第43話 アサ救出
「確かミハエルと言ったな?」
「はい」
ミハエルさんはルヴィーさんに名前を呼ばれドキっとした。
「ならミハエルお前に聞くが本作戦の指揮官は誰だ?」
ミハエルさんはこの時自分がお叱りを受けているのをようやく理解した。
そして立ち上がり、帽子をとり敬礼をして言った。
「ルヴィー指揮官であります」
「ならば上官に意見を求める時は私に聞くのが筋というものじゃないか?」
「申し訳ありませんでした」
ミハエルさんは自分の非を認め素直に謝罪した。
そしてルヴィーさんは他の女性オペレータにも目を向けて言った。
「お前達もそうだ。今まではバルバロスの指示のもと動いてかもしれんが、今回は私がリーダーだ。次にこのようなことがあれば私は許さんぞ」
バルバボスも立ち上がりルヴィーさんの意見に同意して言った。
「ルヴィー指揮官のいう通りだ。今作戦において私は副官補佐という立場でしかない。意見があるものはルヴィーに全て通すように」
持ち前の太い声で部下達に言い聞かせた。
すると「了解しました」とミハエルさんをはじめ全てのオペレータ達が敬礼をし言った。
流石はバルバロスさんに鍛えられた部下なだけあって皆若いながらも、誰一人不満な表情を一切見せず、一体感のある敬礼をしてみせた。
この時ルヴィーさんは王様が何故彼女らをエリートと呼んだのかを理解した。
「それでルヴィー、この事態をお前は一体どうする?」
バルバロスさんがルヴィーさんに指示を煽った。
「城に残ったもの対応させろ」
そして視線をオペータ達にむけて「お前達は引き続き発進準備を速やかに進めろ」
「はっ」
ミハエルさん共々そう言い。作業に戻った。
バルバロスさんはルヴィーさんの目を気にしながら、こちらを見てないことを確認するとミハエルさんのデスクへと向かい、彼女に小声で言った。
「城内の管理室には今は誰もいないはずだ、放送を使って火災箇所だけでも知らせてやれ」
「わかり……」
ミハエルさんがそう言いかけた所で途中言葉を失った。それはバルバロスの後ろでルヴィーさんと目があってしまったからだ。
全ての感覚が研ぎ澄まされたルヴィーさんには全てが筒抜けに聞こえてしまっていた。
バルバロスさんはルヴィーさんに背中を向けてしまっていたために、姿を確認することは出来なかったが、ミハエルさんの反応をみれば想像に難しくないことだった。
バルバロスさんが振り返りルヴィーさんにいう。
「ルヴィーこのくらいのことは良かろう?」
「ああ」
ルヴィーさん面白くない顔をしたが1つ返事でそう返した。
そして城内に警報と共にミハエルさんの放送が流れてきた。
「軍事棟、二階調理室厨房にて火災発生中、警備中の者は速やかに消化活動に向かって下さい。繰り返します--」
ミハエルさんの放送はルヴィーさんの部屋にいる私の所にも届いていた。
「火災だなんて、もしかしてリップが?まさかリィズさんだなんてことはないよね」
私がそんな心配をしていると遠くから私の名前をよぶ声が聞こえてきた。
「アサいるなら返事をしてくれー」
私はその声がカイトのものだとすぐに分かった。私は椅子から立ち上がり、扉の前に立ち腹の底から大きな声で叫んだ。
「カイト、私はここよ‼」
「リップ今の聞こえたか?」
カイトがリップに視線を向けると、リップはなんだか苦しそうにしうなだれていた。そんなリップをみてカイトは優しい言葉をかけた。
「お前具合が良くないのか?大丈夫だ。アサの元には俺が連れていってやる。アサの顔をみればそんな苦痛きっと吹き飛ぶさ」
それから私達は二人で声を出し合い、なんとかカイトがルヴィーさんの部屋の前に辿り着いた。
「アサここにいるのか」
「うん」
二人で扉越しに会話をした。
「アサが軍事棟にいたおかげで早くみつかったよ」
「でも部屋に鍵が掛かっているの」
「大丈夫さ、こっちにはリップもいる。部屋を突き破るからアサは少し扉から離れていてくれ」
「分かった」
