エンドレスプロローグ
丸井 ハル
4月
1
僕の人生とはとても平坦なもので、今までサスペンスな事件に巻き込まれたなんてこともなければ、宝くじがあたって頭上にお金が降ってきたことも無い。
おそらく初恋なんてものもまだ、なのだろうな。思い当たる節はない。
「平坦であり何もないことが何かあったことなんだ」なんて言われるのは腹が立つ。
「私だって日常に退屈して死にそう、非日常を味わいたい」なんてことを言ってるのにも腹が立つ。
死ねばいい。
あまりこんなことは言わない方が良いな、
総じて言ってしまえば、僕はもう10何年とこの人生を歩んできているのに、まだ「プロローグ」なのだ。
「まだ始まらない本編」
首を長くしすぎて「ろくろ首」になってしまいそうなのに、それでも神様、いや、ここは「滑瓢」とでも言っておくか。
そんな総大将ですら始めてくれなそうな物語はようやく始まりそうな気配がした。
2
自分で言うのもなんだが、「成績優秀」なんて物の括りに入っている。
僕に解けない問題があるとしたなら、問題文で出される「仮定」が少ないらしい。
僕自身、確かに他人よりテストの点数が良いことは認めるが、それは僕を「全知」として表現しているものでは無いもので、していることにやるせない気持ちがある。
だからといって他人から好かれているかと聞かれたら、そうでも無いと答えよう。
僕は受け身で生きていきたい。
現にそうしているから、人生が平坦なものに化けてしまうのだ。
インパクトの与えられなかった16年間。破れることのなかった「人生」という名の障子に振動が走る。
それが「思原響也」
このプロローグの「ヒロイン」というのか?
しかし、それは女の子ではない。「男」だ。
高2の4月。始業式の学校に足を運んでみる。1年の頃は休みがちだったのだ。休んだ次の日、来たら1人に孤立してしまうあの瞬間が嫌いだった。
僕のクラスは2組だ。
階段を重たい足で上がり、2階に到着する。
その瞬間、体が感じた、震えた、足というか、 体全体が重く感じた、そのオーラに。
目で見えるほどのものでは無い。しかし、視界を曇らせ、歪ませ、ふらつかせるものであった。
目で見えるというより「感じる」に近いのだろう。
その場で押し潰される、かのような重々しいものであった。
なんだこれは。
僕の今の顔はどうなっているだろうか。
苦しい顔をしていないだろうか。
何も無い日常に耐えるような苦しい顔を。
ちゃんと、笑えているだろうか。
そして教室にいる思原響也に向けて
ーおはよう
「こんにちは、今はお昼だ。」彼の口から発せられたそんな「意味不明」な言葉を僕は、解くことが、出来なかった。
仮定が少なかったからだろうか。
そしてこれも僕は、解くことが出来なかった。
昼になっていたのだ。
仮定はただ1つ。
「思原響也がそう発したから」
そしてこれに当てはまる公式を僕はまだ、知らない。
「気になるか?」
ーあぁ、とてもだ。
「オレらは普通に4限まで授業しているぜ?でもお前は昼に飛んできたそう思ってるんだろ?」
ーあぁ、そうだ、いかにも。
「じゃあ、なんでお前はこの誰もいなくなった教室を見ただけで昼だとわかった?」
ーあれ?
「それはな…」
この学校は弁当を自教室で食べる事は無い。衛生面でどうとか言ってのことだ。
しかし、ただ人がいなくなった事は=(イコール)昼になったことを表してはいない。
それは移動教室があるからだ。
単に体育とか芸術科目とかの話だ。
「お前がこの教室で4限分の授業をして、弁当の時間になったからだ。それを頭ではわかってなくても体ではわかっているのだ。」
そう言うと思原響也は笑った。誰もいない教室でただ僕を目の前にして。
こんな人間去年にはいなかった。
思原響也。彼は転校生などではない。じゃあ去年も同じクラスではないにせよ、いたはずだ。
この高校に1年の頃から。 つまり、初めから。
「けっひゃひゃひゃ、」
変わったとして有り得るのは「春休み」だ。
それからというもの、僕の頭から思原響也のことが、頭から離れなくなっていた。
去年は1年生の2組。名簿番号は14番。
1番から有栖(ありす)五百雀(いおじゃく)一色(いっしき)江波戸(えはと)彼方(おちかた)香椎(かしい)桐葉(きりは)久東(くとう)久留主(くるす)桂華(けいか)尺一(さかくに)向坂(さきさか)酒々井(しすい)そして、思原(しばら)
ちゃんといるな。何故だ?
