第一話 異能力って現代日本だと中学二年生扱いされるよね
異世界転移は意外とある。
この事実は全ての生徒は及び先生に
つまり、自分達以外にも異世界から来た人がいるという事だ。
だが、続く天多の言葉に希望は打ち砕かれた。
「確かに居たよ。ただし、約二百年前になるけどね」
二百年、二世紀だ。だがこの二世紀の差は、昴達には想像も出来ない。
しかし、それから言える事はこの世界に異世界転移した人間は自分達しか居ないという事だ。孤立無縁とは正にこの事かと昴は考えでいた。
しかし、天多の言葉には続きがあった。
「ほとんどが死んだってだけで全員ではないよ。何人かはまだ生きてるよ。何故生きてるのかについては追々説明するよ」
下げてから上げる。詐欺師の
昴もその一人だ。
「えっと、今からこの世界について説明して行くから、よく聞いて」
天多の話は世界についてざっくりとした情報だった。
「まずこの世界は、君達からしたらかなり特殊な世界だよ。でも、君たちの世界とあまり変わらないんだ。たとえ異能が有ったとしてもね」
異能、超能力などの事だろうと、昴は予想する。
「まぁ、一口に異能と言っても大まかに別けると二種類になる。一つは、誰もが必ず一つは持っている超能力の様な者。そして、魔法・魔術と呼ばれるものだよ」
『超能力』と『魔法・魔術』何が違うのか昴には、分からなかった。ただ、これはこの場に居る異世界転移者全員に言える事で、クラスのラノベ好きの人ですら首を傾げていた。
「ざっくり言うと、超能力が先天的な才能で魔法・魔術が後天的な技能とでも言っておくよ。それに、使う方法も違ってくる、この場合の使う方法はあくまでも発動の方法だからね。弱そうだからと舐めてかかるとこの世界では生きていけないよ」
昴達はなんとなくわかった様な気になったが、これから自分達で生きていくためにもまだ情報が足りないと思っていた。
「この世界について語るためには、まずこの国について語らないとね。この国の名前は『
昴はこの国の構造と今いる場所、そして異能について聞いたが新たな疑問が湧いていた。
それは何故この国の人たちは自分達が来る事を知っていたのか?である。
だがそれは、予知関連の能力者が居ると言われればそれまでだ。だからこそ確信が持てるまではこの疑問は自分の中にしまっておこうと誓った。
この国、東陣連合はどの様な国なのか、他国との関連性なども考慮すると、まだ安心できない。
情報が足りない。昴の頭の中は情報を得る事でいっぱいいっぱいであった。隣で心配そうな顔をする茜に気がつかないくらいに。
「この国だけど、能力研究が盛んだね。新しい魔法・魔術が開発されたりしているよ。だからこそ、この国は武力国家だ。食料に関しては他国の輸入に頼っているのが現状さ。だからこそ、他国はこの国に侵略行為は出来ないし、この国も戦争なんて起こさないんだよ」
もしもこの国が戦争を起こしたら他国からの食料の輸入が出来なくなり国民は飢え死に、他国からの侵略は能力研究が盛んの特色を生かし迎撃。理に適っていると言えばその通りの相互依存の関係だ。
天多の説明はさっきからどうも奇妙だ。昴が疑問を思い浮かべるとまるで心を読んでいるかの様に説明してくる。偶然にしては出来過ぎていると、誰もが思うだろう。だがそれは、あくまでも考えている昴の立場に立っている場合の話だ。そうでなければ自意識過剰なだけになってしまう。
「さて、事前説明の大半は、後は能力関連だから良いとして、君達のこれからについて言おうか」
自分達のこれから。事前情報の不足により決める事も考える事すらできなかった問題だ。
昴はもしかしたら消されるかもしれないと思い警戒をさらに高くする。
「君達には一週間程この世界の異能について学んでもらって、それからこの第七区の中高一貫校に通ってもらうことになるね」
学校。殆どの生徒が騒ついた。それはそうだ。まさか異世界に来てまで学校に通うことになるとは思うまい。
しかし、昴は何となく理解していた。この学校に通うと言う事は生徒になる事。
つまり
「君達はこの世界の身分証なんて持ってないでしょ?学校の生徒になるって言うのはちょうど良い身分なんだよね。特に学割制度はかなり重要案件だよ。そして、学校で多少この世界について知り、慣れていくと良いからね」
正しくその通りなのだが、昴は何か物足りなさを感じていた。昴は隣にいる茜の耳元に顔を近づけて小声で話しかけた。
「茜、俺は何か説明が足りないと思うんだ。それが分からなくて、何だと思う?」
突然の昴の行動に茜の顔が赤くならながらも律儀に答える。
「ごめんね。わ、私、には、分から、なくてでも、不安、なんだよ、ね、私。多分、これ、から行くこと、になる、学校が、どんな、所か、分からないから」
昴は茜の言葉を聞くとすぐさま自身の説明の足りなさを理解した。
何故気が付かなかったのだろう。天多は言っていたではないか、『この国は十七の区間に分かれている、そして、それぞれに特色がある』と。
地区の特色は学校の特色も含まれるのではないか?
