第12話
12月の半ば頃、娘は腹痛を訴えた。
一時退院中の出来事だった。
たくさんの管から解放された3日目、
夕方のトイレで娘は、血がでた。
胸あたりも痛く、お腹も痛いとのことで
女性特有の生理かなと、私と娘は
思っていた。生理用のショーツと
生理用品を使い、腰を温めるように言い
あたたかなもこもこのズボンをはき
家でゴロゴロしていた。
晩ご飯は、生姜をいれたツミレの鍋料理。
お風呂に入る時、ショーツに
汚れはなく、トイレに行くとまた血が…血尿?
胸の痛み、いき苦しさはあるとの事で
病院に行こうと言ったが
「明日病院に戻るし、大げさだよお母さん。」
と言われたので、様子を見ることにした。
深夜、胸の辺りの苦しさと
トイレに起きた娘はふらつき
そのまま倒れてしまった。
救急相談に連絡した。結果、即救急車で
いつもの総合病院に運ばれた。
腎腫瘍、肺LAM
リンパ脈管筋腫症(LAM、指定難病89)
(りんぱみゃくかんきんしゅしょう)
平滑筋(へいかつきん)の腫瘍細胞(しゅようさいぼう・LAM細胞)が増殖し、
肺に多発性嚢胞(たはつせいほうのう)を形成する。
緩徐進行性(かんじょしんこうせい)かつ
全身性の腫瘍性疾患。
漢字だらけの難しい言葉ばかりが
頭の中を通り抜けていった。
結節性硬化症(TSC)に伴っての合併症。
呼吸困難、咳、血痰、乳び胸水、血尿
貧血などの症状。
娘は何本もの管に繋がれ、ベッドに
寝かされていた。
ごめんなさい。
丈夫な子に生んであげれなくて。
ごめんなさい。
私があなたの代わりになりたい。
ごめんなさい。
仕方ないの?
治療は……?
娘は何歳まで……?
思いつく考えは幾つも浮かび
先生が説明してくれる言葉が
まったく頭に入らなくなってしまった。
入院再開して約1週間。
娘がやっと固形物が食べれるようになった。
娘の好きな食べ物をたくさん用意しよう。
先生に聞きながら、準備しよう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
12月25日
世間一般では、大きなイベントの日です。
病院食、朝がゆ、牛乳、ヨーグルト、
オムレット?ノリ。
ちょっとずつ食べた。
れいぞうこに、私の好きなプリンも入っていた。
プリンを半分食べた。
お昼は、検査で食べそこねた。
おやつは、プリン。
朝のプリン半分も食べたから
一つと半分のプリン。
食べすぎておなかがくるしい。
お母さんも、売店で買ったプリン。
お母さんがいてくれたら、なんだか
食べなきゃって思ってしまう。
食べすぎた。
夕方、お母さんとショートケーキと
チーズケーキを食べた。
晩ご飯にも、プチケーキ付いていた。
お母さんが買ってくれたケーキの方が
おいしかった。
ばんごはん……ケーキ2個と病院のミニケーキ1個
ケーキ食べすぎたから、入らなかった。
今日は、ご飯ほとんど食べてないけど
おやつ、食べすぎた日。
漢字もたくさん書けている。
今日は、調子いいかも。
あしたも、たくさん食べよう。
食べたら、私のお母さん
安心するかもしれない。
私は、ちゃんと食べて
ちゃんと寝てるよ。
仕事キツいの?
顔いろわるいよ、お母さん。
私はげんきだよ。
私は、みんなといれて
しあわせだよ。
生きてる。
食べてる。
寝てる。
明日もわらう、よてい。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
娘のノートの字は、大きさもまばらで
2ページにわたりかかれていた。
ボールペンではなく、サインペンで
書いていた。
手のしびれもあり、力が入りにくいそうだ。
結節性硬化症
結節 性硬化症は全身の疾患で、
皮膚、神経系、腎、肺、骨などいろいろなところに 過誤腫 と呼ばれる良性の腫瘍や過誤組織と
呼ばれる 先天性 の病変ができる病気です。
娘は、皮膚にあざの様な症状(母斑)
ニキビ、頬の赤みを帯びた数ミリの
ニキビ様の腫瘍(顔面血管線維腫)
てんかん、腎臓腫瘍( 血管筋脂肪腫 )
血尿と貧血。
肺のリンパ脈管筋腫症(LAM)と呼ばれる
病変、合併症?がでてしまいました。
12月半ば入院してからは、娘が
食べたい物は食べさせていいと
医者から許可がおりた。
仕事は、面会時間外である深夜早朝の
夜勤の仕事に切り替えて働いていた。
娘の病室で、椅子に座りながら
寝てしまうこともしばしばあったけど
少しでも、娘のそばにいたかった。
行ける場所は、病院内のみだったけど
中庭やコンビニによく行き、ちょっとした
お菓子や飲み物を買った。
駄菓子を見つけては、「明日これ食べよう。」
とか、「これ、どんな味かなぁ?」と
いかにも着色料ですッて感じの
お菓子を見て笑ったりしていた。
娘が喜ぶならと思い、新作のお菓子や
食べ物を見つけては一緒にためしたり、
季節ならではのみかんを、中庭で
食べたりした。
病室は6人部屋を3人で使っている。
4人いたけど、1人いなくなっていた。
なぜいなくなってしまったのかは
幼くもない子どもたちだったので
皆、なんとなくはわかっていた。
家族の誰かが来たら、病室以外のとこに
移動して話したりするのは
暗黙の了解状態だった。
病室でのニオイや音には、皆
敏感になっていた。
独特の匂いや電子音。
個室だと、話し合い手もいないので
体力や話す言葉も落ちやすくなるそうだ。
私がいる間は、娘を車椅子に乗せ
病室以外の場所に色々場所を変え
行っていた。
年末年始も病院で過ごし、一緒に
年越しそばと、ちょっと豪華な
お弁当の様なおせち料理もどきを作り
一緒に食べた。
年明けから10日を過ぎたあたりから
娘の食事量は減り、点滴や痛み止め
抗生物質?さまざまな点滴液が
投与された。
***
「お母さん、やせたねぇ。」
「ダイエットがんばってるのよ。」
「ダイエットしなくていいのに。」
「何か食べたいものある?」
「ん~、何もおもいつかない。病院食で
充分というか、食べきれない……。」
「こまめに食べればいいって、先生も
言ってたから、欲しいのがあれば
教えてねー。」
「欲しいもの……考えとくね。」
この頃のこころは、ほとんど食事を
取れなくなっていた。
少しでも栄養が取れそうな飲み物や
美味しそうな物があれば、娘に
買っていたが、一口か二口で
「おいしかった。」「これ、味濃いよ。」とか
微笑みながら答えてくれていた。
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