第11話 激闘!? 巨大ウサギ戦
戦いの火蓋が切られたといっても、あくまでゲームの中での出来事であり、巨大ウサギと対峙しているのは生身の俺ではなく3Dモデルである。
しかも、ゲームで最初に出くわした敵対生物なのだから流石に強敵ということはないだろう。
なので正直緊張感は全くなく、残りのプレイ時間の間、この巨大ウサギには3Dモデルの戦闘訓練の相手として存分に役に立ってもらうことにした。
もしかすると同じような魔物がこの世界にもいるかもしれないから、相手の移動や攻撃方法やなどの動きを観察しておくのは大事な気もするしな。
ということで、いざ戦闘開始。
いきなりこちらから剣で斬りかかってもいいのだが、ここは様子見で相手の出方を窺うことにした。
相手はこちらが動かないことに痺れを切らしたのか、スタンピングを止めると、後ろ足にグッと力を込めた後、地面を思いっきり蹴りあげ、3Dモデルに突進攻撃を繰り出してきた。
突進前の予備動作が大きく、攻撃がくるのがわかりやすかったので、俺は巨大ウサギが突進攻撃を繰り出すのと同時に回避ボタンををタップして相手の攻撃を回避すると、背中をこちらに向けて隙だらけになっていた巨大ウサギの背中を一度斬りつけてみた。
「ピギャー!!」
すると思った以上にダメージが入ったのか、巨大ウサギは甲高い悲鳴をあげて仰け反るとその背中から真っ赤な血が飛び散った。
うわぁ、リアルな血飛沫だな……
それに背中に飛び散った血が消える様子もないし、自分でやっといてなんだけどなかなか痛々しいな。
ゲームなんだからここまでリアルにしなくてもよかっただろうに。
それにしても、敵に体力ゲージはない仕様なんだな。
今回は血飛沫が出てるから、相手にダメージが入っているのがわかるけど、攻撃によるダメージの数値なんかも表示されないし、相手の残りのヒットポイントもわからないから、どの位で倒せるかわからないのが嫌だな。
人によっては相手の残りヒットポイントがわからない方がリアルっぽくていい、やりがいがあるって人もいるかもしれないけど、初見のゲームで初見の敵を相手にした場合、インターネットで敵の情報も調べることができない今の現状では強敵なんかを相手にした場合は精神的に辛そうだ。
下手したらどんだけ攻撃しても実は攻撃が効いていなくてダメージが入っていない場合もあるかもしれないし……
俺がそんなことを考えていると巨大ウサギは怒ったのか、3Dモデルの方に体を向け直すと鼻をフンス、フンスと鳴らしながら再度後ろ足に力を込めて、最初と同じように突進攻撃を仕掛けてきた。
いや、その攻撃はさっきも避けられただろうが……
俺は先程と同じように攻撃を回避すると、またもや隙だらけになった巨大ウサギの背中に今度は突き攻撃をくらわしてみた。
「ピ、ピギャーー!!」
巨大ウサギの背中に深々と剣が突き刺さると、巨大ウサギは先程以上の悲鳴をあげ、剣が引き抜かれると明らかに先程までの勢いがなくなり弱々しくなったように感じられた。
おっ、もう瀕死かな。
まだ相手の攻撃手段を突進攻撃しかみていないけど、他に攻撃方法はないのか?
3Dモデルの今の防御力も気になるし、一度相手の攻撃をわざと受けてみるか。
どのくらいのダメージを喰らうかも気になるしな。
巨大ウサギ相手なら一撃でやられることはないと思うが万が一があると嫌なので、俺はまず防御して相手の攻撃を受けることにした。
防御ボタンをタップすると、3Dモデルは腰を落として両手を胸元で交差するような防御姿勢をとった。いわゆるクロスアームブロックってやつだな。
痛みに悶えていた巨大ウサギは3Dモデルの方に体を向けると、今までとは違い、その場で3Dモデルに向かって飛び跳ねると空中で体を捻りながら後ろ足で強烈な蹴りを繰り出してきた。
おぉー、そんな攻撃もあったのか!
