第18話 ラブホテルへ♡
遥の提案により、何でも売ってる『モンキーホーテ』へ買い物へ寄ることになった。あそこへ行くと、ついつい長時間滞在しちゃうんだよなあ。
さすがに徒歩では時間が掛かりすぎるので、電車を利用。相模原駅から橋本駅へ揺られていく。モンキーホーテ SING橋本駅前店へ向かった。
こうして二人きりでデートは初めてかも。
「異性と学校帰りにどこかへ寄っていくって、なんだか新鮮だな」
「そうだね。わたしも人生で初めて」
「マジか。遥ほど美人なら、誰か誘って来るんじゃないの?」
遥は、首を横に振った。
あの表情。どうやら、転々としていた時代にはそんな余裕はなかったみたいだな。
「わたしは、一年も掛からず転校していたから、告白されても全部断ってた」
「それ凄いな。付き合っている余裕もなかったわけだな」
「うん。でも、もうこれ以上は転校しない。だって、遙くんと結婚したからね。離れる気はない」
「でも、父親とか言ってこないか?」
「それが最近は、あんまり強く言ってこなくなった。多分、今まで散々転校させたことに引け目を感じているのかもね。というか、わたしがもう止めってて強く言ったんだけどね」
そうか、親との
でも、それでも遥は了承してくれた。
「ひとつ教えてくれ、遥」
「うん?」
「強制的な流れとはいえ、よく結婚してくれたな。どうしてなんだ?」
「そうだね。直ぐに転校したくなかったのもあるし……。わたし、あの『結婚しています!』にすっごくキュンときちゃったんだ」
胸を押さえ、顔を赤くする遥。
そんな乙女な仕草に俺もドキドキした。
そうか、あれで遥のハートを射止められたようだ。タイミングや運が良かったんだろうなと納得した。
橋本駅からモンキーホーテへ歩いて向かう。
もうすっかり夜だ。
俺の隣を歩く遥は、どこかぎこちない。どうしたんだろう、さっきから様子がおかしい。そわそわしているような。
――あれ、モンキーホーテの道をそれたような。
「おい、遥。どこへいく? あっちじゃないの?」
「ううん、こっち」
「こっち??」
こっちの道は人通りも少ない場所だったはず。大人向けの店が多かったような。なんで、そっちなんだか。
「こっちが近道なんだ」
「そ、そうか」
遥についていく。
そのまま歩いていくと、少し派手なお店が多くなった。学生が来るところではないような。居心地の悪さを感じていると、ある場所で遥の足が止まった。
「……」
え、ここ?
明らかにそこはモンキーホーテではなかった。道も場所も違うし、当然だ。というか、ここって、まさか――。
このお城のようなホテルって……。
「ラ、ラブホテル!?」
俺がそう言葉にすると、遥は
心の準備もまったく出来ていないんですがっ。
「だ、だめだった?」
「だめっていうか、遥って、意外と大胆だな」
「……うぅ。だ、だって、夫婦だし! それに、興味がないわけじゃないし。せっかく結婚したんだし、いいでしょ?」
そんな“お願い”だから、みたいな視線を送られると行くしかないじゃないか。ていうか、女の子からこんな風に誘われるとは思わなかった。俺は、買い物する気マンマンだったんだけどな。
「で、でもなー」
「遙くん、女の子に恥をかかせる気? 酷いよ……」
断れない――っと。
いや、俺も正直興味はある。
ラブホなんて入ったこともないし、どんな部屋なのか気になるな。でも、学生が入っていいのか?
「学生服でバレるだろう。追い出されるって」
「大丈夫。こんなこともあろうかと、遙くんとわたしの私服を持ってきておいたの! ほら」
鞄から服を取り出す遥。
用意周到だな、おい。
確かに、私服で堂々としていれば大学生に見られなくもないか。……いや、そういう問題なのか!?
でもまあ、俺と遥は結婚しているのだ。なんの問題もない。ていうか、別にホテルを利用する必要もない。住居のマンションで十分広いんだけど――きっと、遥は今の内に、こういう経験をしておきたいんだろうな。
せっかくの気持ちを
「分かった。入ろう」
「……遙くん、うん」
近くの駐車場で私服に着替えようとしたのだが、ホテルの中から見知った顔が現れ、俺は仰天した。
「ん? そこにいるのは遙と遥ちゃんか」
「お、親父!! 母さんまで!」
なんとラブホテルの中から、親父が母さんを連れ歩いて出てきた。まさかの遭遇に俺は頭が真っ白になった……。
てか、気まずすぎるだろ!!
「なんだ、遙もラブホか。だが、高校生が入ってはいかんぞ。遥ちゃんのマンションで我慢するんだ。帰れ帰れ」
そうは言うけれど、母さんが顔を真っ赤にして逃げ出しそうだぞ。あと隣の遥も真っ赤っかだ。俺も今すぐ逃げ出したい。
どうしてこうなった……!!
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