第52話 人の心を取り戻すとは?

司馬家が秘密裏に集めた反クラブ帝国、ラッキー・ホット・コモリの一党、協陽党の人数は4000人に達しました。


はにわ市で殺されたり、奴隷にされた人々が数百万とするとわずかな人数ですが、それでもかつて平和に暮らしていた普通の人々が復讐の鬼となったのは驚きの事でした。


この部隊は表むきは、司馬家の四男信頼の元で保護されているという体でしたが、いわゆる難民と似た扱いだったために彼らを全て管理するのは難しい、と報告していました。


報告したのは信頼、報告を受けたのは次男の趙謖であり、いわゆる出来レース的な感じでした。

とにかく、監視しきれない4000人の人々に信頼は部下を通して指示を出します。

ただし、この部下は信頼の部下でありながらそうではない存在でした。


種を明かすと、司馬家三男の信景の手の者でした。

なぜ、こんなメンドクサイことをするかというと、軍隊の内部での規律があるため、4000人の部隊に軍人が命令を出すと後で問題やら責任やらが生じた時に大変なことになるかもしれません。


書類がなく、事実を証明する存在がいなければ、この4000人が何を行っても問題にとりあえずはならないという配慮でした。

おまけに、命令は信頼が出していても、それを証明する者もいません。


現代の軍隊ではいろいろ面倒なことがあるため、こうしたアンタッチャブルな組織運営をするのがよいと司馬家の4兄弟は合意していました。


さて、信頼の怪しい最初の命令はこうです。

「ラッキー・ホット・コモリの一党と協陽党の家の位置や家族構成をクラブ帝国の末端の兵士たちに伝える事!」


なぜ、このような命令を出したのでしょうか。

その前に、この命令を受けた時4000人の復讐者たちはその意味を正確に把握していました。


もし、この命令を実行した場合、奴隷や殺される人間の盾となっていた一般人ではなく、かれら協力者たちが的になると理解したのです。

信頼はクラブ帝国の文字で書かれた個人情報の紙を大量に用意しました。


そして、その紙を見つからないように家の壁や道路標識などにペタペタと貼り付けました。

もちろん、闇夜の見つからない時間帯を選んで。


翌日の昼になると、はにわ市で多くの悲鳴が聞こえてきました。

今までもそうした悲鳴がありましたが、今回は対象が違います。

一般市民ではなく、コモリの一党や協陽党の支持者の家族が奴隷や殺害の的として兵士の慰み者とされていきました。


その声は遠くはにわ市の外にまで響いていましたが、これを仕掛けた4000人の人々は気分よくその悲鳴を聞いていました。

中には涙を流す者や、失った家族の写真を見ながら酒を飲む者など思い思いに感慨にふけっていました。


しかし彼らの復讐はまだ始まったばかりです。


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