学校1のギャルがモブキャ競馬オタクの俺と張り合える位に競馬ガチ勢だったので付き合ってみた。 恋愛ダービーマッチ
ちーよー
第1章 華麗なる遭遇
第1話 桜とギャルと鼻血
ギャルだ
2年になった新年度のクラス分け。
教室に入り自分の席へと向かう中、目に入ったのは隣の席に座ってるギャルだった。
何を持ってギャルと言うのか分からないけれど
誰もが言ってるし俺の脳もギャルだと認識していた。
ギャルは頬杖を付きながらルンルンと鼻歌まじり、外で咲き誇る桜を見ていた。
そんなギャルの後ろ髪を横目にしながら、席に着こうと椅子を引いた瞬間。
「よろ〜」
窓越しに目が合ってしまった。
振り向きざま、ひらひらと手を振ってくるギャル
カースト上位にしか出来ないであろう、ブレザーの制服をお洒落に着崩し、シャツの胸元は大きく開いていた
凶器になりそうな長い爪は淡いピンクに塗られ、顔を見ればカラコンなのか薄い紫の瞳。
目鼻立ちがはっきりしてるし、ネコ目だからか
ハーフみてぇ。ってか、やっぱりギャルだ
「どうしたん? 座んないの?? 」
「あっ。あぁ……よろしく」
不思議そうに小首を傾げられたけど、どうして良いか分からない! 何か喋った方が良いのかな?
「ね。窓側の後ろって、イイ感じだよね。ホントよいちょまる〜」
「えっ……あ。あぁ」
よいちょまる? よほど席が嬉いのかテンション高くて怖い
普段のテンションがこれなら疲れるんだけど
それにスカートが短いから、組んでる足に目が行ってしまう
「ら行とか、わ行の人がいなくて良かったわ〜」
「そ そうだね」
「男子だったらアタシと同じ名字の『吉沢』君が
「……そうみたいだね」
ってか、俺の名字知ってるの? 初めて喋るギャルが?? もちろん俺は、学校でも有名なこのギャルを知ってはいる。
お洒落でスタイルも良く、可愛くて学年男女を問わず人気がある『
共通点も接点も何1つなく、俺とは学校でも放課後でも決して交わらないであろう存在
「おっつ〜
ブレザーのポッケに手を突っ込んだギャル友Aが眠そうな顔で現われた
「おはちょす、あいりん。また一緒のクラスだね! って、髪色変えたの? ホワイトブロンドにベージュ?? 」
「愛梨の肌色ブルベだから似合うじゃん、はばたいてるね。って、愛梨なら何でも似合うっしょ」
またたく間にギャル友BとCもやって来ては、フルーティーな良い匂いを漂わせ、俺と『吉沢愛梨』の間に壁を作った
いや、作ってくれた。だな
あれ以上会話が続いたらどうしていいか分からん。
ギャルは正直苦手というか嫌いだ。
偏見かもしれないが今みたいに人目も気にせず騒いで、自分らか自分ら以外か。でしか、物事を考えられないバカが多そうだから
外見で判断するのは良くないけど苦手なものは仕方ない
出来るだけ関わり合いを持たないようにするだけだ
それに何かギャルって怖いし……
「
「おぉ、
「だな、1年間宜しく。せっかくだし一緒に体育館行こうぜ」
茶髪にピアス、見た目がチャラい上に身長180cmのイケメン。
俺と違って人付き合いも良いので男女問わず友達が多く、陽キャって言葉が良く似合う。
一緒に教室を出るときもギャル集団から、あからさまに『蓮君。ヤバッ』って声が聞こえたし、蓮を視線で追ってた女子も1人や2人ではなさそうだ
そんなモテ男の蓮から、廊下に出るなりガシッと肩を組まれた。
「席替われよ。『吉沢 愛梨』の隣とか颯太には勿体ねー」
「お前、派手なギャルとか好きそうだもんな。お似合いだ」
「だろ! だから替われって」
「そのうち席替えあるだろうし、そん時に頑張れよ」
「って言っても、吉沢は『男嫌い』で有名だから難しいだろうな」
「そうなんだ、意外だな」
男嫌い? あのギャルが??
普通にフレンドリーに話し掛けて来たけど、俺は男とも思われてないのか?
「噂だけどな。何人も告ってはヒドイ言葉浴びせられて玉砕してるし、百合好きっての? だから本人もそっちなんじゃねーか。って」
「また極端すぎだろ」
「まぁな。あんだけ可愛いのに彼氏いないのは勿体ねー。俺がなりてぇよ」
あれ? こいつ別な学校に彼女いたよな?
「お前さ彼女とは順調なの? 」
「どの彼女だよ」
何人もいんのかよ!
