第40話 勇気の一歩
友達なのだからハグもキスもするし、パンティーチェックもする。
言われた言葉を頭の中で反芻するジャンヌだが、やはりどう考えてもおかしかった。
「そんなわけないでしょう! こ、こんなの、男女の友情でやるなど聞いたことがないわ!」
顔を赤くしながらも怒鳴るジャンヌ。
しかし、フォルトは……
「ええ、ですからシィーさんの住んでいたところでの独特の文化なのですわ~」
「文化……ですって?」
「そう、私たちとは違う文化……文化の違いですわ~」
文化の違い。そう言われても、それで納得できるはずがない。
しかし、こんな淫らな行為にふけっていても、シィーリアスの目は真っすぐ純粋で……
「うむ、フォルトとクルセイナは文化の違いを受け入れてくれるどころか、積極的にスキンシップしてくれる……だけれど、僕の認識している文化や常識が、帝国では当たり前のことではないということも僕は認識している。だから、別にジャンヌも無理しなくて良いのだ」
「え、あ、……シィーリアスくん」
「たとえスキンシップしなくても僕たちの友情に変わりも差もないさ!」
揺ぎ無くそう告げるシィーリアスにジャンヌは混乱した。
(え? な、何なのこの状況は? ま、まるで私が文化の違いも受け入れられない心の狭い女みたいじゃない!? え? 私が間違っているの? いや、おかしいでしょ! ハグならまだ分かるわ……キスも、まぁ、頬やオデコとか、本当に親しければ……なくはないかもしれない……でも、パンティーチェックは絶対に違うでしょ! どんな国のどんな人たちの文化よ!? でも、シィーリアスくんの目や表情からも、嘘ついてエッチなことをしたいとかそういう感じでもなさそうだし……)
こんなのは絶対におかしいと、改めて考えるジャンヌ。
だが、そんなジャンヌにフォルトは挑発的な勝ち誇った笑みを浮かべ……
「ええ、そうですわ~、ジャンヌさん。これはあくまで、ワタクシたちが好きでやっていることですので、ジャンヌさんが無理してやる必要はまったくありませんわ~♪ だって、こんなことしなくても、優しいシィーさんは分け隔てないのですから、ワタクシたちは差のない友達ですわ~」
「ぐっ……うっ!」
「あん♪ シィーさん、チュッ♥ チュッ♥ さ~て、そろそろ……ブラのチェックもしていただきますわ~♥」
「ッ!!??」
こんなことをしなくても、友達としての差はない……そんなわけがないと、ジャンヌは焦った。
(これだけのことをしている女の子と、していない女の子を、男の子が差を付けないはずがないわ! むしろ、もう差がついているわ! 圧倒的に……フォルトが余裕たっぷりだったのは、コレだったのね!)
キスしてハグして日常的に下着を見せてくれる女の子と、ただのクラスメート。
どちらが仲良く見えるかなど、一目瞭然である。
(まずいわ……既にシィーリアスくんはこの二人に……それどころか、もうこのままいつ……いつ、セッ●ス始めてもおかしくないぐらいの仲じゃない! シィーリアスくんを権力者側に引き込まれてしまえば……)
フォルトたちに独占されないようにと、自分もシィーリアスと友になって良い関係にと思っていた。
フォルトとクルセイナとシィーリアスが出会ったのは入学式の日とまだ数日前のため、大してそこに差はないと思っていたが、それは大きな間違いであった。
そして、もしここでジャンヌが引き下がってしまうようなものならば、その差はもはや明確に、決して埋められない差となってしまうのだ。
そのためにどうすれば……?
(落ち着きなさい、私……ここで引き下がるのはよくないわ。それに、元々彼とはこの身体を使ってヴァージンをあげてでも親密にと思っていたじゃない……ハグやキス、パンティーが何だというの? むしろ、まだこの二人はセ●クスしていないなら、むしろまだ間に合うぐらいじゃない! そうよ、ここで引くのではなく、私も彼の文化であるこのスキンシップを受け入れて……彼女たちよりも早く●ックスしてしまえば……)
混乱状態でメチャクチャな作戦に舵を切るジャンヌ。
そして、ジャンヌは……
「だ、誰が……受け入れないと言ったの? 私は君と……ぶ、文化の違いも超えた真の友になりたいと思っているのよ?」
「「え?」」
決意したジャンヌは制服の上着を脱ぎ捨て、シャツのボタンを外し、その上で自分のスカートの裾を持ち上げる。
(は、恥ずかしいわ……だけど、これも……真に平等の世界を手に入れるため!)
上下お揃いの魅惑の紫のレースの下着を見せつける。
「……ちっ」
フォルトは誰にも聞こえないぐらい小さく舌打ち。
一方でシィーリアスは目を輝かせ……
「ジャンヌ、き、君は……」
「こ、これが私のブラとパンティーよ。わ、私も色々な種類を持っているから……こ、これから毎日チェックしてもらうから、そのつもりでいなさいよ!」
「ジャンヌ……うむ! うむ!」
温かく優しい笑みを浮かべて、ジャンヌの友情を噛みしめた。
「うむ、真面目そうな君でありながら、いやらしさを感じさせるパープルの下着……大人っぽさも感じる素敵なパンティーだ、ありがとう」
「ど、どういたしまして……」
女性の下着を見たら褒めて御礼を言うのがマナー。
シィーリアスの言葉に照れながらも、そこでジャンヌは止まらない。
「さ、さて、シィーリアスくん……わ、私たちの友情のスキンシップは……」
「ん?」
「まだ、お、終わらないのよ!」
勇気をもって一気に踏み出すジャンヌ。
ベッドの上で座るシィーリアスに飛びついて、ジャンヌは己の唇をシィーリアスの「唇」に重ねた。
「「ッッ!!??」」
頬でも額でもなく、唇にキスをした。
「ちょ、ワタクシのシィーさんに何をしていますの!」
「あら、こういうのは早い者勝ちではなくって?」
「ムキー! 許しませんわ、そっちが唇なら、こっちは舌を―――」
「そっちが舌なら、こっちは下を―――」
その瞬間、乙女たちの戦争がはじまり……
「むむむ? 二人とも、少し落ち着いてほしい。これはアレだろうか? スキンシップの最終到達地点、エッチを僕としようと――――」
シィーリアスはそれでも冷静にズレ……
「ちゅぱちゅぱ、やはりシィー殿の足、おいひい♥」
クルセイナは足をしゃぶったままだった。
そして――――
チュンチュン♪
朝を迎える。
――あとがき――
セーフ!
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