力は【察知】の感覚を磨く時見たが【鑑定】はしてなかったので改めて見てみると確かに火、水、風の属性の魔法を使え、しかもその上無属性魔法が使えるので実質は4属性魔法が使えるでは無いか!


「イザベラ、お前4属性魔法も使えるじゃないか!何なんだよ、まさしく魔法の女王様だったな!」


「ええ?そうなの?4属性魔法って火と水と風に無属性魔法?ジンから貰った『浄化の杖』入れたら5属性魔法使いだよね!ルルルン♪」


「なんだよイザベラ、急にご機嫌になって」


「だって5属性よ、5よ!信じられないわ」


「ジン、街の外に一緒に行って風魔法をやるから見てて!」


ジンとイザベラは【転移】で街を出て草原でイザベラが風魔法を放った。


流石に生まれ持った魔法師、イメージのつかみが上手い、あっと言う間に風魔法を使いこなし【エアカッター】を連射出来る迄になっていた。


魔力増幅装置も身に付けたせいで同時発動迄やって見せた。


「イザベラ、完全にマスターしたね!『浄化の杖』も試して見て」


ジンに言われたイザベラは『浄化の杖』に少しの魔力を流すと杖が金色に輝き、「全ての悪しき物、瘴気を消したまえ」と呟くと野原一帯を金色が覆い浄化したのがわかった!


「ジン、ありがとう」と言ってイザベラはジンに抱きついて来てキスをした。


"あはぁ、ジンにキス出来たし、魔法もこれで5属性が出来るようになったわ!"


ジンはイザベラ親子と叔母さんからキスされ、野原で呆然としていた。


"俺のこの世界でのファーストキスがイリーナさん、イリア叔母さん、イザベラかよ!なんだかなぁ"と思いながらイザベラと街に戻った。


「ジン、貴方【付与】魔法できるなら、黒龍の鱗や、岩竜の甲羅を削って粉にして私がしてるような作業なしに、耐火、などの付与ができるわよね」


「ああ、『マジックテント』を作ったじゃん!」」


「それなら、今後私の作業の半分をジンに頼んで、その時間を冒険者ギルドでクエストを受けるわ、ジンとヒューイちゃんと一緒に!」


「店の事もちゃんとしないと、拙いだろ?」


「もともと、お母さんは冒険者だったけど、幼い私を育てるのに魔道具屋をやらざる得なかったのよ、だから、母も冒険者に戻りたい位に思っているわ」


「冒険者はイザベラも十分知っていると思うけど、死亡する危険だってあるのだぞ!その辺も考えながら行動してくれよな」


「勿論よ、常にシールドして油断などしないわ」


「それじゃ、夕飯の時にでもイリーナさんに言って、俺たちパーティーを組むか?」


「ジンと?いいの?私まだランクCだよ?」


「すぐ、ランクなんて上がるよ、何せ5属性持ちで魔力300越えの大魔法師だもんな」


「うん、頑張るわ」


その日の夕食の時、イザベラがイリーナに冒険者復帰の剣を切り出すと、意外にもすんなり了解し、それどころか、イリーナとイリアも3人でジンの冒険者パーティーに加わると言い出した。


「勿論、私とイリアはあくまでお店がメインよ、でも、ドールやイザベラが店に出て、私とジンとイリアでクエストを受けるのも有りでしょ?」


「魔道具の製作はジンの【付与】魔法と錬金術のスキルアップの為、時々頑張ってもらい、私が”こんな品物を頼むわ”とジンにアドヴァイスしながら品物の種類を拡充していけばいいわ」


「わぁ!素敵、私頑張ってAランクに早く行きたいわ」


「イザベラ、焦りは禁物よ。黙っていても貴方は直ぐにAランクになれるからね!」


「うん、お母様と叔母様は二人ともAランクだから、復帰登録だけで直ぐになれるわね?」


「イリア叔母さんもAランクですか?」


「そうよ、ジン君の足手まといにはならないようにするわ、怪我したら抱きしめて介抱お願いよ」


「なんで、叔母様を抱きしめる話が出てくるのよ。ジン、叔母様が怪我したら、一瞬でヒールかけて直しなさいね」


そんな話をしながら楽しく夕食が進み、明日イリーナとイリアも復帰申請をしてクエストを受けることになった。


「イリーナさん、パーティー名はどうしますか?」


「”ジンと5人の魔女達”はどう?」とイリーナ。


「”ジンと5人の妻達”」とヒューイがボソッという。


「おいおい、ヒューイ何言い出すんだよ、お前は娘で妻では、っというか何故皆んなが妻になる???」


「それではイリーナさんの意見を取り入れて、”ジンと5人の魔女達”にしまーす」とジンが決めて明日ギルドに行くことになった。


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