理解から始めよ

シヨゥ

第1話

「人は誰でも色眼鏡をかけているもんだ」

 爺さんはそう言う。

「見えている世界が違うんだから当然なんだが、それをわからない奴が多すぎる」

「同じ世界を生きているのに、見えている世界は違うの?」

「そりゃそうだ。同じものを見ても感想は人それぞれだろ?」

「そうだね」

「同じ世界を見ているなら一緒にならなきゃおかしいだろ? だから俺たちは同じ世界を生きながらにして違う世界を見ている。でも目ン玉の機能は一緒だろう? だから人はみんな色眼鏡をかけて世界を見ているんだ」

「なるほど」

「だから意見が対立した時は理解しろ。相手にはその意見を通したいと思わせる世界が見えていると理解しろ」

「理解したらどうなるの?」

「相手を知ることができる。そうしたら勝てる」

「なんで?」

「だって相手を知ることは勝つことの限定条件だろう」

 そう投げかけてくる爺さん。そりゃあ勝てないわけだと納得がいった。

「まあこれだけじゃ勝てないがな。まあ精進することだ」

 そう言って頭をなでられた。力強いその手になすがままにされる。この爺さんからは勝ちが拾えない。そう思わされるのだった。

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理解から始めよ シヨゥ @Shiyoxu

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