第50話 地獄のはにわ市
はにわ市がクラブ帝国に占領されてから2週間が過ぎました。
はにわ市では定期的にクラブ帝国からの徴用がありました。
彼らが望んだものは、食料、金銭、人材、家電、貴重品、芸術品などでした。
食料が必要というのは軍隊だからわかりますが、それ以外の物についていえば、ほとんど兵士たちの欲求を満たすための略奪にすぎませんでした。
ラッキー・ホット・コモリの一党はもはや彼らクラブ帝国の忠実なロボットになっていました。
彼らの目には輝きはなく、クラブ帝国の将校どころか、一兵士の命令にも従う下っ端中の下っ端でした。
それでも彼らがロボットになり切っているのは、彼らの命がかかっていることと、彼ら自身が命に従うとこになれてしまったからです。
略奪と言ってもいろんなところが狙われます。
コモリ一味はなるべく自分たちに害が及ばないように、はにわ市の全く関係ない一般
市民の家をクラブ帝国の兵士に紹介しては、略奪の手引きをしていました。
泣き叫ぶ子供や娘、無力でも抵抗する両親、そうした弱い抵抗すらコモリの一味は暴力で無下に打ち砕きました。
連れていかれた息子や娘がどうなるのか、生命を全うできるのか?それはまさに運しだいでした。
占領当初は奴隷としてクラブ本国に輸送された人々が大勢いました。
彼らは召使、奴隷、炭鉱の労働力などとして、悲惨な状況下で働かされていました。
もちろん、その最中に抵抗したり、逃げようとしたりして殺された者も多くいます。
しかし、占領期間が長引くにつれ奴隷の需要は減っていきました。
何故なら食料の調達に不便が生じたため、生かしておくのがおっくうになったからです。
コモリ一党はそうした変化があっても相変わらず、はにわ市の無辜の民をクラブ帝国に供給し続けました。
しかし、こうした「仲間を売る行為」はコモリ一党だけがおこなったわけではありません。
同じ時期に協陽党の連中も、同士以外はタダの人、ということではにわ市市民狩りをするクラブ帝国兵に積極的に協力していました。
ちなみに、コモリ一味も協陽党も「無抵抗の平和」を掲げていましたが、実際に侵略軍が来ると、真っ先に彼らの先兵となって多くの人々の殺戮に加担しました。
こうした蛮行によって、妻を、子供たちを殺された夫や、家族を殺された妻など一部の人々は何とか逃げ去りはにわ市から脱出しました。
彼らの恨みは言語に絶するもので、戦争前にはごく普通の平和主義者たちが、この邪悪な蛮行を経験することで、考え方も行動もまるで変っていくことになりました。
後にこの戦争で活躍する将兵のうち、はにわ市出身の脱出者の数は5000から10000人と言われています。
彼らは司馬家で特別な任務に就くことになりますが、それは次回のお話で。
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