第26話 ゴブライナ帝国内部での蛮行
同じダークゴブリン同士の戦いとはいえ、戦争は非情です。
攻勢を保てなくなったクラブ帝国の兵士たち、彼らは戦闘だけをしているわけではありません。
むしろ、戦闘以外のことのほうが彼らにとっては興味がありました。
戦闘以外にやる事とは何でしょうか。
実は人間の持つあらゆる欲がこの時解放されます。
彼らはクラブ帝国の国内法から外れます。
つまり法律上は罰せられないということです。
もちろん、いわゆる盗み、暴行、殺人などは軍紀で犯罪とされていますが、落とし穴もあります。
誰も証言しなければ、犯罪を立証することはできません。
私たちの世界だと忘れがちですが、私たちは沢山の法律とそれを守る国民やシステムなどが重なり合って初めて平和を享受することが出来るのです。
もし、戦争地域において、そうした法制度や裁判制度がなければ、当然犯罪者を認定することが出来ないのです。
私たちがどんなに今の政府に不満を持とうがおかしいと感じようがそれが事実なのです。
さて、話を戦場に戻しましょう。
戦わない兵士たちの欲する主なものは三つです。
一つは睡眠、一つは食欲、そして最後は性欲です!
ダークゴブリンは歴史的に戦時中での性欲が強く、歴史の記述で多くの性暴力を行ってきました。
そして、もう一つ触れるべき点として、占領地の人々にも基本的には人権がないということです。
これも先ほどの論理を思い出していただけたらわかると思います。
そもそも人権というのは国や組織がしっかりしてることによって担保される権利です。
そしてそれがなければ、口先でそうしたものを唱えても、守る存在がいなければ犯罪のし放題です。
そしてダークゴブリンは性欲が強く、特に戦場でその欲を満たすとなればもはや誰も止める者はありません。
しかもダークゴブリンの心の量りには、兵士になるということはこうした蛮行がサービスでついてくるという発想です。
サービスを断る客はいません。
当然彼らは客のようなつもりで戦場に来ています。
そこで何を奪おうが壊そうが、戦争で負けて咎める者が現れない限り誰も止めないのです。
さて、性欲について詳しく考察してみましょう。
これは人間の欲求の中でも最も強いという人もいます。
戦場では、他の事を考えるよりも性欲を満たすために何をするかを考える時間が多くなります。
さらに、証拠を残すと目撃者が残ることになり、後々面倒です。
つまり、やり逃げが賢い行動ということになります。
そして、戦場で一番安全なやり逃げは相手を殺し、その存在をなかったことにする!
これです!
賢い兵士は司令官ほど、こうした思考になり戦場は残酷なものとなります。
さて、今までの話をまとめてみましょう。
攻め込まれて、戦場となった地域では攻撃側も防御側も無法地帯になります。
無法地帯で行うことは、強い性欲を満たす事。
(もちろん、略奪や性的でない暴力もありますが)
そして、自分たちの後々の安全のためには、暴行をしたあとは証拠を残さないのが賢い選択となります。
そして、それらの行いは証拠がなければ裁かれず、もちろん自分に不利な証拠を残すのはバカのすることなので皆人間性を捨てて暴虐の極みに達することが自然と行われる。
ゴブライナでは連日の戦闘で1日あたり数百名の兵士が亡くなっていました。
しかし、それ以上に悲惨なのは人数が数えられられず人間の尊厳を無視した暴力行為で命を失った老若男女の死体です。
その数は一日当たり数百から数千人!そしてこれを裁く者はこの異世界の人間にはいませんでした。
所は変わってここは異世界の女神の住まう場所。
彼女は人間にはないテレパシーのような物でこの状況を理解し、苦悩していました。
しかし、まだ彼女は動きません。
これは人間の手によって決着を付けなければならない事案だと認識していたからです。
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