第60話 SS03 女子会です。
第36話、女の子たちが暴走した日の夜の話です。
◇◆◇◆◇◆◇
夜も更けた頃、村の若い女性たちは教会の礼拝堂に集まっていた。
年頃でパートナーのいない女性が勢ぞろいだ。
「集まりましたね」
スージーが真剣な面持ちで皆に語りかける。
「今までは口を出しませんでしたが、昼間のアレはやり過ぎです」
――昼間の一件。
ナニーから始まり、みんなでアレクセイに群がった件についてだ。
「分かってますね、ナニーさん」
「はい……ごめんなさい」
名指しで言われたナニーはいつもの元気で軽い調子は鳴りを潜め、しゅんと小さくなっている。
そして、他の子たちも便乗してしまったことを思い出し、静かに反省する。
スージーには逆らってはならないという共通認識が広まった瞬間だった。
「とはいえ、基本的に皆様がアレク様にアプローチすることに関しては、私は咎め立ていたしません」
スージーがアレクセイと特別な関係であることは誰もが知っている。
その間に割って入るのを、スージーは快く思っていないのでは――それが彼女たちの心配事だった。
しかし、本人の口から否定され、安堵の空気が広がる。
「ただ、最低限のルールというものがあります。今回集まってもらったのは、それを明文化し、知っておいてもらうためです。いいですか?」
スージーの問いかけに静かに頷く。
「では、アレクセイ様三原則をお伝えしますっ!」
シーンと静まり、皆の視線がスージーに集まる。
「第一原則。アレクセイ様に誠心誠意尽くしなさい」
ズバリっと、スージーは人差し指を立てる。
「下心を持ってはいけません。領主様の
軽い気持ちで来ていた数名が立ち上がり、そそくさとこの場を後にする。
残った面々の覚悟ある表情に、スージーは満足気に頷く。
「皆さんの覚悟、受け取りました」
スージーは満足げに頷く。
「第二原則。アレクセイ様の妨げになってはならない」
続いて、中指も立てる。
「私たちの役目はアレクセイ様をサポートすることです。暴走して、邪魔することがあってはなりません」
スージーは一同を見回す。
皆、理解したようだ。
「第三原則。他の子の邪魔をしたり、足を引っ張ったりしてはならない」
最後に薬指。
「誰かを貶めて、自分の立場を上げる――普通の男性相手ならばそれは有効な手段かもしれません。ですが、アレクセイ様の場合、むしろ、逆効果です」
数人の女性の心臓がドキリと鳴る。
見に覚えがあるのだろう。
「ご安心ください。アレクセイ様の愛情は限りがありません。誰かを愛したからと言って、あなたへの愛情が減るわけではないのです。それはもう、皆さん、知っているのでは?」
たしかにそうだ――。
アレクセイから好意を向けられた皆が、それを理解する。
「アレクセイ様は天です。どれかの星を光らせるために、他の星をないがしろにしたりはしません。どの星も等しく照らし出す――それがアレクセイ様なのです」
聴衆の間に自信が生まれる。
――あの子の方が私より可愛い。
――私はもう若くないから。
――内気な私は他の子に先を越されちゃう。
みなのネガティヴな感情が消え去った。
「私たちは競争相手ではありません。同士なのです。ともにアレクセイ様を支えていきましょう」
スージーの言葉に、誰からともなく拍手が沸き起こる。
それを見て、スージーも満足したようだ。
この晩、ウーヌス村の女性たちの間に連帯が生まれたのだった――。
◇◆◇◆◇◆◇
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