第64話 旅立ち準備
その後、マリスを連れてザザム荒野へと移動する。
「地下は崩落して最早出入りは不可能だと思われます」
「そうか、いやっあの怪物を倒せたのなら最早あの場所の役目も終わった」
「役目ですか」
「ああっもう分かっているだろうが、私は先祖代々あの化け物の封印を見張りいずれ蘇ったヤツを今度こそ滅ぼす為にあの森で錬金術師として生活していたんだ」
まさかそんな訳あり錬金術師だとは思わなかったけどね、しかしお陰でイングラム帝国とかミリステアみたいな存在と出会う事が出来た。
今後の異世界の旅も退屈はしなさそうでなによりである。
まあその前にミーネが私を探してまでさせたい仕事とやらが何なのか謎なのが不安なんだけど。
まあ先の事は後回しにして、今はマリスの先祖代々のお仕事完了を祝おうか。
森のアトリエへとマリス、バルギャーノと共に戻った。その日は二人だけだが飲み会をした。
食べ物もお酒も私のアイテムボックスから用意した、だってアトリエにはそんな大層な食べ物はないんだもん。
すると酔っぱらったマリスがジグラードのキングサイズの柔らかベッドで寝かせろと駄々をこねてきた。仕方ないのでジグラードに運ぶと今度はここの食べ物を要求してきた。
酔っぱらうと面倒なタイプだったかマリス。まあ手柄を全部横取りした私は別に疲れてもいないので酔っぱらいの相手くらいはしてあげようか。
「アーク!お前も飲め!飲めーー!」
「はいはい、分かりましたよ」
新たな発見だ、酔っぱらうとスキンシップの回数が増えてきたのだ。
少しだけエッチな報酬に歓喜する、しかし掛かった手間を考えるともうちょっとエッチな報酬を貰ってもバチは当たらないのでは?と考えてしまう私だ。
そんな悶々とした夜を過ごした、それ以上のご褒美はなかった事をここに記す。
◇◇◇◇◇◇
そして次の日、ハーマストにあるあのヤドカリ君の防具店へと向かった。
以前お世話になったので菓子折を持っての挨拶である。
「アークさん、このクッキー美味しいね」
「………うまうま」
ヤドカリ君ことモイモンとその背中のイソギンチャクが巨乳美人へと変身したイプシーである。
「そのクッキーは裏の世界のドラゴニアと言う国で買ったクッキーですよ」
「ドラゴニアにかぁ~やっぱり大都会の食べ物は違うね」
「モイモンさんはドラゴニアに行ったことは?」
「ないない、あんな所に住めたらこの表の世界の人間の街で店開いたりアルバイトで湖で守護者なんてしてないよ」
確かにね、イプシーは構わずクッキーをモリモリ食べている。気に入ってくれたようでなによりだ。
あっそうだ。
「ならドラゴニアに住んでみます?」
「そんなお金なんてないよ~~」
それならと私はアイテムボックスから麻袋を取り出した。中には裏の世界の硬化、モンスター金貨が詰まっている。
モンスター金貨と言っても普通の金貨なのであしからず。
「……こっこの大金は」
「…………全部、金貨?」
「はいっ今回はモイモンさんとイプシーさんには助けてもらいましたからね」
二人には雑魚の相手を結構してもらったからね、お礼というか報酬というか、そう言うのはしっかりと渡しておきたのだ。
そう言うのをケチる人間って私が一番嫌う人間だからさ、そう言う連中は皆殺しにしたくなるドラゴンなのだ。
「それとこれを」
私は自身の鱗を縮めてペンダントに魔法で加工した物をヤドカリ君に渡した。
「これは?」
「お守りですよ、それを持っていればドラゴニアの住人で貴方達を悪いようにしょうなんて者は現れないと思います」
何故ならドラゴンが鱗を与えるという事は友好を意味する、そして私の鱗を持つ者に手を出すという事は私に喧嘩を売るのと同義だ。
私に喧嘩を売る連中はドラゴニアにはいないだろう、何しろ国の王族ドラゴンをボコって土下座させたのを知っているからだ。
ちなみにこの鱗、私が意識を集中すれば何処にあるのかどれだけ離れていても分かるし危険が迫ればそれも認識出来るので安全も確保出来る。
「へぇ~プレゼント?」
「違います」
「私には?」
「イプシーさんにはお小遣いをあげてやって下さいね、モイモンさん」
「分かったよ~けどドラゴニアは物価も土地も高いじゃない?幾ら大金を貰ってもそれだけで生活を続けていけるかな?」
「それなら新たなアルバイトを向こうで探してみては?丁度私もドラゴニアに行く用事がありますのでお手伝いくらいなら出来ますよ?」
「おお~それはありがたいね」
「…………もっとお菓子」
イプシーの目が光る、きっと悪いことを考えているぞ。しかしそこをどうにかするのはヤドカリ君の仕事なので私は何も言えないな。
そしてその後も世間話をいくらかしてシェル防具店を後にする。
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