ならば、この第七区は何を特色にしているんだ?
異能力がある世界だ。この世界の学校をこちらの世界の常識で測ると痛い目を見るだろう。
昴は手を上げて質問をする。
「あのっ!この第七区の特色って何ですか?」
昴の突然の質問に皆んなが昴の方を向く。龍弥や舞、発音も例外では無かった。
だが、天多とティアは感心した様な目を向けて、
「良い質問だね。これに気付いたのは、その隣にいる娘のお陰かな?」
天多が茶化す様に言う。まるでその質問を待っていたかの様に。
「さて、改めて聞くけど、その質問の意図は何だい?」
昴は理解した。天多は分からないから聞いているのではない、周りにも分からせるために聞いたのだと。ならば聞かせるしかない、教えるしかない、自分達が何も知らない世界にいると言うのはどう言うことなのかを、最高神により強力な異能を与えられたとしても、今のままの自分達には何も出来ない。操り人形として誰かの掌の上で踊ることになるのだと。
それだけは何としても阻止しなくてはならない。
「特色が分からなければ、自分達の力を活かせません。そもそも、なぜ第七区の中高一貫校何ですか?受け入れ先がそこしかなかったのですか?そうやって考えると、異能力を用いた犯罪は誰が対処するんですか?それに、僕達は戦闘に関しては素人です。だからこそ、この世界で生き延びるためにも自分達が通う学校については吟味したいです。何があるか分からないからこそ」
昴の答えを聞くと天多とティアは微笑を浮かべ、他の生徒達は理解した者とそうでないものに別れた。
天多は全員に説明するために口を開く。
「この第七区の特色は、主に対異能力者特化の人材を育てる事だよ。因みに第七区の中高一貫校にするのには明確な理由がいくつかある。一つが、この大使館から近い事。君たちに何かがあったら直ぐに対処できる様にするためさ。何かしでかしたら、とも言えるけど。二つ目が多種族が通っている事だ。君達は人間しか見たことが無いだろう?だからこそ、一刻も早くこの世界に馴染んでもらうためにも、多くの種族が通う第七区の中高一貫校は都合が良んだよ。三つ目が、君達の能力が暴走した時直ぐに対処する為だよ。君達は能力に関しては素人だ。だから、暴走するかもしれない。その時、誰も犠牲を出したくは無いでしょ?止められる人材、この場合は教師だね、がいたほうがいいでしょ」
天多の説明で大体の生徒が納得していた。昴もまた、納得した生徒の一人だった。
「ここからは、皆んなお待ちかね、自分の能力を調べていこうか」
その言葉を聞いた瞬間、生徒(大半の男子)が目を輝かせ、耳を傾けた。
「と言っても、特別な事はしないよ。ただ単に自分の内側にある力の集まりを感じれば良い。例えば、血液が必ず集まる心臓なんかをイメージすると良いよ。そうすると何か異物があるはずだから、それに触れるイメージをするといい。そうしたら、自然と頭の中に自分のできることが浮かんでくるから」
昴は言われた通りに想像する。自身の体中を流れる血液。血液の集まる心臓。そこには何かがあった。まるで心臓にまた張り付いているような球体、そんな感覚がした。球体に触れてみる。すると、昴の頭の中に自分ができることが浮かんできた。
どうやら、他の生徒も試したのだろう。驚いた様な声が所々から聞こえてくる。
「能力に名前をつけてもいいよ。と言うか、殆どの男子が自分の能力に名前をつけるのはある意味、風物詩だから。使うときに便利だったりするからね、それに関しては追々話すとして、能力に関しての自己申告は今はしなくてもいいよ。学校に行ったら測定とかあるから、そこで、君たちに合った戦い方が学べるよ」
どうやら殆どの生徒は強い能力を得たのだろう。
だが昴はこの能力はハズレだと思った。
