真夜中の宅配便

@JIGHEAD

運ばれた物。

 深夜2時に運ばれてくる宅配便。

 一体何が運ばれて来るのか?

 深夜2時ごろ栄子はマンションに帰って来た。

                「はぁ、疲れたぁ。今日も忙しかった。えっと郵便物っと」

                  栄子は仕事から帰って来るとまず郵便物をチェックする。一度ストーカーに合い郵便物を盗まれていた経験があった。それ以来、来るはずの物がちゃんと来ているかチェックするようになっていた。                 「これはOK、これもチェックと、えーとこれは?宅配便の不在届け?コウモリ印の宅配便。こんなとこあったっけ?差し出し人はと…。えっ!」                  栄子はびっくりした。差出人が亡くなった栄子の婚約者、立花健一になっていた。              「なにこれ?誰のイタズラ?かなり悪質ね!」                  と栄子は呆れていた。                 「受け取り拒否!えーと、コウモリ便の連絡先はと、へぇー朝の5時までやってんだあ。おかしな宅配便ねぇ。」                   電話をする栄子。                  「あっ、もしもし進藤栄子と言いますが、今日入っていた不在届けのことですが、受け取り拒否するので送り主に返してもらえますか。えっ?理由?あの送り主は亡くなっているので、郵便物が届くなんてあり得ないんです。だから、受け取れません。配達しないで下さい!よろしくお願いします!」 栄子は電話をきった。                  「ふぅ、なんなのよいったい、誰が健一さんの名前でイタズラなんか。」                   と、すぐに電話がかかって来た。こんな時間に誰?                  「はい、もしもし、コウモリ便?えっ、間違いなく本人が差し出し人?受け取り拒否出来ないですって⁈そんなバカなぁ!本人は亡くなってるんですよ!えっ、明日配達しますって!ちょ、ちよっと!」                  電話は切れてしまった。                 「なんなのよ!いったい!」                  コウモリ便に又、電話する栄子。                 「おかけになった電話番号は現在使われておりませんって⁈えっ、どういう事?リダイアルしたから間違いないのに!はぁ?どうなってんの?」                  次の日、深夜2時、栄子は仕事から帰って来た。                  「はあ、今日も疲れたぁ。あっ!宅配便来るって言ってたけど、まさかこんな時間に来るわけないよね。」                     「ピンポーン!」                           「まさか!はい?」                          「コウモリ便です〜。」                       「ちよっと、こんな時間に非常識じゃない!ドア開けないわよ!てか帰らないと警察呼ぶわよ!」                         「お荷物を届けにまいりましたぁ。」                 「だから、要らないって言ったじゃない!あんた、新手のストーカーじゃないの!」

 と栄子。

「あの、宅配便です〜。」

 と配達人。

「だから、いらないって!」と栄子。 「それでは、強制的に受け取っていただきます〜。」

 と配達人。カチャっと突然ドアが勝手に開いた。

「あっ、…」

 栄子は、金縛りになり動く事も声を出すことも出来なくなった。ゆっくりと入って来る配達人、白い靄がかかったようなボンヤリした感じになり栄子は気を失ってしまった…。 気が付くと朝になっていた。

「あれっ?私、何してたんだろ?うーん。あっ!そうだ!宅配便!」

 と玄関のドアを確認した。

「あれっ?閉まってる。昨日、勝手にドアのカギが開いて…。ん?夢?だよね。そんな事あるわけないよ。ふぁ〜。」

 と、机の上の箱が目に入る。

「えっ‼この箱何?うわっ!コウモリ便って書いてあるじゃ〜ん💦やっぱり夢じゃなかったぁ〜💦どうしよう、開けたら、爆発とかないよね。何かないかな?えっとこれでいいや!」

 と、テレビのリモコンでツンツンしようとした時!足が絡まってすっ転んだ!

「キャー!イッタァ。まいったよ。」 見ると箱を押し潰していた!

