第15話 公園散策
「今日何処に行くんだ?」
俺たちは電車で揺られている。そして、今回のデートプランを後輩に丸投げしていたことに今しがた気がついた。
「最初は公園で紅葉を見たいなと思っています。それからショッピングとご飯でどうですか? もちろん、お礼なので、ご飯は私がごちそうします!!」
後輩に奢られる先輩の図である。
「いいのか。さすがにそれは……」
「大丈夫だよ。わたし、こう見えても結構稼いでいますから!!」
たしかに、相手は登録者数30万人オーバーの超人気配信者。アルバイトで小遣いを稼いでいる自分とは年収差がすごいことになっているだろう。怖いから聞かないが……
「じゃあ、奢られようかな、後輩様に」
「はい、センパイ君は、大船に乗った気持ちで、たくさん食べてね」
もう、センパイの威厳とか完全にないな。まぁ、ほとんどなかったけどさ。
※
「着いた。やっぱり、お休みだから、人多いけど、紅葉綺麗だね、センパイ!!」
駅を右に出てから、高架下のトンネルを抜けて、5分歩くと目的の公園についた。都会のど真ん中にある公園だ。500円の入場料が必要だが、一歩足を踏み入れれば、そこは都会のオアシスのように美しい風景が広がっている。
美しく彩られたイチョウやモミジが「ぱぁ」っと広がり、来場者を出迎えてくれる。
「すごいな」
「センパイとここを舞台にした映画を見た時から、ずっと来てみたかったんだよね。あれは、夏だったけど、調べたら秋もきれいだって書いてあったんだ。今度は、梅雨の時期にも一緒に来てね」
「ああ、それも楽しそうだ」
一緒に見た映画は、アニメ映画だ。休職中の女性教師と教え子が、雨の時期にこの公園で偶然出会うところからはじまる。風景描写が鮮やかに描かれていて、ふたりで感動したことをおぼえている。
「あそこが、映画で二人が初めて会った場所だよ。ビール飲んでたところ!! ちなみに、公園内は飲酒禁止だからね」
「池の水が鏡みたいになっているな。日本式庭園ってこんなにきれいなんだ」
「うん!! やっぱり、二人で見た映画の聖地だから、センパイと一緒に来れて、本当に良かった。今度は映画の時期にも一緒に来てね!」
しずかは、とてもはしゃいでいた。来年もその先もずっと一緒にいることが当たり前になっていると気づくと、心がソワソワする。遠くに行ってしまったと思っていた彼女が、急に身近に感じられる。
「ああ、約束だな」
「うん、約束。破ったら絶対に許さないからね。あっ、次はイギリス庭園が見たいな!!」
俺の手を引いてルンルンにしずかは、いつになく魅力的に見えた。
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