第3話 美少女精霊ティエラちゃんの異世界生活日記!

<日記開始一日目>


重大な問題が発生した。

ついでに、主人公クンが最初に登場する地の具体的な座標も分からない。何なら、原作開始が具体的には何月何日のことなのかも知らない。サービス開始日なんて覚えてないしなぁ。


…もしかしなくても、これは詰んだのでは?


とりあえず、ゲーム的ご都合主義で一年の日数こそ地球と同じ(※夏やクリスマスといった季節イベントに合わせるため)ようだが…。

既にこの世界に来てから何日経ったのかもよく覚えていない。3か月くらいは経ってると思うけど、ずっと剣の素振りに回復魔術の練習、狩猟に料理くらいしかしてこなかったので日数の感覚が崩壊している。


とりあえず、今日からはちゃんと日記を取ろう。初期アイテムとして「メモ帳」と「ペン」を設定しておいてよかった(※元々地球にいた誰かの意識なので、無意識的にかつて慣れ親しんだものを持っていたという設定)。


そもそも、原作開始の「5年くらい前」とかいうアバウトすぎる時間軸なので、考えるだけ無駄である。あの時の俺はティエラの設定がうまく創れて舞い上がっており、詳しく考えなかったのだ。テラもこういうこと気付いて指摘してくれればなぁ…。

とりあえず、今日から365日×5(+閏月分×1?)を計測していこう。なにも、主人公クンが初めて会う現地人になる必要はない。それは正ヒロインちゃんの役割であり、元々そうする予定でも無かった。

だから、主人公クンとのファーストコンタクトが1、2か月程度ずれ込むのは許容範囲である。それ以上となると、本編ストーリー介入の余地がなくなって少しキツイかもだけど…。


まぁ、なんとかなるでしょ(思考放棄)!


一応、この体の設定には、「主人公クンがどこにいるか何となく分かる」というのがあるので、彼(或いは彼女)が召喚され次第、分かるのではなかろうか(希望的観測)。

発信機付けたストーカーみたいとか考えてはいけない。ヤンデレ属性は既にいるんだ。キャラ被りしてファンが減る。


とりあえず、当初の予定通り2年は戦闘訓練に注ぎ込もう。2年間毎日素振りしてエネミー狩れば、それなりにはなるでしょ。多分。


オマケメモ今日の献立

■謎草で包んだ猪肉の蒸し焼き

 材料1.赤い茎で青い実がなる植物の葉(香りが強烈)

 材料2.上記植物の実を絞って作った汁(辛い)(命名:唐辛子もどき)

 材料3.酸っぱい黄色の木の実(命名:レモンもどき)

 材料4.いつもの猪

 その他 リンゴっぽい見た目の木の実(命名:リンゴもどき)のジュース(甘い)

・肉と辛味や酸味は相性が良いとの安直な判断。強い香りの草と併せれば肉の臭みも無くなると思った。

・結果:エネミーが匂いに釣られて襲来。戦闘中に葉は燃え尽き、肉は焦げた。

 焦げて苦い+葉の強烈な匂いで超不味かった。おのれ犬型エネミー。




◇◇◇



<日記開始2日目>


今日も猪を狩った。過去最高の大きさ。

初日は日記頑張るぞ!とたくさん書いたけど、2日目にして既に書くことがない。困った。


とりあえず、献立で余白を埋める。


■犬型魔獣の丸焼き

 材料1.犬型魔獣

 材料2.唐辛子もどき

 材料3.レモンもどき

・結果:超不味い。そもそも犬肉が食えたものではなかった。邪魔してきただけに飽き足らず、味も最低とはな。犬嫌いになりそう。どこかに可愛い猫居ないかな。美味しいかもしれない。




◇◇◇



<日記開始10日目>


今日も今日とて猪を狩る。

素振りが様になってきた(と思う)。精霊は誕生時から姿形が変わらないので、筋肉が増えるわけではない。なので、動きに無駄が無くなってきたということだろう。


■謎草Ⅱ包み猪肉の蒸し焼きRリベンジ

材料1.ギザギザで大きな葉(新発見。良い匂い)