ー思原、お前の事を聞かせてくれないか?昼間の口調だと僕の身に起こったことがわかってそうじゃないか!
僕はこの後何を言ったのだろうか、あの時は必死だった。ただ退屈からもう逃げたくて。だからこの世の言葉を総結集させてとにかく気を引くように話したのだろう。
記憶があるのはここからだ。
「はっ!そのセリフを言う人間を待っていた。この先お前の命の保証は負いかねねぇぜ?それでもいいのか?」
迷うことはなかった。
ーあぁ、構わない。この身がどうなろうと、やっとこの平凡から抜け出せるのなら、僕はこの人生を賭けよう。
3
放課後、僕は教室に残った。そして、思原響也は物語のセリフのような事を言うのだった。
「オレについて来い。そしたらオレのことを教えてやる」
僕は子供の頃に作った秘密基地のドキドキを思い出していた。あの純粋無垢な好奇心だ。
しかし、それは一瞬で崩されるのだった。
「ここだ」
ーここって、
そう、ここは体育館のステージ裏の倉庫だ。
ーいや、お前の正体の話はどうとして、何がしたいんだ?
「せっかちめ。そうだなぁ、お前は幽霊とか神様とかUFOとかそんな超常現象を信じるか?」
ーいや信じない。というか、確証がないから信じられないに近いかもな。
「つまんねーやつじゃん。」
ーつまんないやつですまなかったな。
「いや、いーんだけどさ。確証がないから夢見て、信じよーと思うんじゃね?」
ーだとしたら質問、おかしくないか?
我ながらなかなかの揚げ足をとってしまった。
「ハハッ。まぁいーや。ちなみにオレも信じない派。見たことないから。」
ーふーん。
「まぁその点、お前と理由は似たところか。」
こいつよく喋るな。少し検討と違うな。
ーしかし、何故お前は俺にそんな質問をしたんだ?
「勘が悪いなぁ。俺はそーゆーのを信じてみたいんだ。」
こいつは単純な馬鹿なんだろうか。僕の妄想が膨らみすぎてしまったのかもしれない。
「学校の七不思議についてどう思う?」
ーあんなの噂の独り歩きだろ?
「でも火のないところに煙は立たないって言うぜ?」
彼なりに「元になる物語がなければ噂も立たない」と言いたいのだろう。
ー結局はネッシーも流木なんだろ?
「確かにそれらはそうかもしんねーな。でもよぉ、本物がいたっておかしくねんじゃねーか?てゆーか、信じてみたくねーか?」
結局のところ、こいつの正体がイマイチよく分からねぇと話ができない。
正直、ネッシーとかの話(まぁ、ネッシーの話をあげたのは僕なのだけれど。)はどーでもいいから話してくれないだろうか。
「そーいえば、この学校にそんな噂あったっけ?」
ー知らねーよ。登校日数がギリギリの奴なんかに友達なんかいねーよ。そんなやつに噂なんか流れてこねーよ。てか、本当に独り歩き歩きなんかしていたら、誘拐するっていうの。
「んじゃ、まぁ、七不思議の噂をつくるか。」
ーお前が、噂をつくるのか?そこに煙があると嘘をつくのか?
例え話をするなんてのは自分には似合わないことであり、もう1人の自分がいたとしたならば、この姿を見て心の中で笑っているのだろう。
自分は好きだが、もう1人の自分は嫌いだ。
「そうだな、鏡だからやっぱり、神様にかけて…」
普通は朝に起こることなのだろう。しかし、今は16時44分。4時44分ではないのだから。
そして、大鏡の中に映る僕達は笑った。こんな退屈な日々に僕は笑うことがないはず、なのに。
何かがおかしい。
「えーと…」
思原響也は気づいていないのだろうか。
僕よ。今聞こう。逃げるか?
恐怖から七不思議と呼ばれる怪異だか、心霊だが、よく分からないがもし、上手く逃げれたとする。そうした時、思原響也と二人で生きていくとした時の方が僕にとってはこれ以上の恐怖だね。
ーだから、逃げろなどと言わねーよ。みてろよ。鏡の中の僕。
お前は僕を見て僕みたいにもう1人の僕が嫌いになるだろうよ。
僕等は、鏡の中に連れて行かれる。僕は逃げない。
だから、もっと、僕を不思議な世界へと連れて行ってはくれないか?
