真・最終章 恋愛ダービーマッチ

第38話 早く行かなきゃ!

 長かった〜 マジで長かった

 この3週間!

 盆も終わり夏休みも、あと3日で終わってしまう。


 双子ちゃん騒動のあと、アイリとは全く会えていない。

 俺は夏休みじゅう必死に、届いたコンドームの使い方やセッ○スのやり方を調べていた。


 いっぽうリア充アイリさんは家族旅行やら、友だちとの付き合いやらで予定が埋まってたからな!



 電話やSNSで、ほぼ毎日繋がってはいたが、まったくもって物足りない。

 2年になってから、こんなに会わない期間出来たことねーし



『はやく颯太そうたに会いたいな』


 アイリからのRINEを何回も見てしまう。

 軽井沢の別荘だかで撮った、写真付きRINEは庶民の俺には眩しすぎた。 


 なんなの、このお洒落な朝食。

 いや、ブレックファーストと呼ぶべきだな。 

 ピースサインしてるアイリのキラキラ笑顔と一緒に映る、ふわっふわなオムレツにクロワッサン。美味しそうな生ハムにオレンジっぽいフレッシュジュース。


 ホント可愛くて性格良くて面白くて、家がお金持ち。とかハイスペック過ぎんだろ!

 釣り合い取れるよう必死に頑張らないとだな。

 勉強はもちろん、お洒落にも気を使う! コミュ障でもないし、もう少し自分から周りと打ち解ける努力をする


 アイリがこんな俺でも良いと言ってくれてるが、それに甘えない!


 隣を歩いてるアイリに恥ずかしい思いはさせたくない。

 努力もせずにアイリと釣り合い取ろうとだなんて間違ってる。



「お兄ちゃん。入るよ」



 俺の答えも待たずに芽郁めいが部屋へと入ってくる。


「芽郁。21時には帰ってくるよ」

「芽郁よ。今日はなんの日か知ってるか? 」

「花火大会でしょ? お兄ちゃん関係ないじゃん」


 妹ながら分かってねーな。

 お兄ちゃんは明日には大人になってるんだぞ


「花火が俺を呼んでるんだよ。今日は帰って来ないかもな」

「それならずっと帰って来ないと助かる」



 子どもの芽郁の言うことだ。さらっと流しておこう


「ってか、スマホなってない? 」


 ん? テーブルに置いてあるスマホのディスプレイにはアイリの名前が浮かんでいた。


「電話すっから、出てけよ」

「なんでロック画面がアイリさんで、アイリさんから電話来てるの!? 」



 ギャーギャー騒ぎ出す芽郁を追い出し通話ボタンを押す


『もしもしアイリ? 』

『颯太のアイリだよ』

 

 グハッ めっちゃ可愛い! 

 アイリの声聞くと元気になるし、テンションが上がってしまう。


『颯太? 』 

『あぁ、ごめん。どしたの? 』

『花火大会だけど、17時に駅で良い? 』

『良いよ。18時からだし、ちょうど良いじゃん。ってか、アイリのお母さんとかお父さんは花火大会行かないの? 』

『パパとママも行くと思うよ。毎年行ってるし、しかもどっかに泊まって、次の日に帰ってくるし』


『そ そうなんだ……』

『普段忙しくて会えてないから、こういう時は2人でいたいんじゃない? 』 

『そうだろうな』

『弟か妹出来たらどうしよ』

『お おう』


 ハハハと笑うアイリだが、ご両親は家にいないってことか!


『とりあえず俺は、17時には駅にいるよ』

『だね。じゃ、何かあったら連絡してね』

『了解。またな』   


 ドキドキがとまらねぇ!

 実行に移すときが来てしまったようだ。



 花火大会は19時30には終わる!

 そこからラブホも考えたが、前みたいに誰かに観られるのも嫌だ。

 ってか、前は野々宮さんの陰謀だったが、今度こそ見つかれば停学は確実だろ


 俺の家は芽郁が帰って来るからダメだ! 

 アイリを崇拝してる芽郁だ。絶対に邪魔になる!


 ってことはアイリの家しかねーだろ! ご両親もいないみたいだし。


 どうやって誘うかも調べてみたが、シンプルに『まだ、一緒にいたい』とかが良いらしい。



 コンドームはお洒落な紙袋にでも入れた方が良いよな。

 そのまま持ってるのも何かいやらしい。

 実際にいやらしいことをするんだが!








 しっかりとコンドームをバッグに入れて家を出る。

 大人な俺になって帰ってくるからな。

 いざ、イッてきます!!


 17時前には駅に着けそうだし、前もってアイリにRINEしとくか


『先に着いてると思うから、近付いたら連絡くれ』


 地下鉄の中は浴衣姿のカップルや親子連れで混み合っていた。


 アイリも浴衣姿で来るのかな? 想像するまでもなく絶対に可愛いじゃん!

 他の男からの視線が嫌だけど、アイリを目で追ってしまう気持ちは分かるからな。

 浴衣姿のアイリくらいは許してやろう。


 思わず車両の窓を見る。

 ニヤニヤしている自分と目が合った。

 アイリも言ってたけど、俺も気づけばアイリの事を考えてて、ニヤニヤしてんだな。



 駅に到着すると、人混みはより激しくなっていた

 ただでさえ蒸し暑いのに、こんだけ人が多いと空気が薄く感じてくる。


 とりあえず駅ナカで待ってるかな。冷房あって涼しいし




 …………遅いな。17時過ぎてるけど、アイリがデートに遅刻すんのって初めてな気がする。

 浴衣の着付けに手間取ってるか、人混みで歩きづらいから遅れてんのかな?



 …………いくらなんでも遅すぎるし、俺のRINEも既読になってない。

 何かあったか? 慣れない浴衣で体調悪くなった?? それとも事故?

 嫌なことばっか頭に浮かんでくる



 遠くから救急車の音が近付いてくる


 まさかな。そんなメロドラマじゃあるまいし……


 ブルッブルッブル 


 後ろポッケに入れたスマホが震えるのをすぐさま取り出した。


 良かった。

 アイリからのRINEじゃん

 もっと早くに連絡寄越せっつーの



『パパとママが事故に合った』

『病院に向かってる』

『どうしよう』

『パパとママに何かあったら』

『颯太……』


 マジかよ。考えるより早く手が動く


『病院どこ?』

『俺も向かう』 

『大丈夫だから』

『すぐ向かうから』



 アイリからの返信は病院名だけ入っていた。


 泣きじゃくるアイリの顔が浮かんでくる


 早く行かなきゃ!

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