第19話 大人の階段

 なんてハプニングだ。

 まさか、両親がラブホテルを利用中だったとは。てか、なんてタイミングで遭遇するんだか。


 複雑な感情が入り混じって、頭がどうかなりそうだった。


「なんてこった……」

「いいから帰れ。また誰かに見られたりしたら大変な事件になるだろう」

「冷静になってみればリスクが高いな。分かった、素直に買い物して帰るよ」

「じゃあな」


 親父は、母さんを連れて駐車場の方角へ行ってしまった。……あぁ、頭が痛い。親父と母さんがラブラブなのは知っていたけど、ここまでとは。


「よ、遙くん……わたし、わたし……あぁっ」


 俺の両親に知られたことが、死ぬほど恥ずかしかったらしい。遥は、全身を爆発させそうな勢いで沸騰させていた。俺も実の両親に目撃されるとかヤバイっていうか……死にたい気分だ。



 ラブホテルを離れ、モンキーホーテへ。本来の買い物という目的を達成させた。しかし、遥とは少し気まずい雰囲気になってしまった。目を合わせられない。……困ったぞ。



 マンションへ着き、エレベーターの中でも沈黙が続いた。どうしよう。何を話したらいい? 今日は『えっちできなくてゴメン?』とか。いや、それはデリカシーなさすぎだ。


 なら、なら……う~ん。


 気づけば玄関の前まで来ていた。


「あれ、なんか荷物が置いてあるな」

「通販サイトのアマズンで注文したヤツかな。でも、覚えがないんだよね」


 玄関前には封筒タイプの荷物が置かれていた。なるほど、いわゆる『置き配』か。どうやら、ここまで配達してくれたようだな。


 遥は直ぐに開封。

 中から『0.01』という数字がデカデカ刻まれたものが出てきた。



「はあ!? 遥、お前、それ!!」

「きゃあああっ!! な、なにこれー!!」


「覚えがないのかよ?」

「ないよ。注文してないし! ていうか、遙くんじゃないの?」


 俺なわけ……あれ。

 住所はここなんだが、名前が俺宛てだった。む? これ、誰かから転送されてるな。えっと……『天満てんま 星一せいいち』――と。



「親父ぃいッ!!」



 そうか、これは親父の仕業だ!!

 あのクソ親父、わざわざ大人のゴムを送りつけやがって!! ブチギレた俺は、速攻でライン電話をした。


 すると、直ぐに繋がった。


『どうした、遙』

「どうしたもあるか! 親父、遥の家にヘンなもん送りつけるなよ!!」

『ん? ああ、これから新婚生活なんだから、必要だろ』

「バカヤロウ! 気が早いって。まだそういう段階ではないし」

『今日、ラブホテルに入ろうとしていたクセに?』


「……ぐ!!」



 クソ、何も言い返せねえ!!

 俺の敗北だ。

 よりによって鉢合わせたからな。

 最悪だぁぁあ!!


『まあ、時がきたら使えばいいだろ。捨てるのもモッタイないし』

「そういう問題か。もういい、切る」

『男の子なら名前はシン、女の子ならルナにするんだぞ』


「黙れ、クソ親父!!」



 ブチッと電話を切った。

 勝手に子供の名前まで決めてるんじゃねぇ~! てか、気が早すぎるってーの。まだ子供とか早すぎるし、それよりも大切なことが沢山ある。


「遥、今日は悪かった。親父もこんなもんを送ってきやがって……最低だよな」

「そ……そんなことないよ。だって、ホテルに誘ったのはわたしだもん。その、ね、ちょっと期待もしてたし……」


「え?」


「な、なんでもない!!」


 ん? 語尾の声が小さくてよく聞こえなかった。遥は、扉を開けて駆け足で行ってしまった。なんだ~? 何があった。



 * * *



 ――気づけば就寝時間を迎えていた。


 飯はカップラーメンだったし、風呂イベントも特になく。平凡な日常を終えようとしていた――はずだった。


 今日も一緒に寝ようという話になり、俺は遥の部屋に招かれた。


 寝間着姿の遥は、ちょっと……いや、中々エロい。ピンクのパジャマは、サイズがちょっと合っていないのか胸の強調が強かった。

 それと絶妙な透けブラと透けパンツ。恐らく黒かな? う~ん、距離があって分からない。


「? どうしたの、わたしのことジロジロ見て」

「いや、なんでもない。で、今日も一緒に寝るのか?」

「うん、だって夫婦なのに別々って変じゃない?」


「それもそうだ」


 納得すると遥は背を向けて、女の子座り。ゴソゴソと自分の荷物を物色。何をしているんだか。


 何かを取り出した遥は振りむいた。


「……えへへ」

「ちょ! 遥!!」


 遥は、0.01さんを口にくわえていた。というか、そんな誘い方どこで覚えた!? その奥義は卑怯すぎる。


 最終兵器に等しい。

 俺の敗北が今、この瞬間に決まった。



「……する?」



 頬を紅潮させ、そんな大胆に俺の劣情を煽るとか。あぁぁ……もう襲っちゃうしかないじゃん。


 理性を失った猛犬と化した俺は、遥をベッドへ押し倒した。



「もう、遥のせいだぞ」

「うん、いいよ。いっぱい愛して」



 もう後には引けない。

 俺は大人の階段を上る――。



***おねがい***

 続きが読みたいと思ったらでいいので『★×3』をしていただけると非常に助かります。

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