第10話 四英雄とパソコン
モブ神はパソコンを四英雄に教えるために黒い一つに塊だった依り代を四つに分けて、それぞれの英雄につかせました。
そして、それぞれが教える姿は、神というよりインストラクターでした。
四英雄はもちろんパソコンを知らず、機械音痴でしたが、それでも元々は数万、数十万を率いた管理者であり、国家や地方を運営するエリートでもありました。
なので、最初こそ苦戦したものの、モブ神はなんとか彼らにパソコンを教えることが出来ました。
そして四英雄たちが最初に調べたのはもちろん自分の事と、自分亡き後の時代でした。
WIKIで調べたり、パソコンの自分の記事を調べたりしたわけです。
あ、そうそう、彼らは時代も言語も異なったいわば会話も出来ない状態でしたが、そこはモブ神様がチートスキルの万能言語を彼らに付与しました。
そしてこの物語はその万能言語を2000年代の日本語に変換しているのです。
さて、馬括と趙謖は自分の経歴を見た後、すぐに頭に血が上りました。
なんとか、チートスキル「完璧の知恵」と「丞相の勤勉」が作用して治まりましたが、その後自分たちが一緒にされていたので、ケンカになりました。
それを横目で見ていた信景と四郎信頼はため息をつきつつ、自分の項目を調べていました。
自分たちの項目を四英雄たちが見た後、彼らはため息をつき、落胆しました。
歴史家というのは残酷です。
歴史上の人物に完璧な答案を要求し、少しでも問題があればあれこれ文句を垂れるものです。
馬括が言います。
「どの連中もひどいことを書いてあるが、特にこの郭隗の馬の骨とかいう作者のゼロからはじめる島津大河誘致の内容はひどい!私と趙謖と四郎信頼についてボロクソに書いているではないか!」
信景は一人だけ名前が出なかったことを自慢し「この馬の骨とやらはわかっているな!」と自慢げです。
それに対して趙謖が毒を吐きます。「単にこの作者が信景殿を知らなかっただけでは?」
ここで、趙謖と信景がケンカになります。
それを四郎信頼が止めに入ります。
こんな感じで、互いに互いの批判や悪口を見つけては論戦になり、誰が優れているかの不毛な戦いが続きました。
とりわけ、弁舌家としても歴史に名高いというか、悪名高い馬括と趙謖の弁舌合戦はすさまじいものがありました。
例えるなら、ひろゆきとか橋本元市長のような己の非を絶対認めない、謝ったら負けみたいな二人なので傍から見てると醜い争いにしか見えませんでした。
時間に直して3日三晩、彼らは論戦を続け、ついに二人ともギブアップしました。
そして、この戦が終わったとモブ神が判断したとき、神は彼らにこうアドバイスしました。
「二人とも自省をしないから、こんな無為、無駄な時間を過ごしたのです。見てごらんなさい」
「あなた方は三日三晩争いましたが、その結果何も得る物はありませんでした。あなた方もバカではないのですから何か得る物があったはずです。今後はこうした無駄な争いをしないで済むようにその頭を使いなさい」
こうして、同じ国で悪名を残した二人の英雄は自分の鏡と討論するかのようなトラウマになる経験と引き換えに自省することを学びました。
一方そのころ、同じ時代にいた二人の英雄は己がいた地図をパソコンから見つけ、図書館の本の中から自分たちが理解できる解説書を沢山読み漁っていました。
それだけではありません。
彼らは先ほどの二人と違い、己の時代の勢力図を見ながら、とても建設的な討論をしていました。
まさに先ほどの二人の醜い争いが嘘のようです。
少し、彼らの討論の内容を聞いてみましょう。
信景「やはり、春から秋にかけて軍勢を動かすのが合理的だな」
四郎信頼「そうですな、戦場としてはやはり美濃を取るのが肝要かと」
それからも、彼らは鉄砲の使用法や騎馬の運用について各々の知識を披露してシミュレートしています。
四郎信頼は戦術や戦場、城の攻略の話を好み、信景は外交や朝廷とのやり取り、将軍家との折衝や内政、城下町づくりや領内の法度(法律)などをスラスラと話していました。
さて、彼らを見ていたモブ神たちはその姿勢を見て感心していましたが、どうも様子がおかしいことに気づきました。
よく会話を聞いてみると、信景からは「おのれ!うつけ!!と憎悪の声がしました」
おなじく四郎信頼も「うつけめ!と憎悪の声が!!」
どうやらこの二人は共通の宿敵がいて、彼に前世で負けた腹いせに、過去に時計をもどして彼を討伐、いや、滅亡させる策を延々と討論していたようです。
モブ神は複雑な思いをしながらも、まあ己を磨き、戦略、戦術、内政、外交を磨くには悪いことではないと考え前向きに彼らの努力を認めることにしました。
彼らの討論はまだまだ続きます。
次回はその内容をさらに突き詰めていくことにしましょう。
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