「ああっ!爆発するー!」

 と手で耳をふさいでいる栄子。何も、おきない。

「大丈夫ですかね。」

 中を覗く栄子。

「うん?何かありますかね?……。指輪?…………えっ!ええっ!これって⁈なんで!健一さんとお揃いで作ってもらった指輪だよ!世界にこれしかないから、絶対健一さんのだよ!どういう事なの?わけわからない?……………………。 あり得ない、あり得ないよぅ。うーん、健一さんからの何かの合図なのかなぁ?あっ!お墓のお掃除出来てないのかなぁ。毎月、行ってるけど足りないのかも!よし、明日行こう!お墓綺麗にするぞ!」

 次の日、お墓に来た栄子。

「うーん、そんなに汚れてないけどなぁ!健一さんキレイ好きだったからなぁー。よし、やるかぁ!」

 お墓をピカピカに磨き上げた栄子。汗だくになっている!

「ふぅ、これで完璧だぁ。健一さんも、納得してくれるかなぁ。」

 そこへ、通りかかったおばあちゃんが、声をかけて来た。

「あら、あなた、また来たの?」

「えっ?どうして私が来たこと知ってるんですか?」

「毎日来てるからね、おじいさんのお墓参り。だから、よく見かける人は、憶えちゃうよ。」

「そうだったんですか!毎日、お墓参り来てるんですか?」

「ふふ、年金生活してるから、暇潰しと、お散歩をかねてね!」

「毎日かぁ。やっぱり毎日なのかなぁ。毎日来てるひとって多いんですかね?」

「ここでは、あまり見ないわねぇ。」 「毎日来た方が故人は喜びますかね?」

「そうねぇ、それは嬉しいんじゃないかしら?」

 すると、突然どしゃ降りの雨が降り出した!凄い勢いだ!

「わぁー、何、何?きゃー!おばあちゃん、大丈夫?あっ!あの屋根の下に行きましょう!」

 水くみ場の屋根の下に入った二人。 「凄い雨!ゲリラ豪雨ね!大丈夫でした?」

「凄い雨ね〜。この辺はあんまり雨が降らないんだけど。誰かの、ご機嫌でも、損ねたのかしら?」

「ま、まさか!健一さんなの?まだ足りないの?私じゃこれ以上は、無理だよ!あの、お墓をピカピカにしてくれる業者さん知りませんか?」

「そうねぇ、何でも屋さんだったらしてくれるんじやない?」

「何でも屋さんかぁ…」

 栄子は自宅に戻ってきた。

「あーあ、スッキリした。シャワーを浴びると、生き返る〜!さてと、探して見ますか何でも屋さん。」

 パソコンで検索をする栄子。

「結構あるもんですね。近所だと〜ココか!えーと、あっ、墓掃除もokか!よし!」

 電話する栄子。

「あっ、もしもしーお墓掃除お願いしたいんですけど、えっ、ランクがあるんですか?じゃあ、最高級で!はいっ!お願いします!」

 別の日、栄子は墓地で待っていた。 「おはようございます!何でも屋の神矢です。こちらのお墓ですか?」

「そうです。お願いしまーす。」

「綺麗なお墓ですねー。かなりお手入れされているようですけど、お掃除されますかぁ?」

「いえいえ、素人ですから!お願いします!」

「わかりました!じゃあ、最高級で!出来ましたらお墓の出来上がりのお写真をもってお伺いいたします!」

「お願いします!」

 栄子は帰って行った。

「さぁ、やるかぁ!しかし、こんなキレイなお墓どこを掃除したらいいんだ?あっ、、あれを使おう!特殊洗剤ピカリング!これ使ったら鏡みたいに光っちゃうよ!よーし!やるかぁ!」 突然!カミナリがなり出した!ゴロゴロ!ビカッ!

「なっ、何だあ?さっきまで天気良かったのに⁉」

 ドシャー!大粒の雨が降ってきた! 「うおー!まじかっ!非難だぁー!」 水汲み場所の屋根の下に非難した! 「何だあ?どうなってんだぁ?すっげえ天気の変わり方。まじかっ。あっ、いけねぇ、洗剤の蓋が開きっぱなしだ!」

 取りに行こうと屋根を出たその時、 カミナリが屋根を直撃した! バリバリガッシャーン!

