第3話 冒険者登録

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  城壁を確認してからどれくらい歩いたでしょうか? それなりに時間がかかったように思います。私はようやく最初の町――いえ、これは街ですね――にたどり着きました。

 かなり高い城壁です。

 なんとなく、某ドラゴンなRPGの九作品目に出てくる酒場付き宿屋のある城下町を思わせますね。

 とにかく中へ入りましょう。


  けっこう人が並んでますね。まあこの規模です。仕方がありません。


 ――もうすぐですね。案外で早いと思ったら、前の方でいくつかに列が分かれていました。


 しかし、この辺りは魔物が多いのでしょうか? 門の先に開けた場所があり、その先にまた門があってそこで通行者のチェックが行われてます。

 開けた場所はそこそこの広さ、……そうですね、二百人は入れるだろう広さがあります。まあ馬車などを考えれば百人ちょっとがせいぜいでしょうね。

 きっと魔物が来たら一度そこまで入ってもらうのでしょう。何がなんでも未チェックの人を入れたくないという事ですかね?


「次!」


 などと考えていたら門兵さんによばれました。

 若いですね、鼻の下が伸びてます。


「身分を証明できるものをおねがいします」


 おや、存外に丁寧。まじめなんですね。やっぱり鼻の下は伸びてますが。


「実は、野営中に盗賊に捕まりまして。幸いにも森の中を移動中彼らは魔物に襲われて全滅してしまったので、隙をみてにげだしたんですが、荷物は金目の物以外は処分されてしまったみたいなんです。やっぱりないと通れないですか?」


 森を歩きながら考えた言い訳を、腕を組んで胸を強調するように言ってみます。だって鼻の下が伸びてますから。


「い、いや、犯罪を犯していなければ問題ありません。仮の身分証を発行するので手数料の銀貨一枚を一週間以内に払っていただければ」


 お、照れてますね。胸を強調する必要はなかったようですが。


「こちらに手を乗せてください」


 そういいながら彼は占い師が使う水晶のようなものをさしだします。とりあえず手を置いてみると、青く光りました。犯罪を犯していたら別の色になるのでしょう。よくラノベで見るやつですね。


「はい、問題ありません。こちらが仮の身分証になります。これは街を出る時に返すか、新しく身分証を発行した後に返していただければ大丈夫です。冒険者ギルドは道沿いに真っ直ぐいけばすぐわかります。商人ギルドは中央広場にありますので。ただし、一週間以内、または街を出る時までに手数料の支払いがなければ牢屋行きですので気をつけてください」


 親切ですね。やはり胸を強調した甲斐があったかもしれません。なんて。


 住人以外が身分証明しようと思ったら冒険者か商人のどちらかのギルドに登録することになるようです。えぇ、冒険者です! いい響きですね!

 これは迷う余地はありませんね!


 現実的に見てもそれ以外ないのですけどね。


 私は若い門兵さんにお礼をいって、早速向かうことにしました。

 手数料もですが、今夜の宿の為にどうにかお金を手に入れなければいけません。森を歩きながら採取した薬草類がどれくらいになるかですね。

 今の鑑定では売値まではわかりませんから。


 街並みは、月並みですが日本人のイメージする中世ヨーロッパに所々現代が混じった感じといったところです。要は近世+現代のちぐはぐな雰囲気という事ですね。

 冒険者ギルドはすぐに見えて来ました。

 なんというか、これもイメージ通りですね。正面に受付のような所があって、右手の一角が酒場になっています。ラノベだとこのパターンか役所のようなところが多いですが、私は酒場ありパターンの方が好きなので嬉しいです。


 今はちょうど太陽が真上に来たくらいなのでギルド内に人は少ないです。せいぜい酒場で五、六人が騒いでるくらいでしょうか?

 テンプレはありますかね?

 まぁ来ても今の私の戦闘技術がどれほど通用するかわかりませんし、困りますけど。


 とりあえず、『人族』っぽい受付嬢さんに話しかけましょう。綺麗というか、可愛いって感じですね。クラスに一人はいるってくらいです。

 近づいていくと、一瞬何やら驚いた顔をしたように見えました。気のせいですかね?


