前世が日本人だったアクが強いドラゴンのファンタジー職業体験記

どらいあい

『アクつよドラゴン、海賊になる!』

プロローグ

第1話 開き直る

 私はドラゴン、名前はまだない。


 いやっ生前っというか前世では日本人だったので名前があったのだが忘れた。何しろ異世界にドラゴンとして新たな生を受けて数百年、もうどうでもいい過去とか記憶に残る筈もないだろう。


 日本での生活?思い出したくもない。くたばれニッポンとだけ言っておこう…。


 私がこの世界に転生したのに理由とかはない。真っ白な何もない場所でエロい巨乳の女神やロリガキな女神になんて会ったりしなかったからだ。


 ただどうでもいい理由で死んで、気がついたらドラゴンとして生を受けていた。

 ちなみに魔法は使える、それはもう様々な魔法を大量に使える。他にもなんか色々な事が出来るようになった。誰かに習った訳でもないのに。


 何故ならこの世界は某ファンタジーゲームが如きレベルが上がれば問答無用で覚えていくスタイルだ。スキルさえゲットすれば1秒前なら使えなかった魔法などの不思議パワーが即座に使える、そんな優しい世界である。


 しかしそんな優しい筈の世界は私にはある意味全然優しくなかった。

 ドラゴンとして生まれた私は成長するだけでどんどんレベルアップしていったのかどんどん魔法とか色々な不思議スキルを覚えていった。


 そしてドラゴンなので身体もどんどん大きくなる、生後1年で私の身体は全長千メートルの大台を超えてしまい、故郷の森では正にゲームのラスボス的なドラゴン扱いを受けて日がな一日ドラゴンスレイヤーを夢見る人間達に喧嘩を売られる毎日であった。無論全てワンパンで返り討ちである。


 私のワンパンは山の上半分を吹き飛ばす威力なので当然の結果だ、しかし私にビビって逃げた人間はしばらくすると更にその数を増やして喧嘩を売ってくる。またワンパンで返り討ちにした。


 そんな不毛な戦いが続くと他のファンタジー世界の住人、エルフとかドワーフとか獣人とか他にもよく分からん連中まで私と人間とのおままごとの如き戦いに参戦してきた……もちろん私の敵としてだ。


 少しイラッとしたのでブレスを放ったら故郷の森が消え去ってしまった。


 故郷失った他のモンスター達の怒りは凄まじいものだった、しかし私に喧嘩を売る真似なんて最早誰もしなくなっていた。暴力を背景にした私に逆らえる者などいるはずもなく、ただ遠くから意味不明な大声を出して惰眠を貪る私への嫌がらせをしてくるのが精々だった。


 無論、眠るの邪魔されるのが何より嫌いな私は、懲りずに喧嘩を売ってきた人間のリーダー格を見つけてあのうるさいモンスターを始末すれば今回は見逃してやると言ったら、即日にモンスターは掃除された。ざまぁ見ろ。


 そんな生活をしていたら遂には雑魚種族人間とその他ファンタジー種族共の偉いヤツらが集まり私に土下座をしてこの大陸から出て行ってくれと懇願された。


 それはもう見事な土下座であった、中には怖すぎてションベンを漏らすヤツまでいた。流石にやり過ぎかも知れないっとその時私は思った。


 懇願なんてするなら最初から対話を試みろ愚か者どもがとも思った私だが、まあ私が彼らの立場ならこんな見上げるのも馬鹿らしくなるデカブツと会話が成り立つだなんて思える訳はないと思い至る。


 泣きながら私に土下座する連中を尻目に私は故郷を後にした、最後に残した言葉は「戦争反対」の4文字だ。私は最後に良いことをした気分を味わう為に綺麗事を言って故郷を後にした。