君を待っているんだ。
僕は君のように腕をしっかり握り返すよ。もう離さない。
おい、思原響也や、お前は今どんな顔をしている?笑っているか?それとも、恐怖に震えているかい?
4
入れ替わったのだろう。
飲み込みが早いのは常に、頭でイメトレをしていたからだ。妄想などと言ってしまえば聞こえが悪いものの、同じ意味の事実とし、その括りに入れられてしまうのだろう。
僕のこんな 憶測はさておいて、その先に行きついたのは左右反対の世界。
そして、僕達の立っていた大鏡は僕達を映すだけになっている。
「おー先客がいたのかよ…ハラたつなぁ、邪魔しやがって…」
僕としては嬉しいばかりだ
ーさぁ、どうするつもりだ?思原響也。
「ん?何、抜け出たいのか?そう言うならいいけど…」
ーいや、そういうのではなくてだな、これからのプランというか計画があるというなら聞きたいんだ。
「したいことがあるならしてやるけど?」
は?こいつ話 が噛み合わねぇ…
ーだからな、抜け出すにしろなにか順序があるだろ?この鏡の世界で魔王を倒すにしろなにかステップが必要 だろ?
「あぁ、じゃあ気持ちをもて」
こいつバカだ。
ーもういい。僕はこの世界をすこしめぐってみるよ。
「あぁ…」
自意識過剰 ではないのか?自信過多というやつか?こいつのホラには僕のせられたんだろうか。
しかし、奇妙というか異和感のある世界だ。そしておどろいたのは人がいないことだ。
いつもの世界ならここは体育館の裏で部活動が 行われていてもおかしくはない。
つーか、この世界に時間とかあるんかな。
人がいないなら手入れとかないはずだしな。
木とかの植物とか、電気とかも建物もどうなんだろうか。少なくとも前からあったことが分かる鏡だしな。
リンクはしていてほしいのだが。
物が勝手に動いてくれたらいんだけど。あいにく学校中、回ってみたが、ドアが勝手に開閉とかないわけで、不思議な世界に来た。
じャ、劣化の原因でもある菌糸とかいないのか?
だとしたら食物連鎖云々が崩れていってしまう。
正直この世界に出てくる疑問というか矛盾は放っておけるものではない。
もし、いつもの世界で矛盾なんてものがおきたらどうなってしまうのか。
矛盾といえばのパラドクスを挙げてみようか。 親殺しのパラドクスはどうだろうか。
未来の自分が過去の親を殺したならどうなるか?という疑問だ。
Aルートとしては殺したなら自分は産まれないし、この場から消えるんじゃない?
でも、そうしたら殺したのは誰?になってしまう。Bルートは「並行世界製造マシーンコース」呼ぶか。その時点を境界に並行世界が出来てしまうというものだ。
もし、ルートが本当になってしまったのならこの世界は手店を作 り出し続ける手世界製造マシーンになってしまうのであって、「みんなもやってみてね」なんてのには到底なるものではなく、同時に「沼」なんてのになってしまう。
しかし、そんなBルートなのだが、AルートいうかBルートにもだが共通していえることがある。
それは「実現不可」ということだ。
答えはそうなってしまうのだ「てかできなくね?」である。
それはとても幼稚な発想であり、僕の嫌いなことだ。夢でしかない。
しかし、今、それは起きてしまっている。
降り出しにもどったか…
そういえば、他の鏡はどうなっているのだろうか。
弱点を見つけたらなんかヤバそうというのは感じていても、興味はあるもので、探してしまいたくなる。
これは、「自称完璧人間」からアラを探す行為に近いものであり、とても醜い行動だ。
たとえ頭の中でそれが分かっていたとしても好奇心には勝てないのである。トイレ、なんにも映らね、つかえな…
5
この鏡の世界、一人でいるということもあり気がおかしくなってしまいそうだ。
独房なんてのもつらいのだろーか。いや、僕は他のことも考えて…
いや、考えるだけで惨めに見えてきてしまう。
ということなら、思原響也のところへ戻ることにする。あいつは体離館のステージで寝ていた。
一 よぉ、思原響也
「ん?あぁ、帰ってきたのか。何か分かったか?」
ーいや人がいなくて…とかかな…
「この世界と向こう世界との予盾点とか気にならなかったか?」
ーあぁ…なった。でも、起きてしまったことはもう起きてしまっているんだ。になってしまう要するに、ふり出しに戻ってきてしまう。
「そこまで考えたのか?でもよぉ、この世界が今できたものならどうする?」
ー今できたってことは、前まで存在しなかったってことか?
