第8話思いを寄せる生徒

季節は5月になり、ゴールデンウィークだが部活はある。

ジャニーはバスケ部の顧問だから、額に汗を流しながら、指導している。

体育館にはバレー部もあるので、マドンナが顧問のバトミントン部は体育館の端のコート。

窓からは、トノ様率いる弓道部が見える。

よく、あんな的に矢が刺さるな~と、思ってみたり。

ヒロ坊は剣道部だから、武道館で指導している。隣には柔道部がある。

このくそ暑い日に指導しながら、汗を流さないのはトノ様だけだった。

トノ様も道着に着替えている。ちょっと、カッコいいな。


静と動の世界にいるんだな。

部活が終わり更衣室でマドンナは着替えていると、バトミントン部キャプテン原口が入ってきて、マドンナに手紙を渡した。原口は直ぐに着替えて、更衣室を走って出て行った。

マドンナは手紙を読んだ。

だんだん、血の気が引いていく。

【マドンナ先生の事、もっと知りたいです。今度の土曜日、刺し身食べませんか?一緒に】

「……な、ナゼ刺し身?」

マドンナは焦った。よし、今度はセンパイの言うこと聞こう。


職員室でマドンナはヒロ坊とトノ様に時間を作ってくれるようにお願いした。

「そんな話し、シラフじゃできないな~」

「じゃ、丸中寿司にする?」

「さすがヒロ坊。待ってた、それをずっと待ってた」

「オレ、君の為ならなんでもするよ!」

「あ、部長こんな所で……」

「なぁに、心配はいらない」

「部長、ステキ!」

マドンナは一連の茶番劇が終わると、切り出した。

「センパイ、真面目に聞いています~?」

「あ、分かった分かった。寿司屋で一杯引っかけてからな」

「宜しくお願いします」


夕方、5時。

3人は丸中寿司に入店した、

3人は飲む前に、原口が渡した手紙の内容を確認した。

「これは、単なる遊びの誘いか、LGBTの問題か分からんね」

「これは、ヒロ坊の言う通り。刺し身は諦めなさい。原口は実は前の女性顧問と同じような手紙を送って、その子、学校辞めちゃった」

「やはり、ジェンダー問題でしょうか?」

ヒロ坊とトノ様は首を縦に振った。


「さっ、みんな飲もうぜ。ここ赤星があるんだ。じっちゃん、敏ビール3本冷蔵庫から取るよ」

「すまないねー、先生」

マドンナが、

「トノ様先生、赤星ってなんですか?」

「サッポロラガーの事だよ」

「じっちゃん、後、上寿司3つね、茶碗蒸しも」

「あいよっ」


3人はビールの後、日本酒を飲んだ。

「悩み多き、マドンナよ!どうして、君には問題が襲いかかるのか?」

「センパイ、教えて下さいよ~」

「だから、要求は断われって言ってんじゃん、な!トノ様」

「ま、ヒロ坊、早めに救った方がいいぞ。僕たちにも期限がある」

「えっ?何の事です?」

「何でもないさ、タヌキと青シャツの陰謀だからな」

「あぁ」

「学校、辞めるんですか?」

マドンナは泣きそうな顔をしている。

「心配するな」

「まだ、僕らが負けるハズないんだ。マドンナ先生、君は酔っている。タクシーで帰りなさい」

と、言ってトノ様はマドンナに一万円渡した。

「オレら、もうしばらく飲んでから帰る」

マドンナはタクシーで帰って行った。


2人はいつものバー「OLDClock」に入り、カウンターで並んで座っている。いつものバーボンを下ろした。

「なあ、トノ様、もうあの学校に未練はねぇだろ?」

一口、あおり返事を待った。

「タヌキも青シャツも引きずり下ろそうぜ」

「マドンナ、1人で大丈夫かな?」

「だって、大人だもん。大丈夫だよ!」

「ま、年度末までの時間だな」

「オレ達が、学校の秘密を暴いてやる。福満書店との癒着を暴いてやる」

「そうだな。貴島先生ヨロシク」

神岡は敬礼した。貴島も敬礼した。

2人は3時まで飲んだ。

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