悪びれもなく当たり前にさらっと言うとこに余裕を感じる
「爆発しなくて良いから刺されろ」
「そこまでバカじゃねーって。いざとなりゃ全員と結婚してやるよ」
「そこまでのバカじゃねーか」
考えてみれば蓮と校内でつるむのは入学式以来だ。
陽キャグループと常にいた蓮と、何処のグループにも属さずボッチだった俺。
特にボッチでも苦にならないし、
だが、周りからどう観られてるかは容易に想像がつく
『これと言った友だちもいなさそうな、大人しい目立たない男子』
承認欲求の塊でもあるまいし、それで良かったのに
年頃の奴らには上辺だけの友だちの多さ。
顔が良い彼氏彼女の有無。で、ヒエラルキー……俗に言うカーストってのが決まるらしい。
形式だけの始業式が終わり、HRまでの休憩時間
蓮も別クラスに遊びに行ったのか、1人になったので昨日の復習をする事にした
ワイヤレスイヤホンを装着しスマホのアプリを起ち上げる。
『散ってゆく桜とは対象に、今から咲き誇らんとする、うら若き乙女たち18頭、ゲートインは順調に進んでおります』
スマホに映るTV画面でも分かるが、阪神競馬場はすでに桜も散っていた
オークスを予想する上でも、最低5回は桜花賞のパトロールビデオ観て分析しないと
リピート再生にしておくか。
『クラシック1冠目、第82回桜花賞。最後に大外18番、アイラブエイルがゲートに入ります』
それにしても仙台は今が見頃で満開なのに
ふと、視線の外から気配を感じると吉沢 愛梨にイヤホンを外されていた
「な 何? 吉沢さん」
「声掛けたのにシカトしてんのかと思ったじゃん」
少しムッとしてるのか眉根を寄せていて目付きが怖い。ってか、カラコンとか見慣れないから凄い怖いんですけど
「ご ごめん」
「『窓開けるよ』って言ったんだけど」
「え? 良いけど……」
別に窓くらい勝手に開ければ良いのに。
俺の表情を読んだのか
「勝手に開けられるの嫌な人もいるじゃん? 一応、周りの人には言おうと思ってさ」
意外だった……意外だったけれど
仮に窓を開けられるのを俺が嫌だとしても俺の返答は『YES』だっただろうな
何故ならNOと言うのが怖いから
イヤホンも返して欲しかったが、そのまま吉沢さんは窓を開け放った
教室へと吸い寄せられる様に風に運ばれてくる桜の花びら
陽に当たる吉沢さんの髪も
体を吹き抜ける風と一緒に、香水なのかグレープフルーツみたいな、柑橘系の良い匂いが無性に心を突っつく
舞い込んで来た花びらは吉沢さんの机にも床にもひらひらと落ちていった
「おお。風流じゃん、良き良き。って、思ったより風が強いし花びら落ちてくるし、やっぱ閉めるわ」
自分から『窓を開けたい』言った手前、バツが悪そうに吉沢さんは振り向いた
「アハハ……ごめんね。ハイ、イヤホン返すよ」
「別に大丈夫だけど、髪の毛」
椅子に座りイヤホンを手渡そうとする吉沢さんに、俺は自分の髪の毛を指差した
「え? 髪の毛?? 」
「桜の花びらが何枚か付いてるから」
「マ? 」
吉沢さんは『どこ、どこ?』と言いながらイヤホンを持った手で髪を触るも花びらは取れなかった。
「若生君。取ってよ」
「え!? 」
「だから取って」
なにこのイベント? 母親と妹以外の異性の髪の毛触ったことないのですが
それに男嫌いって話は? ギャル友に頼めば良いのに
「早く! 休憩時間終わっちゃうし」
「じ じゃあ……」
触った瞬間、怒ったりしないよね? 恐る恐る吉沢さんの髪に触れる
染めてるのにサラサラな髪の毛は、フローラルな匂いとともに、こそばゆく俺の指を滑る
極力、髪の毛には触れないように花びらだけを
集中するんだ! 集中、集中
「取れた? 」
「もう少し……あとは頭頂部に付いてるのだけ」
「この姿勢だと、取りづらいかな? 」
吉沢さん! 前屈みになるから、角度的に胸チラしちゃってるんだけど!! 谷間が気になるし、スカートも短いから太もも見えるし!
制服はちゃんと着こなせ!!
着崩しするな……ちゃんと着たほうが清楚で可愛いから!!
あれ。吉沢さんが着けてるシルバーネックレスって、先が
胸の谷間ギリの所で、吉沢さんのシルバーネックレスは止まっていた。
蹄って珍しいんじゃないか?
ハートだったりは良くあるだろうけど
「若生君。アタシがした事だし、減るもんじゃないから良いけど」
前屈みになりながら、髪の毛を耳に掛け上目遣いしてくる吉沢さん
「胸、ガン見し過ぎじゃん? 」
「違う。蹄を。ってか、気付いたら、見えなくなる様に押さえてれば、いやYシャツのボタンを」
「違くないじゃん……あれ。これって昨日の『桜花賞』……蹄!? 」
ガンッ
へ? 何が起こった?? 鼻がズキズキする
「大丈夫!? ごめん若生君!! アタシが急に立ち上がったから」
「ふぁいぶょうぶ。ひたくなひから」
吉沢さんに頭突きされた。みたいになったのか
口の中が鉄の味するし、折れてはないだろうが鼻に違和感が
鼻を
「よしじゃわしゃん。じぇんぶとれたよ」
「ありがと。それより、座ってなよ。血が出てるじゃん、鼻血だよ鼻血」
『ティッシュティッシュ』と言いながらバッグに手を突っ込み、吉沢さんはポケットティッシュを取り出した
「少し上向いて」
言われるがままに上を向いた
立ってる吉沢さんの胸が……顔が真上に見える。
「ティッシュ詰めるね。それと」
鼻の穴に優しくティッシュを詰めると少し屈み耳元で囁いてきた
「放課後……用事あるから残ってよ」
最後に息をふぅ~。っと、吹き掛けられ色んな意味でゾクゾクっと身震いした。
微笑む吉沢さんの耳には俺のイヤホンが着いていた。
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