第46話 予定変更
庄屋さんが村人達と出ていってしばらくすると、天井から吾作が戻ってきた。
「ど、ど、ど、どえらい事になったに! 与平。どうする?」
「ほだなあ。ほいでもこのまま事をやらんのも庄屋さんに悪いで。ほいだもんで吾作、おまえは予定通り、隣村の庄屋さんトコ行って、『おのーれ、おのーれ』やって来りん。わしは何かあったらいかんもんで和尚さんを呼んでくる。ほんで、またここに集合して、三人で代官のトコに行こまい。ちょっとみんながどこ行ったか気がかりだが……」
与平は考えながら言った。すると吾作が、
「ほ、ほだな。そうするかん。ほいでもみんなの居場所がわしも気になるで、今すぐ与平は後付けて場所の確認して来ていいに。わしは代官の居場所は分からんけど、和尚さんに聞けば分かるだら? ほんでよくない?」
と、提案をした。
(吾作がこんなちゃんとした意見を言える様になるなんて……)
与平は化け物になったからなのかは分からなかったが、とても感心した。
「ほだな。ほいじゃわしはさっそく後をつけるで。吾作も隣村の庄屋のトコへ行きん。ほいで和尚さんを呼んで、とりあえず、まあ代官の屋敷で落ち合おまい」
そんな訳で、お互い庄屋さんの屋敷から走って行った。
吾作は隣村の庄屋さんの屋敷の近くまでやって来ると、木の影から屋敷の様子を伺った。まだそこまで夜はふけていないのだが、もう屋敷は真っ暗だった。
(あれ? もう寝たのかな?)
吾作は、とりあえず煙になって屋敷の中へ入っていった。
すると屋敷の使用人らしき人がすでに横になって休んでいるのは見つけたが、肝心の隣村の庄屋さんがいない。
(お、おらん……どっかに出かけた?)
まさか留守になっているとは思っていなかった吾作は、どうしたらいいのか悩んでしまった。
(ん~……いっそ使用人さんに聞いてみる?)
そう思った吾作は、使用人の寝ている部屋へ行った。使用人はぐっすり寝ている。吾作は使用人の布団の枕元にちょこんと正座をすると、
「あ、あの、お尋ねしたいんですけど、し、庄屋さんはどこかへお出かけになられましたか?」
寝ている使用人の耳元で囁いた。するとぐっすり寝ていた使用人は、ビックリして目を覚ました。
「だ! だれ? ど、どうして? え?」
使用人は完全に混乱状態。
「あ! ごめんなさいっっ。驚かすつもりはなかったんですっっ。あ、あの、庄屋さんに用があって来ただけなんですよお」
「あ、はあ? 庄屋さんならお代官様のトコへ出かけていったわ! あ、あんたこんな部屋に、む、無断で入ってきてっっ! どういうつもり?」
使用人はいきなり枕元に来た訪問者にさすがに怒ってきた。しかししっかり場所を教えてくれたので、
「ご、ごめんなさいっっ。お代官様のトコへ行ったんですねっ。夜分にすいませんでしたっっ」
吾作は丁寧にお礼と謝罪をすると、そのまま煙になってその部屋から出て行き、コウモリに変身して自分の村の庄屋さんの屋敷へ一目散に帰った。
一人暗闇の部屋に残された使用人は、戸も開いていないのに、急に人の気配がなくなったのを察するとあまりの恐怖に声も出なくなった。
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