第50話 バルセルラの危機
私達はガルムさんひきいる龍たちを追って王都バルセルラを目指した。
リィズさんが本気でスピードをあげ、私達は目も開けられないほどで、とにかく両手両足に力をいれしがみついた。
そのかいもあって程なくして龍達の最後尾に追いつくことができた。
強い風を受けながらもなんとか目を細くして開くと、そこには竜たちがお互いの体を密集させ、まるで魚群をつくるかのように群れを形成しバルセルラを目指していた。
あんなにぎゅうぎゅうにつめて飛んでいたら進みにくそうなものだが。それを知ってかリィズさんは群れから少し離れた位置で並走し龍達を次々と追い抜いていく。
すると龍の群れが不穏な動きをみせる。群れ全体で横に進路をずらしていき、じりじりとこちらに近付いてこようとするのだ。リィズさんも警戒し距離をとったため、つめられる事はなかったが、それでも龍たちは接近を止めようとはしなかった。
それからもリィズさんは接近する龍たちに注意を向けながら飛んでいると、辺り全体がどんどん騒がしくなっていってることに気が付いた。
その音の正体は龍たちが翼を羽ばたかせる音で、音のなる方にリィズさんが首を向けると、そこにはなんともう1つの龍の群れがおり、リィズさんが足をすくめた瞬間、龍たちは一斉にリィズさんに向け翼を羽ばたかせ、一瞬にして私達を群れの中へと飲み込んでしまった。
ガルムさんの策略にまんまと掛かってしまったが、リィズさんは龍達の群れをかいくぐりながらも懸命に先頭を目指していった。
結局最後まで私達が先頭にでることはなかったが、群れの渦からようやく抜け出すとバルセルラの街は目前まで迫っていた。
バルセルラにつくと私達の目に飛び混んできたのは、龍たちが矢継ぎ早に、バルセルラの高い建物に特攻し、街を破壊する光景だった。住民は逃げ惑い至る所で悲鳴が聞こえてくる。
そんな中まだ幼いであろう少女とおぼしき悲鳴が聞こえてきた。
街では至る所で人が叫んでいるため私はどこから少女が助けを求めているか分からず、なんども首を振り目を泳がせた。
するとリップが鳴いて指をさし正確の位置を教えてくれた。
そこには両親と共に逃げる少女がおり、そのすぐ後ろでは一頭の龍が住人達を追いかけ回わす姿が確認できた。
母親の手を握り必死に逃げる少女だが母親の走るスピードについていけず少女がつまずいて転んでしまった。
少女は膝に擦り傷をつくり立ち上がれず泣き出してしまった。龍がその泣き声に反応し、ターゲットを少女に変え襲いかかろうと口を開いて迫っていった。
「いけない」
私はすかさず腰の筒に入った矢をとりだし龍に狙いを定めた。
カイトはすぐに状況をくみ取り足をがっちりと押さえ、私を支えてくれた。
リィズさんもすぐさま加速し、竜との距離をつめ、私の放った矢は見事龍の背中に突き刺さった。
「ごめんね」
矢があたり悲鳴を上げる龍に私は謝った。
「アサしっかり掴まれ」
動きを鈍らせた龍にリィズさんはそのままの勢いで体当たりし、龍は大きく投げ飛ばされ民家に激突し倒壊した建物の下敷きとなり動きをとめた。
その後少女は父親に抱きかかえられその場を逃げだした。
「良かった。カイト、リィズさんありがとう」
「でもアサ、これじゃきりがないぞ」
カイトがいうようにこれじゃまるでらちが上がらない。
リィズさんは黙ったまま上空にあがり、どうやら真っ直ぐハイム城を目指しているようだった。
私はバルセルラの街全体を見渡していると龍たちは近場の建物から襲っていき、奥の街にはまだ被害を及ぼしておらず、それにより国民の避難が遅れていることに気が付いた。
「奥の地区はまだ何が起きてるか分かってないんだわ。早く避難してもらわなないと」
その時私は思い出した。
「そうだ、ルヴィーさんが言ってた。サイレンを鳴らせって」
「そうかサイレンか」
「カイト、バルセルラのサイレンってどこにあるの」
「あそこだ」
カイトが指差す先には黒い塔がみえる。
「リィズさんあの塔めざして」
「分かった」
リィズさんがサイレンを目指そうとすると前方から3頭の龍が近付いてきた。
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