12.期待の新人の実力
大きなトラブルも起こらず、俺たちは順調なペースで進んでいき、予定よりも早い時間で二十層まで到達していた。
このペースなら、あと十分も掛からずにフロアボスのところへ行ける。
フロアボスは引率者であれば簡単に倒せるだろうし、今日はこのまま終わりそうだな。
ここに来るまでに第十班も何度も戦闘をしている。
三人であることを懸念していたが、教導探索中は三人編成でも問題ないと思うようになっていた。
まずはローガン。
彼は支援魔術の選択、発動タイミング、支援魔術の上昇値、全てが高い水準でできている。
今日は上層ということで、戦闘はすぐに終わってしまったため判断できない部分もあるが、長時間の戦闘でもそのレベルが維持されるなら、既にAランクのパーティに入れても活躍できる実力がある。
攻撃魔術も付与術士で求められているレベルはクリアしているし、彼があんな不遜な態度を取ってしまうのも納得してしまった。
まさしく天才だ。
ただ、指示に関してはお粗末と言わざるを得ない。
まぁ、これに関しては多くの戦闘経験が必要だから、これからもっと良くなるだろう。
続いてキャロライン。
回避型のディフェンダーを目指すと言っている通り、高い俊敏性を持っていて、上層では素早い部類に入るホーンラビットやホワイトウルフですら翻弄していた。
しかし、問題点もある。まずは魔獣を見つけるとすぐに突っ込むところ。
ディフェンダーであるし接近をするのはいいが、彼女の場合は攻撃される前に攻撃しろ!の精神で戦っているようで、見ていてハラハラする。
また、彼女の武器がダガー二本であること。
ダガーは彼女の身軽な動きにはマッチしているが、このパーティは三人構成で前衛は彼女しかいない。
そうすると殲滅力が低いという点で不安が残る。
最後にソフィア。
彼女に関しては他の二人のレベルが高いため、比べてしまうと若干見劣りしてしまうが、魔術の威力、発動までの時間ともに新人とは思えないほどレベルが高い。
彼女の性格故なのか、あまり積極的な行動ができていなかったが、そこは仲間と打ち解けて行けば改善されるだろう。
上級探索者と比べてしまうと当然まだまだではあるが、新人としては欠点らしい欠点も無く、今後の成長が楽しみな子だ。
第九班は……、うん、今後に期待って感じかな。
そんなことを考えていると俺とセルマさんを除いた引率者三人が二十層のフロアボスを倒した。
ひとまず、今日はこれで終了か。もっと問題が発生すると思っていたが、クラン内での取り決めがあるんだろう。
少し判断に迷うような場面に出くわしても、誰も動揺せずに対処できていた。
ここまでスムーズにいくとは正直思っていなかった。
俺は《夜天の銀兎》という組織を過小評価していたようだ。
とはいえ、明日からは中層に入ることになる。進む階層は今日より少ないが、ハードになるのは間違いないだろう。
二十一層に到達し、新人たちが順番に水晶にギルドカードをかざす。それが終わってから全員で地上へ移動した。
予定よりも早く終わったとはいえ、日はとっくに沈んでいる。新人たちの中には緊張も相まって疲労がピークに達している者が何人も見受けられる。
新人に今日の探索は酷だよな。
本当にこの計画を立てた、
全員で朝集合した広場まで移動し、そこでセルマさんが新人たちに労いの言葉を掛け、今日は終了となった。
流石に俺も少し疲れたため、適当に夕飯を済ませてとっとと寝ようと思っていたが、セルマさんに声を掛けられる。
「オルン、新人たちはどうだった?」
「そうですね、第九班は今後に期待、第十班はセルマさんの言っていた通り期待の新人でしたが、連携はあまりできていませんでしたね。特にキャロラインは、今のままだと不安しかありません」
「ははは……。あれでも前に比べればだいぶマシになったんだけどな」
セルマさんが、残念そうな顔で呟く。
あれでマシとは、以前はどんなだったんだ……。
「それじゃ、明日も頼むぞ」
「えぇ、おやすみなさい」
セルマさんと別れ、夕食の準備をするために街を歩く。
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