ロリータ・コンプレックス

下之森茂

(1/17) 姪、リナ。

「おじさん、これなぁに?」



と、めいのリナがいたずらっぽく笑い、

持ってきたのはコンドームの箱だった。



彼女の叔父おじであるコータが脱衣所の棚に置いて、

時折ときおりひとりで使用しているものを

リナが見つけだして部屋まで持ってきた。



なに、と問われて答えられるものではなく、

ヘビににらまれたカエルのごとく、

コータは顔に脂汗あぶらあせを浮かべて

鳴き声すらでなかった。



「きゃはは。きもーい。」



彼女はいつものように叔父を笑い、

箱を投げ渡して部屋を出ていった。



「6年生のリナちゃんが、

 避妊具なんて知らないはずないわよ。」

と、のちに母にまで言われる始末であった。



そうして今日もひとつ、コータの秘密が暴かれた。



コータは呆気あっけにとられ、

ため息を深く吐いてから

学習机の液晶画面に向き直った。



12年間引きこもりを続けるコータは、

同居する姪に今日もからかわれる。

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