 その後はドラゴンの巨体故に定住する場所を見つける事も出来ずに気がつけばこの世界最高峰の霊峰の頂上に居座っていた。


 ここならまず人間もその他ファンタジー種族もこれはしない、何故ならこの霊峰は山頂に向かうに連れて先が細くなりその頂上は最早成層圏に届いてる始末である。


 ドラゴンの私は普通に空気がなくても平気なのだが大抵の生物はここに来ると死ぬことになるからな、そんな場所で私は仏陀の涅槃像ねはんぞうの如く寝ていた。


 山を降りるとやれ破壊神だの滅びの化身だの悪魔竜だのとうるさい連中ばかりなので私はボッチのまま、転生して数百年の時を生きていた。


 ちなみに今の私の全長は五千メートルの大台を突破している、最早雑魚種族人間など爪の先にのせたゴマ粒の如き小ささよ。ブレスどこらか鼻息1つで大抵の生物は瞬殺だ。


 ちなみに魔法を使えばもっと大きくなれる、多分百倍くらいは大きくなれるだろう……まっだからなんだと言う話だ。


 ともかくそんなこんなでこの山でゴロゴロすること数百年、いい加減私はこのゴロゴロ生活に飽きていた。なんで剣と魔法のファンタジー世界に強力な力を持って転生しといてこんなとこにいんのかと、そして人目を気にする理由なんてないことに数分前に気づいた。


 私はボッチで暇なのだ、別にボッチなのは良いのだ、何故ならボッチで生きるのは楽しい、他人とのしがらみなどという粗大ゴミは前世で日本に不法投棄してきたのだから。


 まあもう数百年前の話なので、今あの青い星に日本という国やら雑魚種族人間が残っているかは分からないがな。


 しかしドラゴンとなり様々な魔法を得た身としてはこの力をもっと有意義に使えないかと思わない事もない。こんな図体だと家で布団に包まることも出来ないのだ。


 つまり文明的な生活とかずっと皆無だった、そこに一抹の寂しさを私は覚えた。そこでそろそろもう一度人間になってみるのも良いかもなっと思い立ったのは至極当然のことなのかもしれない。


 私は魔法が使えるからな、そうっ実に様々な魔法を使えるので人間に変身する魔法も使えるのだ。


 私は【変身】の魔法を使う。端から見れば恐怖の対象でしかないゴツいドラゴンの身体は一瞬で縮み、1人の人間へと姿を変えた。


 歳は十八歳、髪の色は黒髪だ、これはドラゴンの時の姿が黒いからである。日本人だった過去も手伝い黒髪黒眼がしっくりきた。


 十八歳を設定したのに理由はない、別に青春十八切符ばりのアオハルな異世界生活とか夢見ている訳がないだろう。ただ数百年出会いも無くボッチだったので寂し…………いやっ成熟した私に相応しい出会いの1つもあって然るべきではっと言う思いがあるのは事実である。


 服装は一応軽装の革鎧一式と上着に黒のコートをを魔法で用意した、それとシャツとズボンにブーツもである。これらは以前私を倒してドラゴンスレイヤーになろうとしたアホ共を脅かした時に大抵の者は装備を手放して逃げるのでゲームのエネミーを倒して得るドロップアイテムよろしく私が魔法で創った異空間に放り込んでおいたものだ。


 ゲームとかいい歳しても遊んでた私はこの異空間を当たり前のようにアイテムボックスと名付けた。


 そんな感じの使い方が出来ると思ったからだ。


 どうせ取りにくる連中などいないので今の今までその存在を忘れていた。一応魔法で浄化してから異空間に放り込んでいたので汚れや異臭はないだろう、しばらくはこれで人間の冒険者のふりでも……冒険者はないな、私に無駄に挑んでくる冒険者達のせいで冒険者とは勝てない相手に挑み、そして不様に逃げまくる背中を見せるイメージしかないからだ、だから冒険者以外の職についてこの異世界を生きよう。


 上司も同僚も後輩もウザくなければ何でも良いのだ、ウザくても良いか?その時は消すだけだ。


 内心意気揚々と私は霊峰の山頂からダイブした、ドラゴンなら翼で、人間でも普通に魔法で空を飛べるので高さは関係ない。そもそもドラゴンは上空数万メートルから地面に激突してもかすり傷1つ受けるような存在ではないのだ。


 まっ他のドラゴンは知らんが、とにもかくにも開き直った私はこの異世界で暇つぶしに働いてみることにした。飽きればまたここでゴロゴロと寝て過ごすかも知れないが……まあ先の事は考えても仕方ない。


 今はこの高揚感に身を任せていたいのだ。


 そして私の本当の異世界ライフが幕を開けたのだ。


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こんな感じのなんか面倒くさくてアクが強い主人公の物語です。面白かったらブクマや星評価をよろしくお願いします。


なおこの物語にラブコメなんてありません、アオハルなんて敵でしかありません。




 

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