まだ幼さの残るふっくらとした顔にまるい目、

細く明るい髪のリナは、コータの兄の娘であるが、

運がいいことに父親にはあまり似ていない。

姪のリナとの同居は、

コータの預かり知らないところで決まった。

「今日から一緒に暮らすことになったから。」

と、コータの両親、つまりリナにとっての

祖父母が、コータの住む家に連れてきた。突然。

かわいい盛りの孫娘（まごむすめ）を

両親は過剰（かじょう）なまでに甘やかし、

予想通りコータの肩身（かたみ）はますます狭（せま）くなった。

リナは隣の兄の部屋を使っているので、

咳（せき）ひとつ、物音ひとつにさえも気を使う。

さらに食事、風呂、トイレなどの生活の中で、

廊下を歩くだけでもリナの視線がつきまとい、

彼女はコータの部屋にまで平気で侵入してくる。

なにか喋（しゃべ）ればリナに笑われ、

部屋にやって来てはからかわれ、

食事中などは睨（にら）みつけられ、足蹴（あしげ）にされる。

12歳の女の子の言動など理解できるはずもない。

コータの生活は常に脅（おびや）かされた。

引きこもりとしての面目（めんぼく）は丸つぶれだった。

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