 材料2.唐辛子もどき

 材料3.レモンもどき

 材料4.いつもの猪

・結果:うまい。苦節2か月くらい。やっとマシな料理が出来た。




◇◇◇



<日記開始20日目>


猪が見つからない。

周辺を縄張りにしていた奴は狩りつくしたようだ。危険を感じ取ってこの山から撤退した奴らも多い。ふむ。どうしよう。

当初の予定である2年を待たずに山を出るか否か。考える時期になったらしい。


■巨大魚の刺身と巨大魚出汁のスープ

 材料1.巨大魚

・結果:醤油とワサビが欲しい




◇◇◇



<日記開始40日目>


山を出る決断をしてから何日か過ぎた。

準備も出来たので明日には慣れ親しんだ山を離れる。さらば名も知らぬ山よ。


■さらば山よ!フルコース御膳

 材料1.猪(わざわざ隣の山まで出張した)

 材料2.巨大魚

 材料3.唐辛子もどき

 材料4.レモンもどき

 材料5.リンゴもどき

 材量6.香り葉

・感想:うまい。そういえば、巨大魚と猪って町とかで売れるんだろうか。




◇◇◇



<日記開始70日目>


旅の途中で戦争をしている場面を遠目に見た。

流石カオスである。

とはいえ、人間同士が斬りつけ合い、血を流し合う場面を見ているのは気分が良いものではなかった。

もっとも、命がけで止めたいとまでは思わないが。そういう点では、主人公クンはやっぱり凄いんだろうな。マズイ、また主人公クンに心が惹かれ身体が熱くなっている。

危険だ。



■ワニもどきの丸焼き

 材料1.ワニっぽい魔獣

・山から持ってきた手持ちの材料が尽きたから仕方ない。




◇◇◇



<日記開始90日目>


オレはとてつもない衝撃を受けている。

この世界の文明は想像以上に発展していた。

塩は勿論香辛料まで、地球と何ら変わらないレベルで取りそろえられている。

今までの野生児生活は何だったのか…。あの苦労は一体…。


気持ちを切り替えよう。

これなら地球で見聞きした事も活かせる。料理の腕を上げていこう。


しかし、そもそもの金がない。どうしよう。



■鳥型魔獣の丸焼き

 材料1.大型鳥型魔獣(かなり強かったが勝てた。訓練の成果)

・金が無ければ料理の材料も買えない。世知辛い。




◇◇◇



<日記開始400日目>


傭兵として活躍し始めてから結構経った。

最近は盗賊や山賊といった人間を仕留めるのにも随分慣れたものだ。

トドメを躊躇って女傭兵のリズ先輩(レアリティSR)に迷惑をかけた最初の頃が懐かしいな。

そういえば、最近は黒衣の美女傭兵として一部界隈で人気があるらしい。


■ハヤシライスinカオスワールド

・もはやオレの料理スキルはここまで来た。誰もオレを止められない。主食が米ではなくパンなのは悲しいけれど…。この辺りは文化的に馴染みが無いせいで米が出回っていないものの、ある所には普通にあるそうなので、いずれは米を食べたい。


追記:

やはり、今日もリズ先輩はオレの料理を食べに来た。

彼女は元々名のある貴族令嬢だったのだが、数奇な運命の果てに女傭兵として活動していることをオレは知っていた。そして、かつては美味しい豪華な料理を食べていたが、今はそうではないということも。

特殊会話の為にも接点をつくろうと先に料理での懐柔を仕掛けたのはオレであったのだが…。

正体バレしたくないのでこれ以上仲良くなられても困る。どうしたものか。まぁ、料理を褒められるのは悪い気はしない。




◇◇◇



<日記開始420日目>


数年前に無差別にヒトや村を攻撃する暴走精霊がいたとの話を聞いた。

うわーいったいどこの誰だろうなー(棒)

精霊は多くの人から信仰を集める存在でもあり、迂闊に殺せなかったのでたくさんの人が手を焼いたらしい。

全く迷惑な精霊がいたものである(白目)。

よく考えたら、正体が精霊とバレたところでリズ先輩が言いふらさなければミステリアスキャラなのは変わらない。ついでに先輩が主人公クンと合流するのはだいぶ先のことである。なら隠すのも面倒くさいので正体を打ち明けることにしよう。