「怖〜。だいぶお怒りのようですね。」

 プルルルル! 栄子の電話がなっている!

「はい、もしもーし。あっ、何でも屋さんですか?出来ました?えっ?少し時間がかかりそう?はぁ、分かりました。」

 電話をきる栄子。

「キレイにしてくれるなら、時間かかってもいいよね!」

 と健一の写真に向かって語りかける栄子。ビシッ!その時、写真盾のガラスがヒビ割れた!

「なっななななにっ!怒ってるの?そ、そうよね!早くしてほしいのよね!分かったわ!」

 なんでも屋に電話する栄子。

「もしもし、進藤栄子ですけど、出来るだけ早くしてほしいんですけど。」 「そうしたいのは、やまやまなんですけど。」

「はぁ。」

「どうも、何かに邪魔されてるようなんです。」

「何かって?」

「分からないです。でも、間違いなく妨害してますね。」

「どうしょう、早くしないと困るんですよぅ。」

「分かりました。出来るだけ早くするようにしますんで!」

「よろしくお願いします!」

 電話を切る何でも屋。

「早くこの仕事終わらせたいのはやまやまなんだけど。だって早くしないと、ウヒウヒパブの沙織ちゃんに会えないじゃん。」

 沙織の写真を見る何でも屋。

「やっぱかわいいなぁ。沙織ちゃん。むふっ。」 にやける何でも屋。 「さあ!気合い入った!やるぞ!」 墓地に着いた何でも屋。

「まずは、このゴムガッパで雨対策!さらに!カミナリ除けとして、カミナリさんこっちこっち棒!カミナリが落ちてきても、この棒に落ちるから大丈夫!さぁ!やりますかぁ!」

 墓掃除を始めるといきなり土砂降りの雨!

「カッパ着てるもんねぇ〜。ハハハ。」

 カミナリがゴロゴロ鳴り出してきた! ドジャーン!カミナリが落ちた!

「うひょーっ!怖いねー!でも、カミナリさんこっちこっち棒があるから、ここには落ちないよっ!さぁ!今の内にやっちまおう!」

 ゴゴゴゴゴゴゴ地響きが聞こえてきた!

「なっなんだ?うわー!地震だぁ!負けないぞー!早く終わらせて沙織ちゃんに会うんだからぁ〜!」

 地震に耐えながら掃除する何でも屋! すると、空に大きな黒い雲のかたまりが出来た!人の形のように見える! 「や、め、ろ!」

 風の音が人の声のように聞こえる! 「な、なんだぁ?雲が喋った?まさか!」

 吹き付ける雨、カミナリ、地震、喋る風。負けずに黙々と墓を掃除する何でも屋!

「クソー!綺麗になってんのか全然わかんねぇ!なんか、腹立ってきた! おいっ!このヤロー!邪魔すんじゃねぇ!何が不満なんだよ!こっちは、仕事なの!俺に嫌がらせしても仕方ねぇだろがー!」

 叫んだ所で変化なし。

「くそ〜。こうなりゃ、こっちも意地だぜ!おい!俺をそこいらの何でも屋と一緒にするなよ!てめえなんか、ぎったんぎったんにしてやるからなぁ!待ってろよ!」

 車に走る何でも屋。

「おい!今からお前を退治してやる!有難く思え!俺は若い頃のあやまちを悔い改める為に山にこもったんだ。そこで出会った修行僧にいろんな術を教わった、まさか役に立つことがあるとはなぁ!さぁ!成仏しやがれ! そして俺は、ウヒウヒパブに行く! とりゃー!」

 経文を烈火の如くまくしたてる何でも屋! 雲の塊が、うなりをあげて苦しみ出した!

「グワーーっ!」

 叫ぶ雲の塊! その時、声がした! 「もう、やめて!健一さん!そうなんでしょ!」

 何でも屋が振り返った!