そういい私は扉から五歩下がりカイト達が扉を開くのを見守った。
何度もタックルしたが扉は頑丈でまるでびくともしない。カイトはリップがいると私に言ったが、リップ未だに回復の兆しを見せておらず、カイト一人で扉にぶつかっていた。
カイトがたまらず根をあげリップに助けを求めた。
「リップまだ厳しいか?」
リップは頭を抱えこれと言って変わった様子はない。
すると火災の警報音が鳴りやんだ。どうやら消化活動が無事に終わったようだ。私は内心ほっとして安心したが、それは同時に今度は私達に警備の目が向けられることを意味していた。
そのことを一番に理解してるカイトは焦り表情を浮かべながらも、諦めず扉に食ってかかった。
するとリップがその場を飛び散る大きなか雄叫びを上げた。
「リップ復活したか」
カイトが嬉しそうにリップに振り返った。
「クー」
いつものリップの鳴き声カイトは安心した。
「お前もしかしてあの警報音が苦手なのか?」
もちろんカイトの質問にリップが答えてくれる訳もく「せーの」の掛け声ととも二人で扉にぶつかった。
するとガクと扉を固定する金具が外れる音が聞こえ、その次の瞬間、扉はドミノ倒しのように前方に倒れ込んだ。
カイトもリップも扉と一緒に倒れこみ、その場に大きな音をたて、私はその音に驚いてしまった。
埃が舞い上がる中、カイトとリップの姿がじょじょ見えてきた。
カイトはうつ伏せに倒れ、大の字を作っていた。今日は本当散々ね。
リップもうつ伏せに倒れていたがたが元々四足歩行だったこともあり、すぐ体勢を整え私の胸に飛び込んできた。
「リップ会いたかったわ。私のためにありがとう」
私は甘えるリップの頭も何度も撫でた。
「チャー」
リップも私に会えて嬉しそう。
カイトはようやく立ち上がったが、私達の邪魔をしないためか、私に声をかける様子もなく、膝の埃を払う動作を何度も繰り返した。
そして私からカイトに声をかけた。
「カイトも私のためにありがとう」
「おう」
カイトは照れを隠して、少し格好付けてる様子だけど、さっきの大の字といいなんだか可笑しくなり、笑いそうになり咄嗟にリップに顔近づけ口元を隠した。
せっかく私のため助けにきてけれたのに笑うだなんて失礼よね。
「感動の再会もいいが早くつらかろうぜ、追っ手がくるぞ」
「うん」
カイトはがそのままルヴィーさんの部屋を出ようとしてので、私は声をかけカイトを止めた。
「カイト、この城で軍艦のあるとこって知ってる」
「ああ、リンドセル号のこと行ってるなら3階の発着場にあるが」
「ルヴィーさんを止めにいかなきゃ」
「ルヴィーさん?」
カイトはルヴィーさんを知らない様子だった。幸いルヴィーさんは特徴のかたまりだったので簡潔に説明することができた。
「白髪の人、彼女軍艦使って竜のアジトを攻めるつもりなの」
カイトは白髪の女性と聞いてすぐにピンときた。忘れるはずもない軍人で白髪なんてルヴィーさんくらいのものだったからだ。
「でもあそこは行き止まりだぞ」
カイトは危険だと発着場に向かうことに反対した。
私もどれだけ危険なことだかわかってる。それでも私の決心は固かった。
「私は捕まってどんな仕打ちを受けてもいい、でも竜への襲撃はなんとしてもやめさせなきゃ取り返しのつかないことになる」
「龍には悪いが何もアサが代わりに犠牲になることはないはずだ」
「違うのよカイト。あんな立派な軍艦を使った所で龍は倒せない、ルヴィーさんもそれを承知の上で攻めにいってる。彼女の真の狙いは、龍の怒りを買ってバルセルラを破滅させることなのよ」
「なんだって」
カイトはこの時初めて自分達が追われてる以上に危機が迫ってることを知った。
「分かった、俺が案内するついてこい」
カイトが私に手を伸ばし、私が手を掴むと私を引っ張り、二人で走り発着場に向かった。
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