第36話 ぶっちゃけアイリと最後までしたい!

 帰る俺を下まで見送ってくれるために、アイリと一緒にエントランスまで出てきた。

 高級タワマンだけあって、エントランスから少し離れた所にもテーブルとベンチが置いてある


「少しだけ話さない? 」


 名残惜しいのか、俺の袖を掴んだままベンチを指差すアイリ。


「別に良いけど」 


 2人並んで座る。前はギャルの隣は怖かったし居心地が悪かった。

 それがいつの間にかアイリが隣にいることが日常になっている。


「今日は2人きりで話せなかったし」


 双子ちゃんが帰ったあとはアイリのお母さんと3人で話してたからな。 嬉しそうな顔をしてるけど、こんなことで喜んでくれる彼女とか可愛い……しゅきが押し寄せてくるぜ まったく。


颯太そうた。ホント今日はありがとね」

「全然。俺も楽しかったし」

「しゅきぴが彼ピで、家事ピが出来できピとか超ハッピー」


 コイツたまに褒めてんのかバカにしてんのか分からない時があるんだけど



「せっかくだから、ご飯も食べて行けば良いのに」

芽郁めいが作っちゃてるだろうし」 

「そっか。じゃ、今度は芽郁ちゃんも連れて一緒にご飯たべに来なよ」


 それは丁重にお断りしたい。まだ芽郁にアイリと付き合ってる言ってないし、言うつもりもないから。

 ってか、夏休み明けたら、いつかはきっとバレるよな?

 俺とアイリが付き合ってるってこと


「あのさ。学校では俺からあまりアイリに話し掛けなかったじゃん」

「だね」

「なんかさ。カーストとか周りの空気感とか、どうでも良いからアイリに話し掛けるよ」

「おぉ。颯太も成長したじゃん。って、もうバレてるしね」

「は? 」


 バレてる? 蓮と野々宮さんしか知らなくね??


「期末テスト前に『若生君と、らぶぽよするには』とか『スクールラブするためには』って、相談してたから」

「だれに? 」

「そりゃ、友だちに。みんなめちゃくちゃビックリしてたけど」


 もしかしてそれでアイリの友だちは俺のことをチラチラ見てた?


「じゃあ、付き合ってる事も知ってるんだ」

「あーね。でも、みんなアタシが選んだんなら良いんじゃね? みたいな感じだったから」



 そんなもんか。

 俺が勝手に壁を作ってただけなのか。そう考えると1人で色々と悩んでたのも恥ずかしく思えてくる。


「不思議だよね」

「なにが? 」

「こうして何もしてないのに、アタシには特別な時間になるんだ」


 アイリは指を絡め恋人繋ぎしてくると、頭を俺の肩に乗せるように詰め寄ってきた。

 アイリの長い髪の毛が腕にかかってくすぐったい


「ちゃんとアタシの想いって、伝えた事ないかもだから」


 絡めた手からアイリのドキドキが伝わってきて、なんかこっちまで緊張してくる



「初めて見たときは、なんとも思わなかった。アタシの胸とか足とかみてくる、そこら辺の男子高校生にしか思わなかった」


 訂正したい箇所がいくつがあるが雰囲気は壊したくないから黙ってるけど、あとで訂正してやる!

 


「『競馬好き』だって知って、颯太と話がしたくなった。話してる時もアタシの胸や足ばっか見てたけど、凄い楽しかった」 


 俺ってそんなに見てた? 最初はアイリを怖がってたから、目とか合わせられずに視線を外してだけなんだが!


「勘違いでナンパされてるアタシを助けてくれた。しかも、すっごい手を震えながら」


 アハハッとアイリは笑うけど、こっちはマジで必死だったんだよ!


「しかも、その前にアタシがヤンキーにナンパされてた時は知らない振りしてたくせに」

「え? 気付いてたの?? 」

「券売機から葵ちゃんと改札に入ってくの見えたから」



 マジかよ? それなのに学校で会った時は、何事もなかったように笑顔で接してくれてたんだ



「だから、勘違いでも今度は助けてくれた。ってのが嬉しくて」


 絡めた手はさっきよりも力が……熱がこもっている。


「そこからだよね。颯太見ると何かドキドキするし、葵ちゃんのこと好きだった時は嫉妬しちゃうし」

「野々宮さんが好きってより、勝手に理想化させて、その理想化させた野々宮さんを好きだっただけ」 


 今なら分かる

 俺が好きだったのは野々宮さんだけど野々宮さんじゃない。

 偶像ってやつだ。


「そっか。でも、恋愛絡みで嫉妬なんてしたことなかったのになぁアタシ。で、颯太に会って別れてもすぐ会いたくなる……たぶん、このあとも」


 それは俺も同じなんだけど、会ってない時間でさえ気が付くと


「気が付くと颯太の事ばっか考えてて、恥ずかしくなって、ふと鏡見たらニヤニヤしてるアタシがいて、さらに恥ずかしくなって、もうアタシ何考えてんのよって、更に」

「ストップ! さすがに長いわ!! 」

「じゃ、一言」


 ふわっとアイリの柑橘系の匂いに包まれた。

 首に腕をまわして抱き着いてくる

 胸と唇と心にアイリの柔らかい感触が伝わってくる。キスすることがこんなに気持ち良くて充実感あるものだと思ってなかった。

 

 重ねた唇が離れる



「颯太のこと大好きだよ」



 その一言だけで十分すぎるほど嬉しくなるし舞い上がってしまう。


 今日、何回目のキスか分からないけれど。アイリの唇を自分から塞いだ

 キスするたびに好きが増していく。



「夏休み最後の土曜日、花火大会行こ」


 耳元で囁かれる。

 花火大会にはもちろん行くに決まってるが


 ぶっちゃけアイリと最後までしたい! だって胸とか足とか最高に魅力的だし、俺もアイリ大好きなんだもん

 むしろ、夏休みなんてその為にあるもんだろ!!


 夏休み開けに『颯太、ちょっと大人っぽくなったんじゃね? 』

 って、言われるみたいな。


 これは花火大会。チャンスありではなかろうか!!

 目標を設定しよう……花火大会で童貞を卒業すると。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る