第47話 やっちゃった

 吾作はひとっ飛びでお寺へ向かった。

 お寺の門の前まで来た吾作は、相変わらず光が刺さり痛かがると、すぐに茂みに隠れて、和尚さんをどう呼ぼうか考えた。


(困ったなあ。わしの声が届くとは思えんし……あ、ちょっと試しにやってみるか)


 吾作は、目を閉じて何かぶつぶつ言い始めた。

 すると、茂みの中から一匹のネズミが現れた。


「なあネズミさん。悪いだけど、和尚さん呼んできてくれるかん」


 吾作はそのネズミに頼んだ。

 するとそのネズミはお寺の門めがけて走り始めた。しかし、門に入った途端、走るのをやめて、まるで自分は何をしていたんだろう。と、言わんがばかりに周りをキョロキョロして、またお寺の門をくぐり、茂みの中へ消えていった。


「やっぱダメかあ~」


 ネズミがダメだった吾作は、少し考えた末、石か何かをお寺の和尚さんが寝ている建物に当てればそのうち気づくんじゃないかと思いたった。そこで吾作は小さな石を投げ始めた。

 しかし吾作の位置から和尚さんの寝ている建物は遠く、投げた小石は届かない。


 もっと勢いが必要だ!


 そう思った吾作は、もう少し大きな石を持って思いっきりその建物に向かって投げた。すると今度は勢いがよすぎて、


 バゴーン!


「ギャ~!」


 中から叫び声が聞こえた。ガッツリ建物に穴を開けてしまったようだ。すると和尚さんや小僧さん達が大騒ぎをしながら建物から飛び出して建物の穴を見始めた。吾作は(やっちゃったっっ)と、思いながらも、


「おーい! 和尚さーん!」


と、力の限り叫んだ。その声にすぐに気づいた和尚さんと小僧さんが、何事かよく分からないまま吾作のいる門の外まで来てくれた。


「よかった~♪ 気づいてくれて~♪」


「今のあれ! おまえかん! 建物を壊しておいて、よかったとか言うな!」


 和尚さんはカンカンに怒っていた。それにたいして小僧さん達は笑っている。

 そんな怒っている和尚さんを気遣う事もなく、吾作は事情を説明した。すると、


「何? ほんじゃとりあえずわしらは代官のトコへ行かんと! ほんじゃみんな、留守を頼んだに!」


「はい!」


 小僧さん達は元気に返事をした。そんな訳で吾作と和尚さんは、代官の屋敷を目指して歩き出した。

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