第10.5話 四角関係 吉沢 愛梨の場合②
何か言わないといけないのに、喉がヒリつく
『ありがとう』や『嬉しい』より『マジ?』
『冗談だよね??』って言葉が出てきてしまう
薄紫のカラコンのせいか、神秘的な吉沢さんの瞳に吸い込まれる。
とにかく何か言わないと 何をどう言えば良い?
「って、言ったらどうする? 」
は? ニコッと吉沢さん微笑んだ
「冗談だったの? 」
やっぱ、冗談かよ。
とにかく変な感じにならなそうで良かった
「本気だよ」
「え? 」
「メイメイちゃんの言葉に感化されたのか、勢いで言っちゃったけど」
ペタンと座っていた吉沢さんは正座をすると深呼吸を始めた
「アタシは
雰囲気にのまれて俺も正座をしてしまったが……
「今、松岡君とか葵ちゃんの事を考えてるでしょ? 」
「何で分かるの? 」
「分かるっしょ。色々と……4人で1番分かってないの若生君だし」
4人って言葉に引っ掛かるけど、恋愛と無縁だったんだから仕方ない。
経験不足だし、どうして良いか分からんよ
「アタシモテるし、彼女にしたいな。っ思ってる男子もけっこういるんだよね」
「それは知ってるけど」
「若生君からしたら、宝くじに当たる確率じゃん」
俺、めちゃくちゃ下に見られてる!
実際そうなんだろうけど
モブキャが学校でも有名な可愛いギャルに告白されてるんだからな
「凄い嬉しいけど。吉沢さんとは付き合えない」
ごめんね。とは言えなかった。
吉沢さんのプライドを傷付けそうだし、上から目線になりそうで。
「理由くらい聞きたい」
「吉沢さんは友だちだから」
可愛いしスタイルも良い。競馬の話も出来るし一緒にいて楽しい。
俺も男だから魅力的な胸や脚に目が行ってしまう事もある。
付き合ったら付き合ったで、良い関係になるかもしれない
でも、野々宮さんに振られたばかりで……蓮の泣き顔を見たばかりで……吉沢さんと付き合えるメンタルなんか持ってねーよ。
蓮を振って、その幼馴染にすぐ告白なんて出来るもん?
「『友だち』なんて、どうにでも変化するもんよね」
吉沢さんの言葉が投げやりっぽく聞こえるけど
「どういうこと? 」
「友だちから、
確かにあるかもしれないけど、それを言うってことは
「アタシ。気に入ったものは手に入れないとダメなタイプだし」
「そんな感じしますけど……」
「でしょ。だから」
言葉を区切る吉沢さん
なんだこのキラッキラさせたお目々に弾けるスマイルは?
「若生君をアタシに惚れさせて上げるよ」
これが自分に自信のある人の言葉なのか!?
俺は野々宮さんに対して1ミリとも、そんな言葉は思いつかなかった!
「3ヶ月もあれば、アタシの魅力にやられて、若生君から告白してくるって」
ちょっとウインクとかしてこないで。魅力的なのは分かってるし。
「ってか。本当にアタシが若生君、好きだって事に気付かなかったの? 」
吉沢さんは正座していた足を投げ出し、両腕を上に背伸びを始めた。
「あっ ハイ」
「けっこうアピってたのに」
魅力的だと思った事はあるけど、アピられたと思ったことは1度もないのですが
だって、俺と吉沢さんだよ?
俺からしたら
「競馬だとさ。最初っから4.5頭はコイツはないな。って切ってしまう馬っているじゃん。残った馬たちで予想する。みたいな」
「あーね。予想外に置いて、その予想外の馬たちが来たらどうしようもないっ。ってやつね」
「そう、今それ! 」
「アタシの好きはどうしうようもないんかい!! 」
だって、本当に予想外過ぎて、まったく考えてなかったから
「俺の何処が良いのか分からないんだけど」
「面白いし優しいじゃん。不器用なとこも可愛いし、一緒にいると落ち着く匂いするし」
落ち着く匂いってなに?! 何か良く分からないけどめちゃくちゃ照れる。
凄い嬉しいけど蓮の方が男として……何で、蓮と比べようとしてんだ??
俺が今日、野々宮さんに言った事と同じじゃないか
「競馬の話が出来るのが1番大きいかも」
「そっか。これで俺が百合好きになったら最強だ」
「それ良いね! オススメの百合本と百合ゲー貸すよ」
良かった。こんな風に話せて
吉沢さんの気持ちを知った上でも普通に話せてる。
「もうそろそろ帰らないと、その前にネックレス着けて欲しい」
「良いけど」
立ち上がり湿布した指を見せてくるので、代わりにネックレスを手に取った。
そのまま吉沢さんが近付いて来るので、香水の良い匂いが
…………って、めちゃくちゃ近いし真正面から!?
「後ろ向いてくれた方が付けやすいんですが」
「アタシ。後ろに立たれるのNG」
お前はスナイパーか!
今までに何回も後ろに立ったことあるわ!
留め具の形状見ておかないと、上手く出来なかったら恥ずかしい
「じゃ。髪上げとくから、お願いしま〜す」
後ろ髪を手で吉沢さんが上げると、ますます良い匂いがしてくる。
「吉沢さん。恥ずかしいから目瞑ってて」
素直に目を瞑る吉沢さん。
「そうやって、キスする気でしょ」
「しないから! 」
「しても良いよ」
キス顔してくんな! リップでぷっくらしてる唇で挑発してくんな!!
くそっ 早くも惚れさせようとしてきてる?
だが、こんな誘惑に負ける俺ではない!
首に手を回し留め具をイジってると
パチっと吉沢さんの目が開いた
なに、この距離……神秘的だと思ってたが、ド近距離で見るカラコンって面白いな
「アタシが思ってたより近っ!! 」
言い終わると吉沢さんは、また目を閉じた。しかも、思いっきり目に力入れて瞑ってるじゃん。
吉沢さんも恥ずかしいなら瞑ったままにしとけば良いのに
頬が赤くなってるし
どうにか付ける事は出来たけど、もはや抱き締めてしまう一歩前だ。
ドキドキしてる自分と蓮の事を考えてしまう自分
半分は興奮してて半分は冷静になってる自分
「ハイ。終わったよ」
吉沢さんから離れると、良い匂いも遠ざかった。
「何か、お姫様になった気分だった」
嬉しそうにネックレスを触る吉沢さん。
「高校入学したお祝いにパパから貰ったんだ」
「そうなんだ。素敵なパパだね」
「このU字の窪みに幸運が溜まるって言われてるらしいよ」
蹄の形は確かにU字に似てるけど、そういう意味合いもあるのか
「駅までタクシー呼ぼうか? 」
「雨も上がってるし、お金勿体ないから歩く」
「じゃ、駅まで送るよ」
「女の子扱い? 」
「え? まぁ」
「3ヶ月以内には『彼女扱い』になってるよ」
ふふっと微笑してるけど
吉沢さんが俺に好意を言ってくる度に、やっばり蓮の事を考えてしまう。
ショックの度合いはあれど、今日は全員が振られたんだ
月曜日、学校ではみんな普通に話せるのだろうか
第2章 完
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