第22話 次男趙謖の嫁選び
長男の馬括は国防族の政治家となり、清楚なエルフの嫁を娶りました。
次男の趙謖は大学を卒業後、どうなったのでしょうか。?
まず彼は中央官僚を目指しました。
趙謖の家族は五常白眉一番良しといわれる優秀な家族の一員でした。
そして彼の時代には学歴と親孝行と善行が人の評価を決める大事な要素でした。
これは、異世界で言えば、試験と家門と面接が人の評価を決めるということです。
特に国家公務員の場合は特にその傾向が強くありました。
ゆえに趙謖は公務員にとても向いていました。
また、彼自身は将や司令という立場よりも、参謀や幹部といった職責の方が己の良さを出すことが出来ると本人も周りも考えていました。
彼が前世で行ったとされる登山活動について、馬括と信景から散々馬鹿にされたのも彼の心を大きく動かしました。
正直、彼の本心は主将の地位はこりごりで、真面目に仕事をしながら誰かを補佐する方が性に合っていると考えを改めたようです。
ここでも四英雄が切磋琢磨することで、前世の弱点を克服する姿が見て取れます。
彼は長男の馬括に遠慮して、馬括の結婚の1年後に結婚をしました。
趙謖の結婚は当時このように言われました。
「司馬家の次男の結婚をまねるな、醜女(しこめ)が来るぞ」と。
彼の選んだ女性は輪の国と密接であり仲の悪い小国ダークゴブリン由来国の女性でした。
それだけでも結婚を断る十分選別の対象でしたが、さらにこの女性は由来国特有の擬態を好みませんでした。
由来国の女性は他国に行くときに擬態をして美しく見せるのが習いでしたが、彼女はそれすら自分の意思で断り、ダークゴブリンというこの世界では見かけが悪いことで有名な姿で常に生活していました。
辛うじて由来国の中では名門の女性でしたが、好き好んで彼女を嫁にするもの好きはこの世界にはいないかに思えました。
しかし、趙謖は敢てその女性の噂を聞くと、自ら迎え入れました。
この話を聞いた他の三英雄たちは驚きました。
丁度ある日の夕食の時間に結婚の話題が上りました。
四英雄がテーブルを囲う中、言葉に遠慮のない信景が揶揄します。
「趙謖はこの時代における人生をあきらめたのか?政略結婚にしてもわざわざダークゴブリンのそれも由来国の女性を選ぶとは、さらに容姿まで悪いとなると取柄などないではないか!」
他の兄弟たちも興味深く趙謖の言葉に注目します。
「丞相!」
「私は丞相の嫁選びに忠実に従っただけだ、おそらく馬括にも劣らぬ人選をしたと私は確信をもっていますよ!」
信景は「無理するな!」とさらに揶揄しましたが、趙謖は澄ました顔で「いずれ分かりますよ」と自信をちらつかせつつ静かに食事を後にしました。
趙謖の官僚としての出世はとても順調でした。
10年たらずで、防衛省装備課長まで上り詰めました。
馬括の政治的な応援もあったとはいえ、趙謖の能力の高さが光ります。
しかし、彼は単に出世だけを目指したわけではありません。
彼は輪の国に長年設置できなかったある組織を作るべく密かに準備していました。
それは「諜報組織」です。
以前、輪の国が戦争で負けた後、諜報組織は美麗七州国によって解体されていました。
彼が嫁にあえて由来国の女性を選んだ理由の一つが、この諜報組織の成立に役に立つという点があったのです。
由来国は小国ですが、それゆえに諜報や外交といった寝技は得意でした。
輪の国は敗戦国とはいえ大国です。
あからさまにズルいことや汚いことがしにくいというハンデをもって国際社会に対峙していました。
その弱点を補うために、また美麗の専横から輪の国を自由にするためにこうした構想を進めてきました。
それと、忘れてはいけない点として、彼の嫁の資質が挙げられます。
彼女は味方に対して善良であり、正直でした。
もし他のダークゴブリンであれば、こうした秘密活動は情報を流されたり、敵に把握されてしまったでしょう。
表向き悪いことをせず、実際に善良だからこそ、彼女は自由に動くことが出来ました。
そして、かつて丞相の嫁の家が名門で丞相の外交や諜報を大いに助けたように、趙括の嫁の家もまた名門で大きな力を持ち、陰で彼を支えていたのです。
ちなみに彼の嫁であるダークゴブリンの名前はダーク・ムーンと言いました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます