第39話 アサ救出作戦
その頃カイトは助けを求めるべく階を1つ下がっていた。そこで、彼がよく知るある人物と出会う。
「ゲドロフお前まだ城内にいたのか?」
ゲドロフさんはカイトが心配になり、ここまで追ってきたようだった。
「はぁはぁはぁ、お前が突然いなくなるもんだからよ」
息を荒げるゲドロフさんをカイトは真剣眼差しで見つめ、何かいいたげな様子をみせる。カイトはようやく決心がついたのかゆっくりと口を開きはじめた。
「ゲドロフお前に頼みがある、聞いてくれないか?」
「頼み?こんな時にか」
「こんな時だからお前にしか頼めない」
さっきまで楽しげに会話していたこともあり、カイトその変わりようにゲドロフさん少し戸惑った。
「ローグのことなら安心しろ、竜に襲われる前に逃げるのを俺が確認した」
ゲドロフさんはその言葉に胸を撫で下ろした。
「そうか、なら良かった。で頼みっていうのはそのアサってやつが絡んでるんだろ」
カイトは表情をかえず無言で頷いた。
「はじめに言っとくが危ない綱渡りはごめんだからな」
「分かってる安心してくれ、大したことじゃないさ。口で説明するより実際でみてもらった方が早い、ついてきてくれ」
カイトが手ほどきし、二人は階を上ると仮拘束所の前までやってきた。
カイトとゲドロフさんは柱の影に身を潜め、二人の警備兵を覗きこんだ。
ゲドロフさんはこそこそしているのを不思議がりカイトに問い正す。
「なんだ?仮拘束所に誰か捕まってるのか?」
「アサだ」
カイトの予想外の言葉にゲドロフさんは体をびくっとさせた。
「なんだよアサって悪いやつなのか?」
悪意のない何気ない質問だったが、カイトはそれを受け流せず、つい熱くなりゲドロフさんにくってかかってしまった。
「アサはそんなのじゃない、それどころか竜との衝突を回避しようとしてくれてる」
「で、お前の頼みってまさか?」
ゲドロフさんは大体の検討はついていたがそれでも心配になりカイトに尋ねた。
「アサを救いだす」
カイトは決心が固いようでなんの迷いもなく言い切った。
ゲドロフさんは分かりきっていたことだったが、それでも最悪な答えが現実のものになってしまったことを深く嘆いた。
「俺たちの権限じゃどうすることもできねーよ」
「お前も警棒あるだろ?あれを使って二人同時に奴らの甲冑を叩いてやるんだ」
とんでもないことをひょうひょうといってのけるカイトをみて、ゲドロフさん余計にどぎまぎとした。
「そんなのイカれてるぜ。話が全然違うじゃねーか」
「大丈夫だ絶対に成功する、陛下の護衛を警備につけたから、ここには奴らしかいない」
「うっ」
ゲドロフさんはカイトから一歩身を引いたが、カイトは一歩踏み込みゲドロフに強く訴えかけた。
「龍がここに攻めてくるのも時間の問題なんだ。それを止められるのはアサだけだ。ゲドロフこれっきりだ、俺の頼みを聞いてくれ」
ゲドロフさんはカイトのこんな真剣な眼差しをはじめてみた。ゲドロフさんは諦めたように小さくため息を吐くと、一呼吸してからカイトに言った。
「わかったぜ、でもその女に騙されてるってことはないよな?」
ゲドロフさんのその言葉にカイトは表情を緩め、自然と口許の口角も上がった。
「それなら大丈夫。奴はそんなに頭が回るやつじゃないし、なによりバカだからな」
カイトは自分で言って自分で笑っていたが、ゲドロフさんは私のことを知らないので反応に困った。そしてぽつりと言うのだ。
「世界を救う奴がバカでいいのか?」
ゲドロフさんの言葉にカイトの笑いは一瞬で止み、少し間考えこう訂正した。
「バカ正直に訂正しとく」
それは私にとって全くもってうれしくもないフォローだった。