「そうだな。」
ーしかし、七不思議と呼ばれるくらいだし、前からあったって、おかしくはないだろ?
「人が入るたびに世界ができていっているんだ。 たとえば、お前が言っていることが本当だとしたらどうなるんだ?この世界は崩れるだろうね…」なんでだ?
「この世界は生まれたて。でも、リンクはしていない。で、この形になっている予盾点が現実になってしまっているここまでは分かるな?」
ーあぁ。
「だけど矛盾点が今まで世界になかった頭の中の事象であり、概念でしかなかった。理由としては、現実世界では実現可能不可だったからだ。
ーそーなるな
「じゃあ、見方を変えよう。起こらなかった理由を起こったけどなくなったっていうことにしよう」一ん?
「タイムマシンは作れたけど、どんな理由か分からないけどなくなったや、作れなくなったとか丸く解決しようとしている。世界かな?まぁ、それに似たなにかかもしれないな。」
ーで、それが、どう世界を壊すって?
「この世界には矛盾点が多すぎるってイグノーっていうのかな?『見えなくすればいいのさ』やつだ」
ーそれで、世界になるであろう主が消すわけか?でも、それはお前の行きすぎた考えに近くないか?「いや違うね」
一理由はきけるか?
「オレ自身が言葉にできないから、この場はパスで。」
ーじゃあ、この世界から逃げるか?
「ドラマ仕立てでか?」
わかってるじゃん
ーあぁ
「じゃあ、入れ替わりたいなぁ」
6
向こうの世界では自分達がいるのだろうか?まぁ、いるんだろう。じゃいなければ向こうにも矛盾点ができてしまう。世界が気付くのは人の数の多い向こうの世界が速いだろうな。
てゆーか、現世を 「向こうの世界」なんて呼ぶのはおかしな話だ
一思原響也、どうやって抜け出すんだ?「easyだ。この世界をまず完成させよう。」
ーおぉ。
「創造神っていうやつか?」
日常は変わってくれるだろうか。
「そうだなぁ。向こうの世界のオレ等を神にししよう」
ーどうやって?
「ん?こーやってな、鏡の目の前にあいつらを呼べばいい。」
いなかったはずなのにいる。いたのだ。あのときだ。いつのまにか、昼になっていたあの感覚と同じことが。
今、また僕の前で起きた。
「よぉ、」
おいおい、こえー笑い方すんな。「じゃあ、来い。」
抵抗はしていた。人並みにだろう。 しかし、そんな、抵抗も無駄になるようにゆっくりとすんなりと引きずりこまれていく。
いや、ひきこんでいくわけなのだが、もう一人の思原響也は叫んでいる。頭の中で響くような金切り声は耳に入ってきた。として言っても音として拾われることはない。ただ物としてそこにある。 それだけ。
「じゃあお前神様な!」
時好だ。あいつのそのときの我儘がそのときの物として消化されている。
たとえそれに矛盾があってもそれはそれと丸くかえられてしまう。
世界がだとか主や神様だとかが丸くするのならその何者か分からないものが思原響也であり目の前にある(いや、いるがいいのだろう)であった。
とは、どういうことなのか。そう、鏡の向こうの思原響也は神様になったのだ。
向こうからしてみたら、私たちももしかしたら偽者なのかもしれないし、神様だって思原響也がそう言ってそうなってしまったのであって、我々の思う彼の本質は人間なのである。
しかし、思原響也ば止まらない。
「するならとことんだ!」
次に、思原響也がとり出したのは僕だった。
鏡の世界を正しくもある世界にするらしい。
僕なりに理解はしてみた。
そうだな、たとえるならケーキ。あ、いや、ロールケーキとか言わないでくれ。ホールケーキってヤツだ。
まずは、スポンジケーキだ。それは元々の鏡の世界。それを、むき出しでは悪いと僕でコーティングする。
そして、「管理」という意味でイチゴか、なにかのトッピングを、新しく神の姿となった思原響也で飾る。
これで完成さ世界で1番分かりやすいのに分かりづらいというケーキがあるとしたならばこのケーキで間違いないだろう。
「神レオンってのはどうかな」
ーいや、 やめてくれ。
「そっか…」
ネーミングセンスというのが無いらしい。彼によれば、先程の鏡の世界に入った際、我々 2人が気付くことがなかったため、疑態能力のあるカメレオンにしたらしい。
それを「神レオン」とは、引くな...
エンドレスプロローグ 丸井 ハル @kittoiikoto
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