第13話 後輩系Vチューバーのママ
「ふぅ、やっぱり配信者って大変だよな」
あんなに元気に振る舞っているみすずでも、落ち込むときは落ち込んでしまう。配信者は強いストレスにさらされる職業だとも聞いている。特に、業界の第一線で活躍している人はな。
普通の配信。裏でのイベント、グッズやコラボ、案件の準備。事務所やスタッフとの打ち合わせ。普通に激務だ。
「でも、すごいよな。後輩なのに随分と先に行っちゃった感が……」
俺も勉強とか頑張らないとなァ。
そう思いつつ、スマホが止まらない。つぶやきったーを開いて、同志たちが作り出すタイムラインを眺めていく。
『いや、今日のポンもおもしろかったわ』
『空飛ぶマント40秒でロストって世界記録ですわ』
『やっぱり、みすずの配信は元気もらえるよな。仕事の失敗の落ち込みも吹き飛んだわ』
ハッシュタグを使って配信の感想を見るが、みんな笑っている。それがどうしようもなく楽しい。
『みんな、今日も面白かったね。うちの娘は、最高にポンカワイイっ!」
イラストレーターの神宮寺アヤナ先生だ。
イラスト投稿サイトでも登録者上位の神絵師で、イベントではシャッター前サークル。最近では、商業にも進出した新進気鋭の絵師さんだ。Vチューバーの配信を見るのが趣味らしく、よく娘の配信にも遊びに来ている。
『今日は、篠宮あゆみ先生の画集を読んでいたんだけど、エッチな感じでいいよね。私も、みすずの水着とか書きたくなっちゃうなぁ。もう、秋だけどさ』
※
『娘の水着姿を嬉々として描く母。けしからん、もっとくれ』
『季節外れの水着? 良いではないか、良いではないか』
『血のつながりはないはずだが、この母からあのASMRの精密機械である娘が生まれたのはわかる』
※
リプ欄は紳士たちの社交場のように盛り上がっていく。
『みんな人聞きが悪いことを言わないでよォ。娘を売ってません。みすずが、そう望んでいるんです。みすずは、変に奥ゆかしいからね、私が察してあげてるの。やっぱり清楚系後輩の水着は白? それともさっぱりと青かな? いや、あえて大胆に背伸びして赤ビキニ? うはー 夢が広がりんぐ』
うん、公式が病気。「などと供述しており」というナレーションがつけば、全国ニュースの出来上がりだ。ちなみに、俺はあえての黒を見てみたい気がする。
だが、この人はやると決めたら、即座に行動に移す神。
数日中に、公式ファンアートを見ることができるだろう。楽しみだ。俺はみすずのおかげで一日が楽しいものに変わっていくのを実感しながら、ゆっくりと目を閉じていく。
推し活ができれば、どんな日だって最高の日に変わってしまう。
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