第24話 地雷系・生徒会長出現
昼休みになって早々、遥は俺の腕を引っ張ってきた。廊下へ連れ出され、俺は少し困惑する。今まで遥の方からこんな風に
「ど、どうしたんだよ急に」
「なにか起きる前に屋上へ行くの」
「えっ、なにかって何も起きやしないだろう」
「起こってるから、こうして引っ張ってるの。もう、遙くんってトラブルに巻き込まれやすい体質ぽいからさ、わたしが守護しないとダメって分かった」
どんどん引っ張られ、階段を上がっていく。屋上へ到着し、誰もいないことを確認。季節は七月前半。暑いので誰も来たがらない。
「外、暑そうだな」
「この出入口のところは風が通って涼しいよ」
「じゃあ、ここに座るか」
屋上出入口付近に腰掛けた。
遥は俺の隣に――って、座らないのか。そう目の前でスカートをひらひらされると、どこを見ればいいのか困るのだが。
「ん、どうしたの遙くん」
「遥、なんで座らないんだ。俺にフトモモを見せつけて興奮させる実験か何かか?」
「へ? あぁ、ごめん。今、これを取り出していたから」
ようやく座る遥は、焼きそばパンを取り出した。ポケットに忍ばせていたのか。いったい、いつ買ったんだか。
更に、お茶のペットボトルも一本。
「えっと、これって」
「うん、お昼。ごめんね、作っている暇がなくて」
「マジか。まさか、これを半分こ?」
うん、と頷く遥さん。
焼きそばパンの包を丁寧に開け、俺に食わせようと“あ~ん”をしてきた。
「はい、食べて」
「えっ、食べさせてくれるの? 遥の分は?」
「わたしも半分もらう。まずは、遙くんが食べて」
そういうことか。つまり、この焼きそばパンを食べさせ合いっ子すると。ついでに、キンキンに冷えたお茶も飲み回すということらしい。
それって、間接キスにもなるな。
「じゃ、じゃあ……いただく。あ~ん、っと」
もぐっと焼きそばパンを一口いただく。……んまっ! 濃厚なソースが絡みついて、舌の上で踊っている。これは学校でしか売っていない“限定やきそばパン”じゃないか。争奪戦がとても激しくて、入手困難なのに凄いな。
「美味しい?」
「ああ、美味しい。遥、よく購買部で購入できたな」
「譲ってもらったんだ~」
「え?」
「男子に売ってくれないってお願いしたら、なんか譲ってくれた」
そりゃ、遥からお願いされたら、男なら嬉しいわな。俺ってだってタダでやる。
「そうか。それじゃ、今度は俺の番だな。はい、あ~ん」
「……そ、その」
遥は、なぜか“ぼんっ”と弾けるように顔を赤くする。いやいや、先に俺に“あ~ん”しておいて、恥ずかしがるなよ。
俺だって滅茶苦茶恥ずかしかった。でも、それ以上に幸せを感じた。この幸せを遥にも感じて欲しい。俺は、焼きそばパンを遥の口元へ運ぶ。
「さあ、食え」
「……うん」
あ~んと口を開ける遥。俺は、ゆっくりと食べさせた。もぐもぐと幸せそうに焼きそばパンを噛みしめる遥を見て、俺も幸せになった。
「うまいか?」
「おいしい……すっごく、おいしい! この学校の焼きそばパンって、こんなに美味しいんだ。そりゃ、あんな人が群れるわけだね」
遥は、今度はお茶の蓋を開けた。
口をつけ、ごくごくと飲んで喉を潤す。それを見ていると、遥が気づいてペットボトルを渡してきた。
「の、飲みかけじゃん」
「夫婦なんだし、気にしなくていいじゃん」
「それも……そっか」
ほんの数秒前まで遥が口にしていたペットボトル。この前、ファーストキスを交わしたとはいえ――まだまだ慣れない。間接キスであろうとも、俺にとってはエレベスト並みにレベルが高い。
震える手でペットボトルを口元へつけていく。そして、冷たいお茶を飲み干していく。ごくごくと。……美味い。激ウマすぎる。
「遙くんのえっち~」
「う、美味かった」
「えへへ、そっかそっか。遙くん、食べ終わったし、お昼休みが終わるまでまだ時間あるしさ、ぎゅ~ってしない?」
ニヤニヤ笑う遥は、俺の
「遥、ここでイチャイチャする気か?」
「いいでしょ。今日はずっと邪魔されてばかりだもん」
ムチッとした胸と
対面して抱き合う形となり、俺は遥の胸に顔を埋めた。
「うわぁ、遥のここ最高」
「好き、大好きだよ、遙くん」
「俺もだよ、遥」
残りの時間をイチャイチャしまくった。
* * *
あれから、退屈な授業を受けて――放課後。帰る準備をしていると、教室の扉がピシャっと開いた。
気の強そうな女子がこちらを見ていた。腰まで伸びる赤毛。黒のピアスにネイル。……校則違反すぎる気がするが、そこはいいや。
その子は、こちらにズカズカやって来て俺の名を口にした。
「天満 遙くんね」
「え……俺だけど」
「私は、生徒会長の『
「あー、うん。って、生徒会長!? 君が?」
「なに、悪い?」
「いや、悪くはないけど……うわッ!!」
ヒカリは、顔ずいっと近づけてキス出来る寸前の距離で
「天満くん、私はあなたが気に入ったの。可愛がってあるから、私の“ペット”になりなさい。いいわね」
「は? はああああああ!?」
この生徒会長、突然なにを言い出すんだ。
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