そしてカイトはこうしてる場合じゃないと気付き、早々に行動することをゲドロフさんに提案した。
「ゲドロフそうと決まれば急ぐぞ。あまり時間をかけたくない」
ゲドロフさんが手を前にだし止めようと試みたが、カイトはそれに目も触れることもなく、警備兵の元へと先行していく。
「待てカイトまだ心の準備が」
するとカイトはゲドロフに振り向き言った。振り返ってもなおカイトの足は止まらない。
「そんなもの戸惑いしか生まん。こういうのは勢いでやるんだよ」
カイトはそう言い残し、前に向き返るとさらにその足を早めた。
ゲドロフさんは考える時間も与えて貰えず、本当に勢いだけで挑むことになってしまった。
カイトが先に警備兵と接触し、後から遅れてゲドロフさんが合流した。
「お勤めご苦労様です」
カイトはできるだけ警備兵に気に入れられようと、ニコやかに愛想良く振る舞った。
しかし警備兵は「ああ」と一言残し、カイトに素っ気ない態度をみせる。
カイトはその警備兵の対応にイラっとしたのか米かみのあたりに怒りの印を浮かび上がらせたが、依然顔はニコニコを維持させていた。
「女の子を拘束したそうじゃないですか?その子一体なにしでかしたんです?」
カイトは私がなんで捕まってるのかをききだそうとした。しかし警備兵は「お前には関係ないことだと」とまたしてもそっぽを向けられてしまった。
「そんなつれないこと言わないで下さいよ」
カイトは馴れ馴れしくも警備兵の肩に腕を回し言った。
その時のカイトの顔は、もう片方の米かみにも怒り全快で、もう人を欺くには無理があった。
ゲドロフさんもこれはまずいと思ったのか慌てふためくが、何を言えばいいかわからず、言葉にならない声を漏らすだけであった。
警備兵はそのカイトのふざけた態度に、目を細め殺気を放つと、カイトの肩に回した腕を捻り上げ、片腕で剣を抜きとり、カイトの首もとに刃を向けた。
ゲドロフさんがカイトを助けようと動いたがもう一人の警備兵に剣を向けられ止められてしまう。
そしてカイトを捕まえた警備兵が彼の見耳元でささやいた。
「二度目はないぞ、仲良し遊びのつもりか?我々は王直属の警備兵、我々がそう判断を下せば格下のお前らなど簡単に裁けるのだぞ」
「分かった、もう何も聞かないよ。だからその物騒なものを引っ込めてくれ」
カイトが顔面蒼白になりながら必死に言った。
「フン」
警備兵は捻った腕をときカイトを解放した。解放するときにカイトの肩を強めに押したのでカイトはおぼつかない足取りを数歩とり、なんとかバランスを取り戻した。
そしてカイトは振り返るとゲドロフさんのもとに向かい、二人並んで先程の無礼を警備兵に詫びた。
「なんかいろいろとすみませんでした」
頭を下げきった時にカイトがゲドロフさんに小声で言う。
「合図をおくるから、覚悟を決めておけ」
ゲドロフさんはそれを聞き自然に拳を強く握りしめた。
頭を上げると警備兵が言った。
「わかったならこんな所でサボってないで自分たちの業務に戻るのだな」
警備兵は目線を下に向け剣を鞘にしまいながら言っていた。それはもう一人の警備兵も同じであった。
カイトが自分達が死角になったことを確認するとゲドロフさんに目で合図をおくり、ゲドロフが軽く頷いた。
そして次の瞬間。
カーンと大きな音を響かせ二人の警備兵がその場に倒れこんだ。
カイトは甲冑が振動し、音をだし続けるのを防ぐためにすぐさま甲冑に手をあて振動を止めた。
「やっちまった」
ゲドロフさんはその場を一歩も動けずにガクガクと体を震わせ、青ざめた顔で自分も貧血で倒れるような気さえしていた。
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