第34話 王都バルセルラ
ここがバルセルラ、南西の地区アルカセルを統治する首都。
第二都市と呼ばれるルドワンとはその差は歴然で、都市化が進みその街並みは本当に人工的なもので道は全て舗装され、
背の高いレンガの建造物が建ち並ぶ。
他の地区を牽制するために政府がこの街にどれだけ力を入れているのかが分かる。
そしてこの街でなにより目を引くのは都市中心に敷かれた十字の運河だ。
その水はアリエル湖という巨大な湖からひいてきてるらしく、その十字運河がバルセルラの生活を支える柱と言っても過言ではない。
生活水につかえることは勿論のこと、至るところに水力発電施設があり、バルセルラの電気動力を安定的に供給し賄っている。
「やっぱりエルモ村とは全然違うのね。未来世界にきてるみたいよ。明け方なのに人も全然多いし」
どこを見渡してもここが同じ時代にある街とは思えない。
特に街にこんな大きな川を敷けちゃうなんて人間の力は恐ろしいものだ。一体どれだけの年月をかけて人はこんな物を作ったんだろう。
幸せなれると信じて。
「市場が開くのが早いからな。城下町につけばこんなもんじゃないぞ」
カイトの言葉に私は現実世界に引き戻された。
「城下町ってあそこのお城のこと」
前方の遠くにみえる城を指差し言った。
「そうだあれがハイム レステンバルム国王平かが住まわる城。ハイム城だ」
「でも城は3つあるよ」
カイトがすぐにその疑問に答えてくれた。
「ハイム城は三棟が連なってる建造施設だからな左が軍事、右が医療施設、そして真ん中の一番高い城がへいかいらっしゃる場所だ」
「そうなんだカイトは詳しいのね」
「俺は軍事施設に住まわせてもらってる身だからな。アサはバルセルラははじめてなのか?」
「小さいときに何度か来たことがあると思うんだけあんまり覚えてなくて」
思い返せば私は小さい時の記憶を全然覚えてない、今まで成長とはそういうものだと思ってたけど。思い返せばお母さんも昔のこと話そうとはしなかった。
「そうか」
「カイトは小さい時からバルセルラ出身なの?」
「そうだ。なかなかいい場所だよ、生活に困ることはないし。まぁ時々高貴な貴族が鼻につくことはあるがな」
カイトがそんな事いうなんて意外、バルセルラに誇りを持ってますって感じなのに。
「ふふ、貴族はそういうものよね」
少しカイトに親近感が沸いた。
「でも生活に困らなくてもお金には困りそうじゃない?」
自分で言ってそれを生活に困るっていうんじゃない?と思った。
「そうだな、その人の身の丈にあった生活をおすすめするよ。
地方からバルセルラに移り住む奴は少ないだろうな。だから夢をみようとルドワンで1発あてようとする奴がいるんだよ。
夢を手にした奴も、どん底に落ちた奴も沢山見てきたけど。運よくこれた奴でも服装をみれば、バルセルラ出身者からすれば地方出身って丸分かりなんだけどな」
カイトがおかしそうに笑う。
「なにそれ偉そう」
そんなことで優越感に浸るなんて呆れた。
「別に蔑むつもりじゃないよ」
カイトが必死に弁明したがもう遅い。それくらい言うならと私はカイトに聞いた。
「カイトの家系はお金持ちなの?」
「うちは親父が軍人だったからな。努力でのしあがったとこはあるけど、お金持ちはあったぜ」
「そうなんだ」
少しカイトが羨まし思えた私の家はお金がなくて税金の支払いにも困ってたから。だからといって他の家に生まれたかったとは思わない両親にこれだけの愛をもらって育ててもらったんだから。
「だったら軍人なんて辛い仕事つかなきゃいいのに」
私はカイトに嫌味を言った。
冗談のつもりだったがカイトの返答は真剣だった。
「父親の背中が格好よくみえたからさ。親父はいなくなっちまったけど。やっぱり親父はどこまでも偉大なんだわ」
「亡くなっちゃったの?」
私は恐る恐るカイトにきいた。
「ああ、俺には命を投げ出してまで命令に従おうとは思えないけどな」
カイトに余計なこと聞いちゃったかな今の私じゃ、気の利いた事なんて言えないや。
でも今のカイトは悲しさより憧れの方が強いみたい。
「そうだね」
私はカイトの父親に尊敬の念をこめ言った。
そのまま進み、城下町が人混みで溢れる前に私達はハイム城まで走っていった。
城の前につき--
「正門は守衛が二人いるから、裏に回ろう」
「うん」
カイトに案内され裏口を目指した。
城は正門を除き全て高い城壁によって囲まれている。丁度城の真裏に頑丈そうな鉄扉がある。カイトは腰にかけたポシェットを漁りカードキーを取り出す。
「このカードキーで入れる」
キーをカードリーダーに読み込ませると認識許可の音をだし、扉が開く音がした。
「よし、入れる」
「カイトなんだか嬉しそうね」
「いや少し不安だったんだ。セキュリティのため定期的認識コードがかわるから、カードの支給がずれ込んだりすると入れない事がたまにあるんだよ」
「そうなんだ、危なかったね」
カイトが鉄の重い扉を開けてくれて、私はあいた扉を通った。
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