予想外の攻撃に驚きながらも、そのまま攻撃を避けずに防御すると、3Dモデルは防御姿勢を崩すことなく、相手の攻撃を受け切り、その場で踏みとどまった。
思わぬ攻撃にびっくりしたが、自分の体力ゲージを確認すると1割程が削れただけであり、ちゃんと防御していればこんなものかと一安心することができた。
突進攻撃と今の飛び蹴りの威力のどっちが強いかも気になるが、きっと似たような威力だろうな。
次は防御せずに攻撃を受けるとどれだけダメージを喰らうか検証だな。
飛び蹴りをして着地した巨大ウサギは、また3Dモデルに向かって飛び跳ねると先程と同じように飛び蹴りを繰り出してきたので、今度は防御せずにそのまま攻撃を喰らうと、3Dモデルは1m程吹っ飛ばされ、地面にうつ伏せで倒れてしまった。
うわぁ、ちゃんと防御しないと吹っ飛ばされたりもするのか……
体力ゲージを見ると体力の残りが6割ほどになっており、防御した時の3倍のダメージを喰らっていることがわかった。
普通に攻撃が痛いな。
やはり初期装備では防御力が低いんだろうな。
たしか、スーツの防御力は合計で3だった筈だし……
下手したら攻撃を3発も受けたらやられてしまいそうだ。
残りの体力も6割しかないし、相手の攻撃手段も突進と飛び蹴りくらいしかなさそうだからもう倒してしまうとするか。
俺は相手の攻撃直後の隙を見計い、通常攻撃、突き攻撃、範囲攻撃と連続攻撃を繰り出した。
ちなみに一度攻撃すると通常攻撃であれば1秒、突き攻撃であれば5秒、範囲攻撃であれば10秒と再度攻撃するためのクールタイムが存在している。
威力が大きかったり、攻撃範囲が広ければ広いほどクールタイムが長いという仕様だな。
連続攻撃を受けた巨大ウサギは断末魔をあげて地面に倒れ込むと微動だにしなくなった。
多分、倒したと思うけど、某狩猟ゲームだと死んだふりをするモンスターなんかもいたから油断はできない。
念のため、剣で斬りつけるも身動きひとつしなかったことから、ほっと一安心して倒した巨大ウサギに近づくと《解体》と《収納》の二つの選択肢が出た。
《解体》はいくつかの素材に分解、《収納》は死体そのものをアイテムとして収納するといった感じかな。
とりあえず、《解体》スキルは召喚で入手しているけど、自分で解体するのはまだ抵抗があるから解体してしまうか。
《解体》をタップすると、巨大ウサギは《魔兎の肉》、《魔兎の骨》、《魔兎の毛皮》という☆2アイテムに変換された。
へえ、ひとつのアイテムしか入手できないかと思ったが、解体するといくつかのアイテムを入手できるんだな。
それにしても魔兎は「マト」か「マウサギ」って読めばいいのか?
名称的にやっぱり巨大ウサギは魔物だったんだろうな。
一応、入手したアイテムがどんなものなのか確認しておくか。
手に入れたアイテムをそれぞれ確認すると、まず《魔兎の肉》は『魔物であるジャイアントラビットの肉。脂肪が少なく淡白であるが癖がなく食べやすい』との説明になっていた。
あー、魔兎っていうのは略称で、あの巨大ウサギはジャイアントラビットって言う名前だったのか。
それにしても食べられるのか……
どんな味がするか気になるから食べてみたいけど、今から火を熾すのも大変そうだし、今日食べるのは諦めて明日にするか。
ちゃんとした調味料はないけど、今日手に入れた《カラ草》なんかを調味料代わりにして味付けすればそこそこ美味しくなりそうな気もする。
そんなことを考えながら、残りの《魔兎の骨》と《魔兎の毛皮》についても確認すると《魔兎の骨》は装飾品や鏃、肥料などの素材として使えることがわかり、《魔兎の毛皮》は衣料品や敷物などの素材になることがわかった。
今日の【冒険】では戦闘も体験できたし、そこそこ使えそうなアイテムも入手することができ、なかなかの成果だったのではないだろうか。
それに【冒険】をしてみて思ったが、現実でも使えるアイテムを危険を冒すことなく安全に入手できるのはかなり便利だよな。
本来であれば魔物と戦闘するのは命がけな気もするし。
それと異世界にいきなり飛ばされ、右も左もわからない状況だけど、【冒険】をプレイしてみてやっぱりゲームは面白いと感じられた。
スタミナという時間制限があるからずっとプレイできないのは残念だけど、暇さえあれば毎日プレイしようと思う。
俺はそんなことを思いながら、【冒険】を終了するのであった。
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次回、更新は6/20の予定となります。
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