第20話 小テスト
「では、今日より魔法算術の授業を始めるのだが……まずは簡単な小テストをさせてもらう」
午後の座学の授業で、担当科目の講師がそう告げて、生徒たちはザワついた。
「君たちの基本的な学力は入試などで把握している……と、言いたいが、推薦組がいたり、何よりも入試の試験問題はある程度の傾向と対策によって出来てしまうこともあるため、それよりも更に進んだ範囲でのテストとなる。もちろん、今の君たちには難しいかもしれないが、それでも式や理論を把握していれば解けるようにできている」
最初の授業でいきなりテスト。
さらに……
「そして、採点後。テストの返却時に……各自の点数を読み上げる!」
「「「「「うぇええええ!!??」」」」」
生徒たちの顔が「うわ~」っと曇る。
だが、これこそが大陸屈指の名門にして競争の激しい帝国魔法学園なのでる。
入学だけで狭き門。突破しても学園の中でまた競争。
ついてこれない者は脱落していくのである。
「あらあら、酷なことをしますわねぇ~」
「なるほど。恥を晒したくなければ良い点を取れと……」
当然、中には抜き打ちのテストだろうと一切問題ない学力に自信のある優等生たちも多い、
そんな中で……
「ふむ……ペーパーテストか……」
シィーリアスが神妙に呟いた。
「そういえば、シィーさんは推薦なんですよね? お勉強の方はどうですの?」
ちょっと心配になって尋ねるフォルト。
その言葉にクラス中が耳を「ピクン」と反応させて聞き耳立てた。
シィーリアスは強いが、午前の授業の例もあり、座学の方はどうなのかと。
「むっ? それはむしろ魔法より不安はない」
「あらぁ~~♥ さっすが、ワタクシのシィーさんですわ~♥」
そう、シィーリアスは勉強に関しても、ミリアムとオルガスから教わっていた。『ミリアム』と『オルガス』の二人『だけ』から教わっていた。
「でしたら、何か気になることがありまして?」
「ん? いや、実は僕は勉強したり、出された問題を解いたりしたことはあるのだが、ペーパーテストというものを受けたことが無いのだ。ゆえに少し気になったのだ」
「え!? ペーパーテストを受けたことがない?」
「「「「「ッッ!!!??? (え? どういう生活してたの!?)」」」」」
今までで一度もペーパーテストを受けたことが無いと告げるシィーリアスに、クラスメートも講師もギョッとした。
そんな者がいるのかと。
「あ~……そこ、私語はそこまでに。とにかく問題を配る。(おいおい、マジかこいつ。いや、それでもAランクのカイを倒したって話だし、真面目で賢そうだし……とりあえず様子見か?)」
驚きながらも講師も慌ててテスト問題を配っていく。
生徒たちも動揺しながらも問題用紙を回していき……
「ふっ、なーに、いかに初めてとはいえ、ペーパーテスト等、所詮は紙の上での問題! そんなものに躓くわけにもいくまい! 一ひねりにしてくれる!」
「あ~ら~ん、さ~すが、ワタクシのシィーさんですわ~~~ん♥」
と、シィーリアスが気合を入れていたころ……
勇者フリードの一味たちはまたアジトで遠くの地に居るシィーリアスのことを話していた。
「シィーリアスが魔法なしでもSランク級の強さってことは、模擬戦とかは何も問題なしどころか相手が可哀そうだな……。だが、魔法自体がFランクである以上、実技試験とかは苦労しそうだな……」
「まったくだ。魔法学園で魔力を最低限に抑えるなど酷だ……まぁ、とは言ってもあの学園はたしか、模擬戦、魔法実技、座学、あとは学外実習などがあるので、必ずしも魔法の実技だけが全てではない。他でカバーできれば……」
「ああ。となると、学外実習とかは別にして座学……そーいや、俺はあいつの勉強に関しては分からねーんだけど、ラコンは知ってるか?」
「いや。勉強に関してはミリアムとオルガスが一任していたからな……」
戦闘能力は申し分なし。というか、油断したら自分たちだって危ない。
だからこそ、魔法の成績が望めないシィーリアスをカバーするためには、当然座学の成績が一定以上が必要であった。
「「ビクッ!?」」
だが……
「お、おい、ミリアム? オルガス? ……」
「「…………」」
「おい!」
「「…………」」
二人はタラリと一筋の汗をかきながら、視線を逸らしてソッポ向いた。
「おい、お前ら! 部屋で勉強は自分たちが教えるって言ってたよな!? どうなんだよ!」
「う、騒ぐでない、バカフリード。わらわはちゃんと勉強をいっぱい教えてヤッ……ヤッタけども……」
「そ、そうだよ……う、うふふふ、ちゃ、ちゃんと、シィーくんには……『お勉強』をいっぱい教えた……よ?」
明らかに動揺している二人。
その様子にフリードとラコンは目を細める。
すると……
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