第12話 美容院デビュー
突き指してるからか、箸じゃ食べにくそうだな吉沢さん。
「こっちのスプーンとフォーク使う? 」
前にコンビニ弁当買ったときに使わなかったから余ってるし
吉沢さんに手渡そうするも
「
(しないよ! クラスメイトもこっち観てるし)
声のボリュームを抑えて言うものの吉沢さんはすでに口を開けて待っていた。
こうなったら吉沢さんは引かないだろう
さっさと終わらせて何事もなかったかのように、昼飯を食べた方が早そうだ
(じゃ じゃあ。だし巻き卵で良い? )
コクンと頷いたのを確認してからフォークで差して吉沢さんの口に近付ける
ゴクッ 思わず生唾飲んじゃったけど、口を開けてる女の子ってエロイ……
パクッとフォークに食らいつく吉沢さん
ぷっくら唇でテカってるし、セクシーすぎん?
ゴクッ ヤバッ! また生唾飲んだのバレ……
だし巻き卵を食べ終えると、吉沢さんは舌で唇を舐めた
「めっちゃ濃厚だったね! 」
味の感想なんだろうけど耳元で囁きながら、こっち見つめてこないで……知らずに自分が汚されてる気になるから。
使ってないプラのスプーンで初めて吉沢さんの頭を叩いた。
この哀れな子羊を救ってあげて下さい神様。スプーンだけに
前はギャル怖い。しか思わなかったけど、吉沢さんに対しては、別な怖さの方が出てきたな。
「お 俺も吉沢さんに食べさせたい! 」
凍てつくような視線を蓮に送ってやがる。
「では、私は松岡君に食べさせて差し上げますね」
「じゃあ。アタシが今度は若生君に『あ〜ん』して上げる」
いやいやいや この時計周りになりますと俺が『あ〜ん』して上げるのは野々宮さん!
「颯太が野々宮さんに食べさせて上げれば完璧だな」
もう野々宮さんの事は気持ちの整理ついてるから!
なんなら畏敬の念を抱いてるくらいだから!!
流れに逆らえず、それぞれが食べたいものを言ってから、相手に食べさせる事になったが
土曜までの俺ならド緊張して、野々宮さんの小さいお口に、物を入れるなど出来なかったであろう。
あれ? これ、天国の箸と地獄の箸じゃね!
長い箸を使ってなんちゃらって話の
ギャルから『あ〜ん』してもらい
深窓の令嬢に『あ〜ん』してあげている
天国な状況のようで……クラスメイトの視線が地獄だよ!!
属性が風林火山みたいに全員違うしカオスや!
衆人環視の中でやるもんじゃねーぞ。
接種したカロリーをそのままエネルギーとして放出した昼休みも終わり
放課後、吉沢さんから声を掛けられた。
「若生君。少し時間ある? 」
「まぁ。あるけど……」
「そんな警戒されると、つらみ」
バレてらぁ だって明らかにグイグイ来るんだもん!
「ど どうしたの? 」
「ウン。ちょっと練習台になって欲しいんだよね」
「練習台? 」
「そ。アタシ今度さ、レセプションだけじゃなくて、ヘッドマッサージも挑戦したいな。って」
美容院のバイトの事を言ってるのか?
「突き指してても出来るの? 」
「力の加減とか考えれば大丈夫っしょ」
どうしよう?
別にどっちでも良いけど何故か迷ってしまう
「オークスの話とか、今週のダービーの話もしたいし」
「そっか。良いよ」
「あざまる! じゃ、バイト先まで案内するね」
そのまま吉沢さんと一緒にバイト先まで歩く。
競馬の話も最近は出来てなかったな。
オークスやダービーなら2分半も掛からないレースのに。
そのレースの事を何日経っても思い出して話したり、何日も前から予想や展開を話したり。
競馬は話題に事欠かないな。
そういえば吉沢さんのバイト先ってことは、あの金髪タトゥーお姉さんもいるのかな?
「吉沢さん。バイト先に前の金髪の人いる? 」
「月曜は美容院休みだから。アタシとオーナーしかいないと思うよ」
「そうなんだ」
美容院のオーナーさんって、蓮を大人にしたようなチャラいイケオジのイメージなのですが
「着いた、このビルの5F」
仙台駅近くの雑居ビルで立ち止まる吉沢さん。
ネイルサロンやアクセサリーショップの看板が見えた。
エレベーターが5Fに着いて降りると、お洒落な白を貴重としたお店が目の前にあった。
「入って良いよ」
吉沢さんの後に続いて入るも美容院とか行った事がないし緊張する。
1人では絶対に入れない場所だ
「あら、以外と早かったじゃん」
「うん。放課後になって、すぐに来たから」
奥の扉が開くとティーカップを持った女性が出てきた。
黒のセミロングが似合う、知的な雰囲気のとても綺麗な女性だった。
しかも長身で170の俺と同じ位なんだけど
ヒールじゃないよな? モデルみたいな人がオーナーさん??
けっこう若そうですが
「いらっしゃい。今日は練習に付き合ってくれるみたいで、ありがとう」
「い、いえ」
「若生君。こちらがオーナーで、アタシのママ」
「あっ、お母様で。いつも吉沢さんにはお世話になって……ママ? 」
「アッハハ。アイリの言ってた通り、面白い子ね」
「それに優しいし可愛いよ」
ママでオーナー?
確かによく見たら吉沢さんに似てるかも
猫目っポイところとか、鼻が高いとことか……
「若生君だっけ? こちらこそ娘がお世話になってます」
「いえ、全然。吉沢さん学校でも人気ですし、僕なんか」
「『なんか』って、言葉は使わない方が良いわよ。こっちにいらっしゃい」
オーナーさんに言われるがまま進んでいく
「座ってちょうだい」
俺をお客様用の椅子に座らせるとティーカップを机に置いた。
何が始まるの? 鏡に映る自分が好きじゃないから目のやり場に困る。
「さてと。おまかせで良いかしら? 」
「え? 切ってくれるんですか? 」
「えぇ。もちろん無理強いはしないわよ。娘のテスト勉強のお礼だと思って」
あまり俺は吉沢さんに教えてないけど、美容院で美容師さんに切ってもらうなんて初めてだし
「じゃあ。せっかくなので、お任せでお願いします」
「畏まりました。まずはシャンプーからしましょうね」
吉沢さんのグレープフルーツの匂いって
香水じゃなくてシャンプーの匂いだったんだ
当たり前だけどオーナーさんのシャンプーは心地良く
ずっとされていたいと思ってしまった。
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