クールな彼女は今日も可愛い
冬油はこ
クーデレ彼女
自分には付き合っている彼女がいる。
彼女は容姿端麗で成績優秀、それでいて誰にでもクールに対応する、はっきり言おう。
なんで自分と付き合ってるんだと思う。
「あなたが好きだからですよ?」
彼女は今日も甘く蕩けた笑顔で見つめてくる。
一緒にいる時だけに魅せるその笑顔の破壊力といったら核爆弾以上だ。
だが、流石にずっといると変な目で見られるかもしれない。しかし、彼女はいつものように言葉にする。
「陰口言う奴は言わせておけばいいです。あなたと一緒にいたいから私はこうしてずっとアプローチしてるんですよ?」
そのアプローチで理性が吹き飛びそうなんだが。いずれ立ちはだかる大きな壁をどうするんだといえば彼女は答える。
「海外に行きましょう。そうすれば丸く収まります」
海外に? いやいやいや。どうやって親に説得するんだっと思うと彼女は心を読んだようににっこり笑う。
「同級生と見聞を広めに留学したいといえば喜んで出してくれます。こう見えて私、人を説得するの結構得意なんです」
流石は成績優秀な秀才で。話術の才があるなら別のところで活躍出来るのでは。
「あなたを口説くために学んだんですよ?」
突然の爆弾投下に心をグッと堪える。
自分のためにここまでしてくれる彼女は本当に可愛い。自分に勿体ないと思うのだが、そういえば絶対に不機嫌になるので口をチャックしておく。
「私はあの時のことを一生忘れません」
あ、またあの回想が始まるなと思った。このくだりで実に四十六回目だろうか。本当に飽きないものだ。
「そうあれは雨の日。私は用事で急いで家に帰らないといけず傘をさして走っている時にあるダンボールが目につきました。中を開くと三匹の子猫が弱々しく鳴いて、今にも衰弱死してもおかしくありませんでした」
彼女はちらりとこちらを見て微笑む。
「動物病院に連れていけば一時しのぎにはなったかもしれません。けどそのあとが問題です。私の家では動物を飼うことが許されてなくて、近所か施設に預けようと思ったのですが、私には伝手がありませんでした」
彼女は一息吸って話を続ける。
「頭が良くてもいい子にしていても目の前にある
濡れながら三匹の子猫を服で包んで動物病院に走って、その後に風邪を引いたのはいい思い出だ。そのあと親に必死に懇願して猫を飼う許可を得て、今でも三匹の猫はよく足元にスリスリしてくる。
「そして同じ高校であなたと会ったときは運命と感じました」
最初は突然話しかけられて驚いた。だが、三匹の子猫を拾った時のことを聞いて、彼女がそばにいたことを思い出し、すぐにあの時の彼女だと分かった。
「私はあなたみたいに他人の意見に流されず自分の信念を貫き、助けても見返りを求めず去っていくクールなあなたに私は惚れたんです」
彼女は優しく手を絡めて自然と恋人繋ぎしてくる。嬉しい。こんなに自分を好きになってくれるのだから感謝の言葉を伝えないといけない。
「ありがとう。私は君のような彼女が出来て嬉しい」
二つのスカートが揺れてお互い熱を浴びた視線を交差させる。
「ふふ、笑顔も可愛いです」
「そちらこそ」
二人の少女は周囲の目を気にせず、ただ真っ直ぐに廊下を歩いていった。
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