「すみません、ギルドに登録したいのですが」

「登録ですね。それではこちらに必要事項の記入をお願いします。書きたくないことは書かれなくてもかまいませんが、太枠だけは必ずおねがいします」


  そういって、受付嬢さんは紙とペンを差し出されます。

 あぁよかった。文字はよめる。日本語に聞こえるのに口の形が合わないので、少し不安だったんですよね。<言語適正>は文字にも対応しているようでありがたいです。管理者に感謝ですね。本当に。


 太枠は登録名、登録経験の有無ですか。他は得意な戦闘方法、使用魔法属性や使用武器、種族に出身、年齢、その他特技です。


 登録経験はもちろんありません。使用魔法属性はスルー。使用武器もまだ決めていないのでスルー。出身も、まさか異世界とか日本とかなんて書けません。スルーで。

 種族は書いておきましょうか。

 年齢は書きません。万が一やらかした時があれば、きっと勘違いしてくれるでしょう。

 特技の欄に<鑑定>と<ストレージ>を書いておきます。<鑑定眼>は警戒されることもあるらしいので。<魔力視>はほとんど知られていないため書きません。

 そして、名前、ですか。はい、忘れてました。


 ……ふむ、早く書かなければ怪しまれます。


 ……この髪からつけますか。


 時々青っぽく見える銀髪ですから……


 あれ、いえ、あれと……


 ……よし、決めました。今から私は『アルジュエロ』です!


 とりあえず、紙を渡しましょうか。


「――はい、問題ありません。珍しいスキルをお持ちですね。冒険者ならかなり役立ちますよ。それと、名前は偽名で登録する方は多いですよ」


 なにやら誤解してくれたようです。


「それでは、血を一滴いただきます。魔導具に登録を致しますので」


 別に血ぐらいでは騒ぎませんし、サクっと渡された針で指先を指して一緒に渡されたプレパラートのようなものに血を垂らします。

 それを受付嬢さんは私が先ほど書いた紙の上に置き、なにやら魔力を動かしました。


「――はい、ありがとうございます。少し時間がかかるので、先に冒険者について説明させていただきます」


 おっと、長そうです。しっかり聞いていませんと。


「まず、冒険者はF〜A、さらにその上のSとSSのランクによって区別されています。ランクはギルドへの貢献度が一定値を超えること、その他必要能力を有することを条件にして上がります。Dまでは戦闘力のみ、Cは人を殺せるか、Bで礼法、A以上は1つ下のランクを凌駕するような戦闘力です。Cは護衛依頼や盗賊の討伐依頼があるから、Bは貴族と直接会う機会があるからというのが理由ですね。ですからCとB、それからSに上がる際は試験があります」


 人を殺せるか、ですか。まあ、そこは大丈夫です。理由については、おいおい……。


「また、冒険者同士の争いに関してですが、ギルドは基本関与しません。要請があれば訓練場を提供する程度です。その他細かな規約に関してはあちらにあるマニュアルをご覧ください。それほど量はないので」


 あれですね。絵本くらいの厚みに見えます。

 

「――登録も終わってますね。こちらがあなたのギルドカードになります」


 ほう! サイズは学生証と同じか若干大きいくらいで、凄くそれっぽいです!


「身分証明としても使え、色を見ればランクがわかります。下から黒、茶色、青色、緑色、赤色、銀色、金色です。SSランクは自由に変えられます」


 つまり私はFランクと。登録したてですから当然ですね。


「偽造はできません。このように本人以外が持つと白い色になり、また本人が持つと色が戻るという機能がありますので。再発行には金貨三枚かかるのでご注意ください。……こんなところですね。」


 思った通り、少し長かったですね。これ、ちゃんと聞かずに失敗する人もいそうです。

 それにしても、ギルドカードってオーバーテクノロジーっぽいですね。街並みを見た感じ。


 とりあえず、薬草売りましょうか。


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