「あれっ?掃除の依頼主さん?どうして?」

「やめてください!あの雲は私の婚約者だった人なんです」

「えっ?あのお墓の人なの?」

「はい。」

 雲は逃げるように消えて行った。

「いやいや、意味わかんねぇ!なんで自分のお墓をきれいにしてるのに邪魔すんの?」

「私、健一さんの優しさに甘えて、無理矢理な感じで付き合ったんです。 知り合った時は別の彼女がいたんですけど、どうしても健一さんを私の物にしたくて…。自分は病にかかっていてあまり生きられないと嘘をついたんです。」

「えー!ドラマでそう言うのあるけどやっちゃったんだぁー!」

「本当に私、どうかしてたんです… 優しい健一さんは私に同情して、自分が力になれるならって…」

「ふ〜ん、でも、依頼人さん美人だからラッキーって乗り換えただけかもよ〜」

 ニヤニヤする何でも屋。

「いいえ、健一さんは同情してくれたんです。だって健一さんの彼女は国民的アイドルるり子ちゃんだったんだから。」

「えー!マジでっ‼嘘ー!TVとかに出てるあのるり子ちゃん?」

「そうです。TVとかに出てるあのるり子ちゃんです。」

「るり子ちゃんと別れて依頼人さんの所に来たの?か〜っ‼ありえねぇ!俺だったらぜってー別れねぇ!ヤバイねっ!」

「ですよね…健一さんも別れたくなかったと思います。 こんな事はしてはいけないと分かっていても健一さんを自分の物にしたいと言う欲求が勝ってしまうんです。」

「はぁ、でも、よくるり子ちゃん別れてくれたね。」

「健一さんは、るり子ちゃんにすべてを話して別れ話をしたみたいなんですけど、るり子ちゃんは絶対別れないって言って揉めたみたいなんです。 でも、るり子ちゃんの仕事が忙しくなって話をする時間がなくなっちゃったみたいで…」

「じゃあ、そのまままになっちゃってんの!?スッキリしねぇなぁ。」

「るり子ちゃん怒ってるだろうなぁ」 そこへ真っ赤なスポーツカーがやって来た!何でも屋の前を通り過ぎていく。

「うわっ、派手な車!やだね〜!ん?あれっ?うわっ!まさか!る、るり子ちゃんだ!」

「えっ?」

 るり子は健一の墓に手を合わせて目を閉じている。

「健ちゃん、久しぶりね。あなたが夢枕に立ったから胸騒ぎがして、来てしまったわ。もう、来ないつもりだったけど…。」

 栄子が近づく。

「あの、国民的アイドルのるり子ちゃんですよね。」

「そう、国民的アイドルのるり子です。あなたは進藤栄子さんですね。」 「はいっ。あれっ?なんで私の名前…」

 頭を下げるるり子。

「ごめんなさい。私はあなたに、してはいけない事をしたわ。」

「えっ?なっ、何の事ですか⁈」

 キョトンとする栄子。

「健ちゃんに話しを聞いた時、とっても腹が立ってあなたの事を調べさせたの。あなたの郵便物がなくなったり、誰かにつけられたりしたでしょう。 それは私がやらせていたの、本当にごめんなさい。」

「そ、そうなんですか。ストーカーされる意味が分からなかったから気持ち悪かったんですけど…」

「本当にごめんなさい。でも、あなたにも謝ってもらわないといけないの。 あなたは健ちゃんに嘘をついたでしょ。」

「私、あの時、健一さんを自分だけの物にしたくて…なんであんな事しちゃったんだろうって…本当にごめんなさい!」

「健ちゃんは何も知らないまま交通事故で亡くなったけど、私の枕元に立ってこう言ったの。」

「僕は本当は国民的アイドルのるり子ちゃんといたかった。僕は、何をしていたんだろう。僕は偽善者かもしれない。」

「健ちゃんは亡くなった今も苦しんでいるのよ。ちゃんと成仏出来ないでいるの。あなたは本当のことを健ちゃんに話すべきだわ!」

「そうね。悪いのは私。でも、国民的アイドルるり子ちゃん貴方にも非があるんじゃないですか?」

「な、なんですって!」

「健一さんは、私にこんな事言ってました。国民的アイドルるり子ちゃんは会いたい時に中々会えないから…そりゃ仕事だからね。仕方ないけど寂しいよね。それに会ったとしてもコソコソ隠れなきゃならない、国民的アイドルに彼氏がいたんじゃ大変だよ、僕は常に影の存在なんだ。」

