第13話【仕事】と【図鑑】

 ホーム画面に戻ると、何とランクが1から3にアップした。


 おぉー、ランクアップか!

【冒険】を終了したときにはランクアップはしなかったから、ミッション報酬を受けとったのがランクアップの引き金かな。

 

 そんなことを思いつつ、何の気無しに《ランク3》と表示されていた部分をタップしてみると、『次のランク:ミッション5個の達成(2/5)』と表示された。


 おっ、次のランクに上がるための条件もちゃんとわかるのか。

 2/5ってことは既にミッション2個は達成済みってことだよな。

 たしかランク20になれば、【ショップ】機能が解放されるはずだから、頑張ってランクを上げていきたい。

 

 ちなみにランクが1上がる毎にランクアップ報酬が貰えるらしく、今回はランクが2上がったことで魔結晶を合計100個受け取ることができた。

 思わぬところで魔結晶を入手できた俺はいよいよ【仕事】と【図鑑】の内容を確認することにした。


【冒険】では3Dモデルを現実世界に召喚して操作することができたり、ゲーム内で入手したアイテムを現実世界に取り出すことができる等、良い意味で予想外の機能があったけど、この二つはどうだろうか……


【図鑑】はなんとなくどんな機能なのか予想できるから、【仕事】から確認するか。


 俺は早速【仕事】をタップしてみると、【仕事】についての説明文が表示された。


『【仕事】では《魔物討伐》、《商店でのアルバイト》、《薬草採集》等、いくつもある仕事の中から一つを選ぶと、その仕事をゲーム内のキャラクターが行い、達成すると仕事に応じた金銭やアイテム報酬を受け取ることができます。それぞれの仕事には時間と難易度が設定されており、時間が長く、難易度が高い程、より良い報酬が受け取りやすくなります。ただし、難易度が高いと仕事を失敗しやすくなり、失敗すると報酬が貰えなくなってしまいます』


 ふむ、なるほど……

 似たような機能が他のスマホゲームでもあったけど、時間経過で自動的にアイテムを入手できる仕様か。

 手堅く失敗しない仕事を選ぶか、良い報酬狙いで難易度が高い仕事を選ぶかだけど、とりあえず無難なものにしてみるか。


 表示された仕事の一覧は10種類以上あったが、とりあえず難易度1で8時間必要な《商店でのアルバイト》を選択した。

 他の仕事には1、2時間で終わるものや数日かかるようなものもあったが、今日は疲れたのでもう休みたいという気持ちと明日の朝にはどんな報酬が貰えるのか確認したいという気持ちがあり、その仕事を選んでみた。


 ちなみに仕事の難易度は最大5まであり、1なら達成確率は100%、難易度2なら80%、3なら50%、4なら25、5なら5%となっていた。

 難易度5で手に入る報酬も気になるが、暫くは難易度1か2あたりの仕事を無難にこなして報酬を得ようと思う。


【仕事】の確認を終えた俺は次に【図鑑】を確認することにした。


 ホーム画面に戻り【図鑑】をタップすると【アイテム】、【スキル】、【魔物】の3つの項目が表示された。


 試しに【アイテム】をタップしてみたところ、五十音順に並んでいる様子であり、【召喚】や【冒険】で入手したアイテムが表示されていた。


 試しに一番上に表示されていた《飲料水1ℓ》をタップしてみると、☆2というレア度と『何の効果もない普通の飲料水。飲むと水分補給ができる。容器のペットボトルは魔力で構成されており、1年程で自然分解されるため環境に優しい』という【召喚】で入手した時にも見た説明文とイラストが表示された。