「ところで打って変わってこの国特有の雑学になるけど、生徒を教え導く先生の中でどの順位で強いと思う?」
天多の問題は意味不明。だが、何かしらの意図があるのではと考える者もこの場には居た。
「正解は、保育士や保母さん、次に小学校の先生、専門学校の教師、そして、高校、中学の順だよ」
確かに以外ではある。それが意味する事は何か、分からなかった。
確かに雑学である。このままで終わったのなら。
「説明すると、一般的に能力を自覚するのって小学校に上がる少し前くらいなんだよね。幼稚園児なんだから能力によっては、暴走し続けると死んでしまうかもしれない。だからこそ、暴走しても直ぐに対処できる強さと柔軟性が必要なんだよ。小学校の先生も同じく小学生は能力の扱いは拙い子が多いからね。後は想像通り。ただ、専門学校と高校の教師の間にはかなりの差があると言われているよ。この間に『警察』や『キーパー』の大半が入るよ。因みに、これから君達に通ってもらう中高一貫校は専門学校だから、君達の能力が暴走しても直ぐに対処してくれるから安心してね」
昴は納得した。これは第七区の中高一貫校に登校する理由の三番目、直ぐに対処する為に当てはまるからだ。
雑学と言いつつも多少察しが良く不安になった人達を安心させるために話した事は明白だ。
この人達は自分達よりも遥かに歳上なのかもしれないと思いつつも、何処か慣れの様なものを天多達から感じていたら。
まるで、自分達の様な異世界転移した来た者を何度も対応してきたかの様な。
そして昴は自身の能力について考えた。この力で何が出来るのかを。
もし名付けるとするならば、昴はこれを
『
と呼ぶだろう。
昴はこの先の不安さから頭を抱えた。
一方天多達は能力を得て喜ぶ彼らを見ていた。
そんな中天多の頬が緩んでいるのが気になっていたティアは天多に小声で問いかける。
「楽しそうですね、天多君。面白そうな人でも見つけましたか?」
「うん、見つけたよ。さっき質問した彼、中々に面白い能力を得たようだね」
「本当にそれだけですか?」
「それと、彼と隣のあの娘かな」
「あぁ、なるほど、そう言う事でしたか」
「うん、あれだね、互いに鈍感過ぎて相思相愛なのに気が付いていないって感じだね」
「ラブコメ展開ですね。これは観察する必要がありますね」
「ティアはあれを近くで見れるんだよ。かなり役得だね」
「えぇ、楽しみです」
天多はさも今気が付いたという風に
「そうそう、第七区の中高一貫校と言えばアイツが居たね」
「彼ですか。彼なら真っ先に目をつけるでしょうね。彼ら、異世界からの来訪者を。面倒臭い事にならないと良いのですけど」
「それはフラグだよ、ティア」
何時かの天多の思った事を口にしたティアであった。
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あとがき
どうも皆さんこんにちは。灰色熊です。
やっと本編の記念すべき第一話です。
と言っても既に三話程投稿していますが。
今回の話は能力についてです。特に、先天的な才能とも言える超能力です。
天多の発言から、この世界には昴達以外にも異世界人がいた事を揶揄していますね。
他の種族、俗に言う、ケモミミやエルフなども登場予定です。と言うか、出てこないと異世界感が出ない!
次回は今話までの前日回、前日にあった出来事を書きます。
最後の彼は何者なのでしょうか?
お楽しみに!!
それではまた来週お会いしましょう。
応援してくださった方々、誠にありがとうございます。
これからも作者の趣味にお付き合いください
二人揃ってフラグを建てるカップル・・・羨まけしからん!
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