アイリスとロベリア
ルツ・ライアー
ニゲラ
「なんと言う事だ……」
王は産まれてまもない我が子を見て驚きを隠せなかった。
王に……彼に全くにていないのである。
「カミール皇帝陛下!!う、産まれてまもないものでございますので似てなくて当然……で、ござい……ます。」
勢いよく言ったものの徐々に縮こまる産婆。それもそのはず、誰が見ようが答えは変わらないだろう。
カミールと王妃の容姿はどちらも金色の髪であり瞳は燃え上がるような赤い瞳をしている。
それに対し王子は白銀の髪にエメラルド色の瞳、そして魔族の象徴ともされる角が生えていた。
「ただでさえ魔族が産まれて驚きだと言うのに……息子はカルミアにそっくりだな。」
カルミア―。彼はカミールがまだ勇者と名乗っていた頃に討ち倒された魔王の事である。
名前の通りカルミアは王を裏切った。
人間と魔族との関係は著しく悪く、その関係をどうにかしようとしたカミールの事を良く思わなかったカルミアは……カミールの故郷を焼け野原に変えた。
それを見たカミールは怒り狂い我を忘れてはカルミアを打ち倒したという。
「陛下……この様な事を言うのは失礼だと思うのでs…」
「私の妻がカルミアと不貞を犯したとでも言いたいのかね?」
言葉を被せそれ以上言わせはしなかったカミールも少しは頭によぎりはした。
2人の間から魔族が産まれることも、ましてやカルミアと似てる子が産まれるはずがない。
「確かに私達の間からこの子が産まれるはずがない……だがあの頃カルミアにも妻はいて子供を身篭っていた。あの男は自分の家族だけは大事に扱っていたんだ。そんな男が妻を裏切る様な事はしないはずだ。」
産婆はまだ言いたげな表情を見せたが、カミールはそれを許さずそのまま話を続けた。
「疑う気持ちもわかるが私は妻を信じている。自分の命をなげうって産んでくれた子供でもあるんだ。私は彼女の分もこの子を愛すと決めた!この意味は分かるな?分かったなら下がれ。」
産婆はビクりと肩を震わせては直ぐにその場を立ち去った。
カミールは産婆が立ち去ったのを確認してはドスッと重く椅子に腰掛ける。
これからどうして行くのか、民にどう伝えるべきかをカミールは我が子を見つめながら考え始めた……。
アイリスとロベリア ルツ・ライアー @rutsu07
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