■異世界親子丼

・材料は大型鳥型魔獣の肉と卵。街道に巣をつくって商隊を襲っていたとのことで討伐依頼が出たのである。かなりの強敵だった。子を守る親の必死さとでもいうのだろうか…。その姿に、コイツらも必死に生きているのだと複雑な気分になった。

ともかく、狩った側としては余さず食べねばならない。それが生きるということだろう。生きるというのは哀しい事なのだなぁ…。

・超絶美味かった。是非また狩りたい。




◇◇◇


<日記開始430日目>


最近、リズ先輩がオレを見る眼が怪しいことに気付いた。

特にオレの正体を打ち明け、お返しとしてリズ先輩が自らの経歴を語った辺りから特に変だ。

自意識過剰だろうか?いや、しかし今のオレは女性ユーザーも男性ユーザーも虜に出来るよう考え抜いた美貌である。

よくよく振り返ってみると、スキンシップも過剰だった気がするな。合うたびに胸やら下腹部やらまさぐられていた。女性同士ならこんなものかと思っていたけれど…。

危険かもしれない。要警戒。


■異世界ミートソースパスタ

・麺の存在に度肝を抜かれた昔が懐かしい。今ではこうして向こうの世界の料理を再現するまでに使いこなしている。麺の様子がだいぶ異なり、そもそも細長くないが味はかなり近い。

・これまた地域によっては細長い麺もあるらしい。相変わらずリズ先輩は物知りだ。彼女から、この街を離れて2人組で各地を巡って見ないかと誘われたが、オレはまだ一人でやらなければならないことがある。そもそも第一目標の元の世界への帰還を忘れてはならない。なさねばならぬことがあると言って丁重に断っておいた。

 彼女はとてもとても哀しそうな表情をしていた。あれ程までに、誰かを直接的に悲しませたのは前の世界も含めて初めてだったかもしれない。申し訳ない気持ちでいっぱいだ。それでもオレの決意は変わらない。

 だが、彼女の瞳には悲しさの他に何らかの強い覚悟のような物も伺えたのだが、何だったのだろうか?




◇◇◇



<日記開始431日目>


リズ先輩に(性的に)襲われそうになった。解せぬ。





―――――――――――――――――――――――――――――


☆キャラクター情報

■名前:リズ(本名:エリザベス・イオ・ベルレフォード)

■レア:SR(通常)/SSR(ハロウィンスタイル・デュラハン)

■種族:人間

■性別:女性

■適正:近攻 ■属性:木・闇

■武器:風魔剣 シュトロム

■奥義:『忠誠は復讐の嵐となりて』

奥義解説:禁忌によりアンデッドとして呼び出した愛馬テンペストに跨り、嵐の如き風の刃を纏って突撃する。正面縦列に特大ダメージを与えるとともに、自身の全能力を上昇。カウンター状態を自身に付与する。

■人物詳細

 元ユピテリア帝国名門騎士家ベルレフォードの貴族令嬢。

 色白で美しい金髪のショートヘアが印象的な長身の女性。かつては髪を貴族令嬢らしく伸ばしていたが、それはかつての己との決別と同時にバッサリと切ってしまった。常に戦闘用の防具(馬上での戦闘を見据えた軽く小回りが利くモノ)に身を包んでいる。

 ベルレフォード家は人馬一体の戦術で右に出る者のいない名門であり、戦闘馬の育成にも力を入れる大貴族家であったという。

 しかし、ある日突然、彼女は全てを失った。覚えのない多くの罪でベルレフォード家は取り調べられたのである。さらに、言い逃れ出来ぬような証拠まで見つかる。何者かに嵌められたと気付いたときには遅く、もはや家の取り潰しも父母の処刑も止めることは叶わなかった。

 兄弟姉妹とも離れ離れとなり、友と思っていた者には見捨てられ、気付けば彼女の周りには誰もいない。令嬢エリザベスは一切の理由を知ることも叶わぬまま、全てを失ってしまったのである。

 失意と屈辱に塗れたエリザベスは名を棄て、ただの「リズ」となった。そして傭兵として活動する傍ら、自らの家を陥れた何者かの情報を集め続けている。いつか必ず報いを与えると誓いを立てて。

 ――その心には今も変わらぬ復讐の嵐が吹き荒れている。

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