貴方を食べたい(嚙み合い、血、吸血)


 そのままの姿勢でお互い、嚙みつく。


 深くタトゥーを刻みながら皮下の赤いインクが溢れてくる。

 口の中に広がる鉄の匂い。

 この匂いがどうしてか、俺の感情を高ぶらせる。


 生命を構成する一要素、血。

 全身を駆け巡るその重要な液体は体の末端にまで血を届け身体を動かす。


 生命の源とも言えうるだろうそれが今、俺の中に入り込んでくる。

 その早く高鳴る心から送られる感情が、禊に取り込まれている。


 これを感じて、高ぶらずにはいられるか。


 異性、それも深く想い合う関係の人のモノだ。

 このまま溶けて混ざり合うような、一つになる感覚に興奮を抑えられるものか。


 そうして禊の血を飲むうちに沸々と興奮が煮え滾る。


 首を、手を、腹を、足を。

 時には甘嚙み、時には血が出るほどに深く。

 お互い服を脱がせ合い、全てをさらけ出しながら。

 お互いが、お互いを欲している。


 傍から見れば猫のようにじゃれつく二人。

 少しづつ赤く汚れ、口元にはべっとりと付いた血にお構いなく二人はそれを舐め合う。



「一旦ここで止めない?ソファーが汚れちゃう」

「ああ……そうだな……」



 そう言って向かった脱衣所の鏡に写る俺の体には、彼女に負けない程に赤い痕が残る。

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