 って。

「そんなの私だって同じよ!でも仕方ないじゃない!これが私の仕事なんだから!」

「結局るり子ちゃんは仕事を選んでたんでしょ!なかなか会えないアイドルといつも側にいる私。どちらが幸せなのかな?」

「はぁ〜?何言ってんの?すり替えんじゃねーよ!私はあんたが健ちゃんに嘘吐いた事を誤れっつってんだよ!テメエふざけんじゃねぇぞ!オイ!なめてると痛い目みるぞコラ‼️ こちとらなぁ、だてに小役からはいあがって アイドルやってんじゃねんだよ!毎日、タラタラ生きてるおめえらと一緒にすんじゃねぇぞ!分かったか!このあばずれがっ!」

「はいはい、すごいすごい〜」

 と栄子。

「テメエ〜(怒)やられたいんかぁ〜(鬼)」

 鬼の形相のるり子。ア然とする何でも屋。

「ストーップ!待って待って!気持ちは分かるけど冷静に冷静に!二人とも怖すぎるよ! るり子ちゃんはアイドルなんだから!」

「はっ、私としたことがっ!失礼しましたわ!とにかく、健ちゃんに謝ってください!」

 健一のお墓の前に立つ栄子。

「健一さん、ごめんなさい。わたしは嘘をついていたわ。命がないなんて嘘なの。あなたが欲しかったの!只それだけ。でも、これだけは信じてあなたを想う気持ちは嘘じゃない。ごめんなさい健一さん。」

 突然、カミナリが鳴り真っ黒い雲が表れた!

「ゆ る さ な い !ゆるさない!グアー❗️」

 暴れ出す黒い雲。風と雨がすごい事になってきた! 国民的アイドルるり子ちゃんが叫んだ!

「健ちゃん!もうやめて!気持ちは分かるけどもう終わった事じゃない!お願い!やめて!」

「う る さ い ガァー‼️」

 更に暴れ出した健一!

「いい加減にしろ!この野郎!」 何でも屋が呪文を唱え出した!

「ガァー‼️や め ろ ‼️」

 苦しみだす健一! 更にまくしたてる何でも屋‼️

「く、くるしぃ。た す け て。」

 もがく健一! その時、栄子が何でも屋に体当たりして来た!

「痛ェ〜。何すんですか⁉️」

「やめて!健一さんが苦しんでる!」 「でも、あいつが暴れるから!」

「何とかならないの?健一さんを傷付けないでよ!」

「ひとつだけ方法があります。それは健一さんからあなたへの復讐心を消すことです。」

「そんな事出来るの?」

「厳しい修行を耐え抜いた俺なら出来ます! 」

「じやあ、すぐお願い!」

「分かりました!今から、健一さんの中のあなたの記憶を全て消し去ります!」

「ちょっと待って!どういう事⁉️」 「記憶がなくなれば、あなたへの復讐心も無くなります。」

「そんな、全て忘れるなんて!じゃあ二人で食べた来来軒のおなか満腹セットの事も?」

「忘れてしまいます。」

「ケーキハウスルンルンに行ってケーキバイキングを二人で食べ過ぎてトイレでゲロしちゃった事も?」

「忘れます!」

「焼き肉屋ニークニークでスタミナつき放題あなたは今夜ウハウハだねコースを食べたことも?」

「だからっ!忘れるのっ❗️全部っ‼️」

「うわ〜ん。」

 るり子ちゃんが叫んだ!

「早くしなさいよ!」

「分かりました!あっ依頼人さん!これ別料金になりますけどいいですか?」

 泣いている栄子!そこでるり子ちゃんが叫んだ!

「私が払うから!早く!」

「了解‼️」

 何でも屋が祈り始めた!右手に握り拳を作り天に向かって突き上げた!

「アーラフシギキエチャッタ!サーイッ‼️」

 黒い雲がクルクル回り出した!渦巻いている。そのまま空へと登って行った! 何でも屋が叫んだ!