 イラストはタップすることで2Dから3Dへ切り替えることもできる仕様であった。


 他のアイテムの項目も似たようなものであったので、次に【スキル】の確認をしてみることにした。


【スキル】も【アイテム】と同じように、五十音順に並んでいたが、【アイテム】との違いはイラストがないことと、熟練度という項目が増えていることであった。


 例として《創生》を挙げると、説明の他に【熟練度:1/30】という項目があった。


 熟練度が0/30でないのは、たぶん検証のために《創生》を1回使ったからだろうな。

 とすると、あと29回スキルを使えばスキルレベルが上がるのだろうけど、《創生》の場合は1日1回しか使えないから、スキルレベルが上がるのは1か月は先か……

 スキルレベルを上げる手段が同じスキルを【召喚】で引き当てることではなかったのは良かったけど、暫く《創生》のレベルが上がらないのは残念で仕方ない。


 他のスキルも同様なのか確認すると、スキルレベルを上げる手段は《創生》と同じようにスキルを使用して熟練度を上げることであった。

 ただし、スキルごとに必要な熟練度は異なっていたり、スキルの使用回数ではなく、使用時間又は消費魔力による熟練度の上昇もあるように思えた。

 とりあえずスキルレベルを上げるためには、スキルをできるだけ多く使えばいいのがわかったので、今後は魔力が許す限り、スキルを使っていこうと思う。


 スキルレベルの上げ方という思わぬ収穫をした俺は、最後に【魔物】を確認することにした。

 

【魔物】では、ゲーム内で遭遇した《ジャイアントラビット》のみが表示されており、説明については下記のとおりであった。


《ジャイアントラビット》

 脅威度:1 

 入手可能アイテム:《魔兎の肉》、《魔兎の骨》、《魔兎の毛皮》、《???》、《???》

『魔素により魔物化した巨大ウサギ。草原や森などに生息しており、強靭な後ろ足から繰り出される蹴り、鋭い歯による噛みつき、巨体による突進攻撃には注意が必要。そのお肉は脂肪が少なく、淡白だが癖がなく食べやすい』


 脅威度は魔物の強さの指標みたいなものだろう。

 ジャイアントラビットは脅威度1ってことだから魔物の中では最弱だったんだな。

 この世界には他にどんなモンスターがいることやら。

 やっぱり、ファンタジーで定番のスライムやゴブリン、ドラゴンなんかもいるのだろうか……

 ゲームと違って命の危険もあるから軽々しく見に行こうとは思えないけど、機会があれば見てみたい。


 入手アイテムについては、その魔物を倒して解体したときに得られるアイテムだな。

《???》ってなっているのは未入手品ってことだろうから、ジャイアントラビットを何度も倒していけばそのうちわかるはずだ。


【図鑑】に魔物が表示される仕組みが、魔物と出会うだけでいいのか、倒さなくてはいけないのかはわからないけど、魔物の強さや特徴、攻撃方法なんかがわかるのは助かるな。

 今回の戦闘では噛みつきなんか一度もしてこなかったから、そんな攻撃方法があることを知れたのは大きいと思う。


 それにしても地味だがこの【図鑑】は中々チートな気がするな。

 本来であれば異世界で定番の《鑑定》スキルなんかが欲しいと思っていたけれど、この【図鑑】があればアイテムに関しては、入手すればそのレア度や特徴なんかがわかってしまうから《鑑定》いらずだもんな。

 

 この異世界には見たことも聞いたこともないような物が溢れているだろうし、その辺で採取できるものが毒物か飲食可能かどうか調べることもできるから非常に助かる。


 さて、これで【女神の楽園】のメインコンテンツについては全て確認することができたけど、総評としては素晴らしいの一言に尽きるな!

 ゲームにストーリーがないのは置いといて、この世界で生きていくのに役立つ機能がいくつも組み込まれていて非常に助かる。

 

 とりあえず【女神の楽園】の機能を考慮した上での今後の行動指針としては【冒険】で3Dモデルをこの世界に呼び出し、斥候がわりに俺が歩く予定の道を先行させ、安全を確保しつつ人里を見つけること。

 次にこの世界の通貨を入手するための交換材料として、【冒険】や【仕事】でアイテムを入手しつつ、【図鑑】でアイテムを取捨選択しておくこと。

 他には各種ミッションを達成して魔結晶を入手して【召喚】を行い、有用なアイテムやスキルを入手すること。

 手に入れたスキルの熟練度をあげて戦闘能力を上げること。


 ざっと思いつくのはこんななとこだろう。

 最優先は人里を見つけることだけど、その他のことも大事なことだから頑張っていきたいと思う。

 

 俺はそんなことを考えながら、サバイバルセットに入っていた缶詰や水などを食べると、熟練度上げのために幾つかのスキルを使用して魔力を消費した後、地面に敷いた《魔兎の皮》の上で横になり、初日の夜を終えるのであった。

 

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 ここまでお読みいただきありがとうございます。

 やっと【女神の楽園】の機能の説明があらかた終わりました。

 思ったより説明回が多くなってしまいましたが、次回からは物語を進めていきたいと思いますのでよろしくお願いします。

 次回更新は6/26予定です。

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