「ヒカリアラワレリ‼️」

 空から一筋の光がさしてきた!地上の光の中に健一が立っている。

「健一さん!」

「健ちゃん!」

 栄子とるり子が叫んだ! にっこり笑う健一。

「るり子ちゃん、会いたかったよ。悲しませてごめんね。俺、死んだんだね。突然だったから自分が死んだことも分からなかったんだ。魂だけが残ってる感じでどうなってるのか分からないんだ。」

 るり子ちゃんが泣きながら伝えた。 「健ちゃんは車で事故を起こしたんだよ。」

「事故かぁ。俺、そそっかしいからなぁ。誰も傷付けてない?」

「大丈夫よ。あなたは誰も傷付けてないわ」

「そうか、良かった。人を傷付けるなんて嫌なんだ。でも、僕は、るり子ちゃんを傷付けてしまった。ごめんなさい。」

「健ちゃんのせいじゃない!あれは栄子さんがウソついたから!」

「栄子…栄子!そこにいるのは栄子だね。」

「えっ、健一さん!私の事おぼえてるの?」

 何でも屋がビックリしている。

「あれっ!?おぼえてんじゃん!失敗したか?あちゃー。ヤバイ!又暴れ出すぜ!」

 何でも屋が呪文を唱えようとしたとき栄子がまた、体当たりして来た! 「な、な、なんですか?痛いじゃないですか!」

「暴れてないでしょ!健一さんの顔見て!凄く穏やかな顔よ。」

 健一が栄子に話しかけてきた。

「栄子久しぶりだね。二人で行ったチャオチャオ亭のラーメン、ギョウザ食べ放題。とても美味しかった。栄子は美味しいお店を探すのが上手だったね。」

 何でも屋があきれている。

「あんたら食べてばっかりだなぁ。」 「いいじゃない!好きなんだから!ねー、健一さん!」

「そうさ!美味しい物を食べると心がゆたかになるよ。」

 健一は微笑んでいたが少し寂しそうになる。

「栄子…僕は、魂だけになった時全てを知ってしまった。そして憎しみがうまれた。許せなかった。でも、君と話して気付いたよ。ウソをつかれた事はショックだったけど楽しい思い出のほうがはるかに多い。栄子、ありがとう。」

「健一さん!」

 健一の体がゆっくり消えていく。 「るり子ちゃん、僕はいつも君と一緒だよ。」

「健ちゃん!」

 健一が消えていく。 泣いている二人。 何でも屋が栄子のそばに来る。

「結果オーライって訳ですね。」

 栄子はうなずく。

「ありがとう。あなたにお墓の掃除頼んでなかったら健一さんに逢えなかったから。」

「これも、仕事ですから。お墓の方も綺麗にしておきます。」

 ほほ笑む栄子。

「お願いします。」

 るり子ちゃんがサングラスをかけて車に乗り込んだ。電話がなっている。 「もしもし、今から行くところよ。そんなの待たしときなさいよ。」

 電話を切るるり子ちゃん。 何でも屋がニヤニヤしている。

「忙しそうですね。」

 軽く笑うるり子ちゃん。

「あんたたちと違って忙しいのよ!じゃあねー!」

 走りだす車。 あわてる何でも屋。 「あっ!ちょっと!追加料金もらってないっすよー!」

 走り去るるり子ちゃんの車。

「あちゃー!まいったなぁ。あっ、栄子さん お願い出来ないすか?」 「私、払うっていってないわよ。」 「ですよね〜。とほほ。」

 イタズラっぽく笑う栄子。

「ウソウソ、健一さんにも会えたし払ってあげるわよっ。」

 涙ぐむ何でも屋。

「あざーすっ!じゃあ掃除やっちゃいますね!待っててねウヒウヒパブの沙織ちゃん! ヒャッホー!」

 お墓を掃除する何でも屋。 何かを考えている栄子。


「あの、コウモリ便とかいう夜の宅配便は死後の世界からこの世に届け物をしているんだわ。次は誰に何を運ぶのかしら?」

 終わり

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